そんな折も折、孫社長の天狗の鼻をへし折る“究極の爆弾”が炸裂した。携帯電話会社が加盟する電気通信事業者協会は毎月、各社の発表を基に新規契約数から解約数を差し引いた先月の「純増数」を公表している。9月7日に明らかになった8月の純増数はソフトバンク21万7200件増(契約数3014万1100件)、KDDI16万1900件増(契約数3588万5500件)、NTTドコモ8万1200件増(契約数6062万8000件)の順だった。トータルの契約数はともかく、純増数ではソフトバンクが8カ月連続で国内トップを独走している。

 ところが、この公表直前にソフトバンクはライバル社に対し「毎月、純増数を発表し続ける意義があるのか」として、公表打ち切りも含めて意見を求めた。むろん水面下の動きで、本来は決して表に出る話ではない。ところが、このことを一部の経済メディアが報じたから大変。ソフトバンクの真意をめぐって俄然、騒々しくなったのである。
 「携帯電話会社のうちイー・アクセスは去年の暮れから月次データを公開していない。従って今回の情報リークはドコモかKDDIのどちらかでしょう。ひょっとすると、両社からリークされた可能性もある。孫社長の特異なキャラクターもあって、あの会社はそれだけ敵が多いのです」と同社ウオッチャーは指摘する。

 とはいえ、純増数でトップが指定席だった同社が、なぜ発表取りやめに向けて舵を切ったのか。
 「純増数でライバルを出し抜けば世間の目には顧客の信頼が厚い会社と映り、これが社員の士気や株価に反映する。そこで純増数を水増しすべく、通信モジュールを内蔵した携帯端末とiPhoneなどをセットで売り、2年間にわたって基本料を無料にするなどの縛りをかけて価格破壊路線にまい進したのです。結果、純増数でこそライバルを圧倒したものの、契約単価(毎月の平均収入)が上がらず、通信料アップには結び付かなかった。そこで2016年度に営業利益1兆円のアドバルーン(今年3月期実績は6752億円)を打ち上げた手前、もう手段をウンヌンしている場合ではなくなって、純増路線との決別を余儀なくされたのです。その結果、水面下に潜んでいたアンタッチャブルが一気に噴出したというわけです」(前出ウオッチャー)

 電波がつながりにくいという致命的ハンディを背負う中、ライバルとの料金競争から後退すれば、ユーザーがどう動くかは明らかだろう。といって「営業利益1兆円」の目標をアッサリ撤回すれば、世間は「やっぱり孫社長の大風呂敷癖は治っていない」と冷笑する。それどころか、本来は“秘中の秘”である純増数の水増し工作が、ライバルのリークで公になったこと自体、これまでの同社では考えられない“事件”である。裏を返せば、遂に孫社長の悪あがきが始まったということ。このリーク事件、意外な揺り戻しがありそうだ。

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