日本戦でスタメンに抜擢されたムリージョ(右)。パチューカでプレーする本田圭佑の同僚だ。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 日本代表は6月19日のロシア・ワールドカップ初戦で、強豪コロンビアから2-1の歴史的勝利を飾った。
 
 言うまでもなく開始3分のPKとそれに繋がるハンドを犯したカルロス・サンチェスの一発退場が、勝負の分かれ目になったのは間違いない。ただ、その状況を作り出したのは、敵将ホセ・ペケルマンが選んだ“不可解なスタメン”だった。
 
 この重要な初戦でアルゼンチン人指揮官は、CBとセントラルMFの一角に、ともにバックアッパー扱いだったオスカル・ムリージョとジェフェルソン・レルマを先発起用。さらに左サイドのアタッカーには、ここまでわずか5キャップでスタメン歴が一度もなかったホセ・イスキエルドを抜擢した。
 
 ふくらはぎを痛めていたハメス・ロドリゲスに代わって、ファン・フェルナンド・キンテーロがトップ下に入ったのは妥当。だが、ムリージョ、レルマ、イスキエルドの3人の先発については、現地紙『EL TIENPO』も「驚きだった」としたうえで、「ペケルマンのチームはまったく機能しなかった」と辛辣だ。
 
 とりわけ、CBの4番手扱いだったムリージョの起用は、勝敗に決定的な影響を与えた。前述のPKを与えた場面では、ムリージョの香川真司に対するファーストプレスが中途半端で、その後方のスペースを大迫勇也に使われてシュートに持ち込まれた。そのうえ、香川より自陣のゴールに近い位置にいたにもかかわらず、戻りが完全に遅れてこぼれ球をシュートされ、この一撃がサンチェスのハンドに繋がったのだ。
 
 この場面では、コンビを組むダビンソン・サンチェスとの連携も取れていなかった。それもそのはず、このふたりが揃ってピッチに立ったのは、南米予選最終節のペルー戦、そして大会直前のエジプト戦(後半のみ)のたった2回だけだったのだ。
 
 では、なぜペケルマンは控えCBを使わざるを得なかったのか――。
 
 成長著しいD・サンチェスの相棒を務めると見られていたのは、前回大会でもレギュラーを張ったベテランのクリスティアン・サパタだ。だが、ミランで出番が減っていたこともあり、本大会を迎えてもなかなかコンディションが上がらなかった。試合後に本人も、「プレーできる状態だったけど、100パーセントではなかった」と明かしている。
 
 CB3番手格だったジェリー・ミナがチョイスされなかったことについては、『EL TIENPO』がこう伝えている。
 
「ミナは1月に移籍したバルセロナで、たった5試合しか出場しなかった。しかも日本は素早いサッカーを得意とし、長身のミナが活きるような空中戦を仕掛けてこない。それが、ムリージョが選ばれた理由だろう」

 そのうえで「セットプレーで2点目を奪われたのは、痛恨だった」と皮肉っている。
 
 結果的に、ムリージョの抜擢が裏目に出たコロンビア。払った代償はあまりにも大きかった。