野村:でも、「エーデルワイス」とか「あたらしい水」とか「愛情」とか「リバーズエッジ」と、ああいうものを出してきて、だいぶ深い世界を歌ってきたので、その逆をやりたかったんですよ。こうやって「リバーズエッジ」みたいに二千花を知ってもらえる、そういう時にカップリングで「いきなりコレかよ!?」みたいな感じの、全く逆の違うものを(笑)。いいタイミングかな、と思うんですよね。

――方向は違うんですけど、それはそれでクオリティはすごく高くて、本気で遊んでる感じが伝わりました。

野村:ありがとうございます。

宮本:本当に一日とか二日でやったので、それも逆に良かったんだと思う。遊びの時の集中力というか。

野村:最後のミックスをするために、データをエンジニアの高山さんにメールで送る時に、もう「リバーズエッジ」は出来上がっていて。「リバーズエッジ」をミックスしてもらっている間に、この曲をアレンジしてたんですよ。リミットだったんで、多分40時間ぐらいぶっ通しでやっていて。その日に送ればもう全て終わり、これが終わればビールが飲める、みたいな気持ちばかりで(笑)。普通だったら僕は多分すごく詰めていくと思うんですよ。「Cream Soda」とかもそうなんですけど、「ツチッ、ツチッ」って鳴る音とかも、「今、右!ハイ!次は右だから、次は左」とかいうことを細かくやっちゃうタイプなんですよ。今回も実際に、最初のハンドクラップとか分けてたり、ちょっと細かいことをやってるんですけど。いつもそのパターンをこだわるんですけど、段々「もう、いいや」って(笑)。別によくないんですけど、そんなことよりももっと、「違うだろ!?」みたいな感じでやっていって。最後は大分いい加減なというか、詰めきらない状態。「いい加減」と言うと、別に音楽をいい加減に作っているつもりは一切無いので、「いい加減」という表現はしたくないんですけど。僕がプロデュースしないことというか、やりすぎない感じはいい方向に働いたのかな、と思うんですけど。

――レコーディングって、テイクを重ねるほど良くなるとも限らずに、先ほど言われていた瞬間の集中力だったり、一発目が結果的に一番良かったので採用みたいなことってよくあるじゃないですか。そういう感じのラフさというか、いい具合の肩の力の抜け具合がありますよね。

野村:そう。アコースティックギターも、スタジオで「じゃあ、録りまーす」と言って、一回弾いて「終わりまーす」と言って。口笛も一回吹いて、「終わりまーす」と言って。家でエレキギターを録ってるんですけど、エレキギターも一回しか弾いてないんですよね。そう思うと、全部ファーストテイクというか。もう「リバーズエッジ」を作っているタームの後半なので、制作のモードにはどっぷり入っているから、そこに「さぁ!制作をするから、ヨーシ」という気持ちを上げていくみたいな作業は一切必要無かったんですよ。ずっと曲作りから、最後の出口の時ですからね。だから多分、テイクを一発で決めるみたいなものを自然と出来るというか。「ヨシ、今日はレコーディングだ!弾こう」というよりは、「もう、やっちゃおう」という感じの。ギターを持って、もうクッ!とその世界に入って、ガッ!っと弾けたので。もしかしたら、今から二日間でそういうものを作るとなると、ちょっと出来ないかもしれないですね。制作の最後だから、もう重要なストレッチも余裕で出来て、体もほぐれまくってる時の新記録を出すみたいな感じかもな(笑)。