新米の季節を迎え、米穀店やスーパーの米売り場には全国各地のさまざまなブラント米(銘柄米)が並んでいます。おなじみのコシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、つや姫、ななつぼし、ゆめぴりか……etc.。
最近では青森産初の特A米(食味検定最高評価)となる「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」や、昨年(2016年)デビューした新潟米「新之助(しんのすけ)」などの新銘柄も話題となり、産地間のブランド米競争はますます激化しているようです。
そうした中、かつてコシヒカリと人気を二分する二大横綱と称されながら、近ごろ店頭でほとんど見かけなくなった宮城の看板米といえば……?

店頭にずらりと並んだ全国各地のブランド米


「銀シャリ本来の味」と称された、昭和を代表する懐かしの銘柄米

そう、それが今日のテーマ「ササニシキ」です。平成生まれの人はなじみが薄いかもしれませんが、40歳以上の世代には「懐かしの銘柄」として記憶に残っているのではないでしょうか。
いつの間にか店頭から姿を消し、いまや幻の米となってしまったササニシキ……と思いきや、決して消滅してしまったわけではないようです。
── 1963年、宮城県の古川農業試験場で誕生したササニシキは、当時は数少ない新品種の銘柄米としてたちまち人気となり、東北を中心に広く栽培されるようになりました。ピークの1990年には作付面積が20万ヘクタールを超え、コシヒカリに次ぐ全国2位のシェアを誇っていました。炊き上がりのツヤと香りがよく、ほどよい歯応えのあっさりとした食感が持ち味で、銀シャリ本来の味はこのササニシキの味ともいわれています。

実りの秋を迎えた東北の田園風景


1993年の大冷害で「ひとめぼれ」にシェアを奪われる

しかし、「耐冷性がなく、雨風で倒れやすい品種」といわれるササニシキは、1993年夏の大冷害で打撃を受け、主要産地・宮城県の作況指数は37(平年並み100)にまで激減。米農家はいっせいにササニシキを見限り、耐冷性のあるコシヒカリ系の新品種「ひとめぼれ」に転換してしまったのです。
その後、育てやすく食感もよいひとめぼれは作付面積を一気に増やし、近年はコシヒカリに次ぐ全国2位にまでシェアを拡大。一方、ササニシキは減少の一途をたどり、現在の作付面積ランキングは20位からも外れてしまいました。
大冷害がきっかけで、ひとめぼれにシェアを奪われたササニシキですが、日本人の食の嗜好が変化し、柔らかく粘りが強いコシヒカリ系の米が好まれるようになったのも、ササニシキ衰退の一因といわれています。


根強いファンが支えるササニシキ。そのDNAを受け継ぐ新銘柄も登場!

それでもササニシキが消滅しなかったのは、あっさり系の米を支持する根強いファンがいるからです。ササニシキは和食のおかずや刺身の味を引き立て、冷めても味が落ちないため、シャリにこだわる寿司店・割烹(かっぽう)をはじめ、食べ慣れた味を求めるリピーターやお弁当派からのニーズは減っていないといいます。
店頭に並ぶことは少なくなったものの、生協やネットでの販売はいまも堅調で、ササニシキを知らない世代にも購入層が広がっているそうです。モチモチした粘りのある米が主流となった現在、その対極にあるササニシキの味わいは、若い人たちには新鮮に感じるのかもしれません。
── そうした中、宮城県の古川農業試験場では、ササニシキとひとめぼれを交配させた新品種「東北194号」を開発し、2015年から「ささ結(むすび)」のブランド名で販売を開始しました。ササニシキの食味を受け継ぎながら冷害にも強い、宮城の独自性を打ち出すニューフェイスの銘柄として、地元からジワジワと人気が広まっているようです。
ササニシキを懐かしむ世代にはもちろん、最近人気の北海道産「ななつぼし」など、あっさり系を支持するファンはぜひチェックしてみてくださいね!

ササニシキは寿司飯に最適