安い買い物ではないし、いろいろな車種もある。機材選びはスポーツバイクの面白さの一つだが、最初のハードルにもなる。しかし、初心者ならば、迷って当然。フィールドに出てみないと、やりたいことはわからないものだ。

だから、最初の1台は多用途に使えるバイクがいい。となれば、断然おすすめなのはグラベルロードバイクだ。太いタイヤと安定性の高いフレーム設計でロードバイクよりも快適性が高い。

グラベルロードバイクの魅力を徹底解説!

走行感というのはタイヤ性能が大きく影響するので、走り出して感じるのは無敵感だ。凹凸も気にならないし、パンクもしないような気持ちになる(しないわけじゃない)。ハンドルはドロップハンドルなので、操作性や身のこなしはロードバイクのそれだ。

速く走るだけならロードバイクには敵わないし、本格的なトレイルを走るならMTBのようにはいかない。それでも、平日は自転車通勤、休日はキャンプやツーリングにも使える。ロードバイクやMTBよりも身近で、守備範囲が広いのでセカンドバイクとして、既存のサイクリストからも人気を集めている。

スタイリングの特徴はロードバイクと同じドロップ形状のハンドルと、MTBのような太いタイヤを装着している点だ。フレームにはアクセサリーを装着する台座が多くあり、泥よけやバッグなど用途に合わせて、カスタマイズできる。

グラベルロードバイクの源流は、2006年にアメリカ・カンザス州で開催された「ダーティ・カンザ」(現アンバウンド・グラベル)というイベントから始まる。アメリカ中西部に拡がる未舗装路をつないで思いっきり走ったら、きっと楽しいに違いない……そんな思いを抱いた34人からスタートした小さなイベントは、一気にファンを魅了。今や参加希望者は世界規模で増え、抽選で選ばれた5,000人超が集まり、グラベルロードの祭典となっている。日本でもイベントが増え、参加者も回を追うごとに増えているという。

未舗装路と言われても、どこを走ればいいのかわからない。そう思うかもしれないが、たとえば江戸川や荒川のサイクリングロードには並走するように、ダート区間がある。

目の前に広がるのは白い道。こちらには散歩している人も、サイクリストもいない。サイクリングロードよりも低い位置を走っているので、いつもよりも高さが増した土手の向こうに空がドーンと広がる。ロードバイクに跨がっているときには気にもならなかった場所にコースがあり、グラベルロードバイクで走り出せば行動範囲は一気に拡がる。

さらに、「バイクパッキング」の流行もグラベルロードバイクを後押しした。フレームにバッグを取り付けて旅するスタイルは、ダボ(取り付け台座)のたくさんあるグラベルロードバイクがうってつけだった。競技っぽい走りだけでなく楽しめるスポーツバイクとして浸透したというわけだ。

グラベルロードバイクなら思いがけない道もコースになる

快適性と走破性の高いワイドタイヤ

グラベルロードバイクといっても、いろいろなモデルがある。単純にいえば、ロード寄りなのか、MTB寄りなのか。一つの判断基準は純正タイヤだ。どんな太さで、どのような形状かを見れば、おおよその方向性はわかる。

ブロックパターンなど、タイヤのゴムの部分に凹凸が沢山あるモデルはオフロード指向で、逆に凹凸の少ないスムーズなパターンならオンロードを重視しているということ。太ければいいというわけではない。だが、太くなるのがトレンドであり、最新モデルは50cが標準となりつつある。

マルチで使うなら40c以上が望ましいが、舗装路を中心に自転車通勤やツーリングユースなら35cもあれば十分だ。その気になれば、用途に応じてタイヤは交換してしまえばいい。ただし、フレームとタイヤのクリアランスが小さいと、太くできないこともある。カタログには対応する最大タイヤ幅が記されているのでチェックしよう。

さて、タイヤを太くするメリットは、空気圧を低くできることだ。太ければ太いほど低圧してフワフワと走れる。重量は重くなるので加速は鈍くなるが、空気はサスペンションの代わりとなる。セッティングが決まると、高級セダンのようにフラットに走れる。また、接地面積が増えるため、未舗装路でグリップ力と推進力が増すというメリットもある。

同じ銘柄(パナレーサー・グラベルキング)でもコースによってタイヤの種類も様々

ハンドルの話

グラベルロードバイク用はロードバイクよりも、末端がハの字に拡がっているフレアハンドルを採用している。これは未舗装路での安定感が増すための工夫で、タイヤ幅に呼応するように、ハンドル幅も拡がる傾向にある。ただし、コースやライダーの体格によってベストサイズが違い、フレアする角度が大きいほど未舗装路を前提としている証拠である。

手前に向かって拡がるフレアハンドル

フロントシングルでスタイリッシュな「KONA・ROVE AL」

駆動系のトピックは、チェーンリングの枚数だろう。シングル(×1)は、フロントディレイラーを省いて構造をシンプルにする方式だ。前変速がなくなることで空いた左側のコントロールレバーは、ドロッパーシートポスト(走行中にサドル高を上下できる装備)の操作に使える。ただしドロッパーは本格的なオフロード向けの装備で、街乗りや通勤では出番がない。平坦路が中心ならフロントはダブルの方が、脚に合ったギアを細かく選べて扱いやすい。

予算感と注意点

予算についても触れておこう。通勤用に買うなら10万円ぐらいから。休日はオフロード走行やキャンプツーリングなどもしたいなら、15万円以上のモデルを買った方が、後々、余計な出費をしなくて済む。中には100万円オーバーのモデルもあるが、初めてのグラベルロードバイクとしては不要だろう。

グラベルロードバイクの魅力はなんと言ってもストライクゾーンの広さだ。シティサイクルやクロスバイクよりも、ずっとずっとスポーティで、いろんな走り方も楽しめる。初めてのスポーツバイクなら、グラベルロードバイクからスタートするのが最高だ。

菊地武洋 きくちたけひろ 自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。 この著者の記事一覧はこちら