NHK勤続30年超の大ベテラン伊藤博英アナウンサーの次にお話をうかがったのは、こちらも様々なアナウンスの現場を経験してきたベテラン、現在は「夕方ニュース」でキャスターを務める有江活子さんです。


GIGAZINE(以下、G):
とりあえず最初の質問としては、今ここに至るまでのプロフィールというか、どのような感じで今のこの役職まで来られたのかということを教えてください。

キャスター 有江活子さん(以下、有江):
私はラジオセンターと契約をしながら、今のお仕事をさせていただいています。私は札幌生まれ札幌育ちです。大学を卒業してから、最初の2年間は全く違う仕事をして、その後、地元札幌のNHKのオーディションを受けて、そこから契約が始まったんです。最初は札幌で……北海道で3年間、結婚に伴って上京して、BSで1年、NHK経済マガジンで1年、首都圏で2年、その後ラジオセンターに平成7年から移って、今のラジオでのお仕事をさせていただいているということです。


G:
ラジオのお仕事の内容としてはずっと同じようなことをやってこられたんですか?

有江:
最初は、午後1時から6時前までのワイド番組の司会をさせていただきました。そこでは謎かけ問答があったり……今でも謎かけ問答がありますけど、あるいは電話相談があったり、それからインタビューのコーナーがあるという、情報番組のアンカーをさせていただいていて、この「私も一言!夕方ニュース」ができる時に「担当してもらえないか」という話があって、そこから4年ということになります。


G:
こういう仕事をしていると健康管理などはどのようにされているんですか?

有江:
札幌時代も月〜金の仕事をして、それからBSでも「首都圏ネットワーク」でも、ラジオも含めてですが、休んだことがないですね。


G:
皆勤ですか。

有江:
熱が出ても何とかしのいでいました。

G:
すごいですね!

有江:
食あたりでさすがにこれは……という時はありました。

G:
食あたりですか?

有江:
その時は点滴を打って出ました。ラジオは顔が出ないメディアなので、声が出て頭が回っていればなんとか。とはいえ迷惑をかけてしまいましたが。一応、これまでに休んだことがないということが唯一自慢してもいいところでしょうか。


G:
今までそういう風に仕事をいろいろとされてきた中で、うまくいったことと、うまくいくと思っていてうまくいかなかったことで考えた場合、うまくいったことについて「予想以上にうまくいった」というようなことではどんなことがありますか?

有江:
そうですね。これは「うまくいった」、というより相手がうまく乗ってくださってそれでうまく「お便りが回って」という意味では、「うまくいった」と言うのでしょうか。スタジオがすごく熱くなって、それを聴いている皆さんにもとても面白く聴いていただいたという経験はありますね。

G:
「お便りが回る」というのは、どういう状態なんですか?

有江:
「男に対する5つの疑問」という5日間のインタビューシリーズを女性のディレクターが作ったんですね。いくつかの疑問をもとに、この企画に賛同して下さった男性ゲストにインタビューしたんです。「なぜ男性は若い女性がいいのか?」という疑問で来ていただいた男性ゲストとやり取りを続けるうちに、聴いてる方から感想やゲストへの質問などどんどん来るんです。そのうちに「有江がんばれ」なんていうお便りもあったり「ゲストがんばれ」というお便りがあったりして、二人を応援したり反対意見があったりという状態になってきました。そして、「お便りに対してお便りが届く」状態になって、そこにまた、スタジオの会話が絡んでというところで、どんどん「回っていく」という実感が得られたわけです。


G:
「回る」ですね。まさにその感じは。

有江:
ええ。生放送の中で「回っていく」という感じがあって、そうした経験が何度かありました。

G:
あと、失敗についてはどうだったでしょうか?失敗というか「こうやったらうまくいくだろうと思ったけれども、予想よりうまくいかなかった」というようなことなんですが。

有江:
やはり相手をうまく乗せることができなくて、一問一答で何だかギクシャクしてしまうというのは失敗でしょうし、先ほど伊藤(博英)さん(アナウンス室エグゼクティブ・アナウンサー)が「常識」というお話をされましたけれども、初歩的な常識部分でのミスもあります。それからニュースをうまく読めなかったりすると、やはり「ゴーン」と落ち込みますね(笑)

G:
なるほど。先ほどの話で出てきた「常識」についての話のなんですけれども、要するに「基礎教養」と言ったら変ですけれども、そういうようなことは、ここ(NHK)で仕事されている以外にも多分勉強してらっしゃると思うんですけれど、それはどのようにやってらっしゃるんですか?

