交渉では、相手を説得するのではなく、譲歩と引き換えに相手の譲歩を得るべきだと述べた。そうであれば、譲歩する材料を持たなくてはいけない。

 譲歩し、それと引き換えに相手に譲歩させるには、譲歩するためのカードを持たなくてはならないのだ。

 クライアントのエンジニアリング会社X社が、アメリカの自動車部品メーカーY社から請け負った工場建設の工事代金の支払いで、もめているケースがあった。

 Y社は、何だかんだ言い訳をして、工事代金を支払おうとしない。X社に不手際があったわけでもないのに、減額しようとしてきた。

 一方でY社は、1日も早く操業を開始したいと考えている。工場が完成しないと困るのだ。

 こういったとき、どうすべきか?

「工事をストップする」

 という有効な交渉カードを使ってみるのはどうだろうか。このときも、私のアドバイスにしたがい、X社は工場建設の工事をストップした。

 その上で「◯月◯日までに追加代金を支払わないと、工事を再開しない」とY社に伝えたのである。

 X社としては、工事を意図的にストップすることによって工場の完成も操業開始も遅れ、Y社から大きなクレームを受けるのが怖かった。
とんでもなく大きな賠償責任を負わされるような気がしたのだ。

 しかし、工事代金を支払ってもらってないのに、誠実に工事を続けることはない。工場を完成させる必要はないのだ。私はX社に、そうアドバイスした。それにしたがい、X社は堂々と「工事の中断」という交渉のカードを切ったのだ。

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