これが国家プロジェクト?滑稽としか言いようがない新国立競技場建設
新国立競技場には、そうした意味で注目していた。世界に誇れるようなものになって欲しいと願っていた。だが、これまでのところ、建設の音頭を取る人たちから、日本のスポーツ文化の発展を願うような声は聞こえてこない。「斬新なフォルムだから」と言ったのは、コンペで審査委員長としてザハ・ハディドさんの案を最優秀作品に選んだ安藤忠雄氏だが、メディアは、それを傍観するように眺めてきた。あのようなフォルムのスタジアムは、神宮の杜の景観を損なわないのか。自然破壊には繋がらないのか。一部建築家たちの間からは、改築でも十分優れたスタジアムに変貌できるとする声も挙がったが、それぞれ議論は深まっていかなかった。陸上の国際大会を開くために不可欠なサブトラックが併設されないことについても、問題視する声はほとんど挙がらなかった。
新国立競技場建設問題で、問われているのは年長者の力。大人の力だ。
繰り返すが、スタジアムの寿命は最低でも50年。一度完成したら消せない、まさに後世に残す産物になる。いい大人がどれほどいるか。スタジアムの善し悪しは、その数に比例する。50年後、まず生きていないであろう人たちが、スタジアム作りを無計画に進める姿はかなり見苦しい。僕はそう思うのだ。
外部サイト
スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。