有江:
いや特に「基礎教養」というのは……。ニュースはまあどちらかというと「読み」ます。テレビのニュース番組は見ないわけじゃないんですけれども、どちらかというと「活字で読み」ます。それは新聞であったりもしますが、ネットでもニュースをやはり「読む」んですね。それからやはりラジオで「聴く」。あとは、好きな本を読む。あまり仕事と関係ない本が多くて、とにかく本を読むのは好きなんです。そういうところからいろんなジャンルのものに対して常に接してきたというところでしょうか。


G:
それは若い頃からずっと習慣となっているという感じなんですか?

有江:
そうですね。

G:
もう小学校・中学校とか、その辺りからですか?

有江:
そうですね。活字には必ず触れる。だからと言って漢字が読めるかというとそうではなくて(笑)そういうミスもあったりしますよ。

G:
最後の質問で、こういう道を志している人に対して「こういうことをやったらいいんじゃないかな」「今ここまで来たからこそ言える」というような「これをやっていたらいいよ」といったお話はありますか?。

有江:
「日常生活」を大事にするということが必要だと思いますね。「日常生活」、それは朝起きて家の中を掃除してご飯を作って……というような何気ないことから、家族との対話であったり。例えば今日の番組で取り上げる社会保障だって、その時自分がどういう立場にあるかによって、意見が変わってくると思うんですよね。「年金や健康保険料を自分はいくら納めているのか」とか、「どういう形の部分に自分は所属しているのか」とか。保険料がどのように使われているのかとか、日常生活で意識しなくちゃいけないことがあるんですよね。

さらに、衣食住。ニュースってそういうところから始まりますよね。衣食住が脅かされた時に大きなニュースとなったりするわけです。いかに普通の「生活人」として過ごす部分を大切にしているか、ということが必要だと思うんですよね。確定申告一つにしたって、確定申告をしていない人にとっては分からないかもしれないけど、例えばサラリーマンだっていろいろな控除があったり、実は様々な支援を受けていたりする部分がありますよね?人任せにせず、日常の生活に関わることを意識していきたいですね。


G:
それは何か、そういうような考えに至った理由というのがあるんでしょうか?いつごろからそういう「日常のそういうものを大事にしよう」という感じになっていったのですか?

有江:
やはり、家を出てからですかね。

G:
ご実家を出てから?

有江:
実家を出て、独立して生活するようになってから、すごく太ったんですよ(笑)すごく太って(笑)「これはどうしてだ?」と考えた時、ちゃんと食べていないとか、偏って食べていたことなどに気付いたんです。そこで「これまで母がちゃんと作ってくれていたんだな」とか「母はどうやってバランスよく作っていたんだろう?」と考えたわけです。その後、担当した料理や健康のコーナーで、小さい頃から何となく見聞きしてきたことや、手伝いなどで覚えていたこととか、日常生活の何気ない疑問なんかが、専門家との会話の中でできたり、生かされたりする訳です。やはり独立してからかな?そういった日常的なことが大事だと思ったのは。食生活を丁寧にしたら体重も戻りましたし。

G:
何か実感や体験、経験に基づいてるという感じですね。

有江:
ええ。ということですね。

G:
なるほど。いやありがとうございます。

有江:
いえ。すみません。何かペラペラと(笑)

G:
いえいえ(笑)逆にペラぺラ喋っていただかないと、こちらもオロオロとしてしまうので(笑)

有江:
番組のスタジオは3人、三者三様の立場です。その中で私は個人事業主でフリーランスで、会社員の夫と二人暮らしで、という立場です。伊藤さんはお子さんがいて、ご意見番はお孫さんがいる世代です。これまでの社会人としての経験値も専門性も全く違いますし。まあこんなこと言っていいのか分からないですけれども(笑)それぞれの立場で守るべきものが微妙に違うと思うんです。前面には出さないですが……それが面白い。世の中にも様々な立場があって、それぞれの思いでお便りを寄せて下さる。スタジオの我々にも、それぞれ受け止め方がありますが、みんなでチームとなって、その結果バランス良く受け止めていけるのではないかな、と私は思っています。


G:
前面には出ないけれども、ラジオを聴いていればそこはかとなく分かるかもしれない、と。

有江:
どうかな?質問のし方でわかりますかね。

G:
確かに。質問自体が答えになっている場合がありますからね。なるほど、どうもありがとうございます。

有江:
どういたしまして。

<最後は、ついに真打ち登場です。また、下記関連記事を読めばここまでの経緯がよくわかります>

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