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東京都のデータによれば、東京都区部に在留する中国人は2026年1月時点で約26万人に達しています。2015年の約15万人と比べると、10万人以上増えたことになります。このように日本に住む中国人が増えている背景には、中国経済の減速に加え、日本側にも「2つの要因」があると考えられます。牧野知弘氏の著書『「外国人不動産」問題』(祥伝社)より、不動産を買い進める中国人の特徴とともに、この2つの要因についてくわしくみていきましょう。

港区でも「安い」中国人富裕層、湾岸エリアに集まる中流層

中国人富裕層は、日本のどのようなエリアを好むのでしょうか。

彼らの多くは、東京都内でも日本人富裕層が好んで住む、3A(青山、赤坂、麻布)地区などに住んでいます。このエリアにはインターナショナルスクールが充実しており、子供の教育に熱心な彼らには好都合なのです。

来日まもなくは賃貸マンションで暮らしますが、彼らのお好みはこれらのエリア内にある超高級賃貸レジデンスです。1住戸が200m2程度の物件に月額賃料200万円を支払いながら暮らします。

彼らの生活水準はきわめて高く、月額200万円程度の家賃を「安い」と感じ、むしろもっと広い住戸を希望しても、日本には自身の要望を満たす賃貸マンションがなかなか見つからないとぼやきます。

賃貸マンションに暮らしながら彼らが狙うのは、同じエリアにある分譲マンションです。円安であることも手伝って、1住戸4億円から5億円程度は苦もなく買える金額なのです。

読者のみなさんは、中国人は勝どきや月島、豊洲などの湾岸エリアがお好みとの印象が強いかと思いますが、同エリアに集まるのは、中国人移民のなかでも中流層になります。

富裕層ほどブランドエリアの中低層マンションを選択する傾向があるのは、日本人富裕層と同じような発想をしているのだと言えます。それでも、彼らのお眼鏡にかなう物件は少数だとされます。たとえば、住戸内にトイレが1つしかない、寝室に専用のシャワールームがない、などといった不満がいくつも出てくるそうです。

いっぽう、湾岸エリアに住む中流層は、住戸面積は70m2台であっても、広いラウンジやコワーキングスペースなど共用施設の充実を好む傾向が強いとも言われます。現役でまだバリバリ働く必要のある中流層と、不動産収入や配当収入などが十分にあり、あまり働く必要のない富裕層との間で好みが分かれるとも言われています。

遊び場は圧倒的に「銀座」

また、富裕層が好む遊び場は圧倒的に銀座です。六本木などにも遊びに行きますが、六本木は欧米人が多く、やや肩身が狭いと思うのでしょうか、銀座に集まる傾向があります。

銀座は百貨店やブティック、ブランドショップなどが多く、買い物好きな彼らの欲望を満たしてくれる街でもあるのです。さらに、銀座には中国人富裕層が集まるクラブなどがあり、互いの情報交換の場となっています。

多くは、中国で十分な財を成してきた人たちで、こうした人たちのなかに、ジャック・マー氏や万科企業の創業者・王石(ワン・シー)氏などが姿を現しているとも言われています。

急増する在留中国人…日本へ脱出を試みる「潤日(ルンリィー)」

日本にやってくる富裕層の特徴は、日本について事前に多くの情報を持っているところにあります。

彼らは移住前でもよく日本にやってきて日本中を旅行し、日本の地理や文化、歴史をよく勉強しています。日本の自然の豊かさ、食のおいしさ、治安の良さなどについても理解が進んでいて、精神的な余裕を持って日本に住んでいる人が多いのです。

そうした意味で、これまで日本にやってきて暮らし始めた華僑や新華僑と呼ばれる人たちとは一線を画する人たちとも言えます。彼らは日本国内で高度な消費をし、日本人とも友好的に交わり、マンション生活においても住民とのトラブルが少ない人たちなのです。

10年で11万人超…急増する在留中国人

中国経済の減速や言論統制は、富裕層を中心に日本に脱出する「潤日」を加速させました。彼らが大量に日本にやってきた様は、東京都の統計から知ることができます。

東京都区部に在留する中国人数は2015年1月で14万7518人でした。この数は2020年にコロナ禍が発生し、2021年から2022年にかけて大きく数値を落としますが、2023年には対前年比で14.7%増加してコロナ前(2020年1月)の人数に戻ります。

さらに2024年には、同12.6%増の22万3675人に。最新のデータ(2026年1月)で26万2320人になっています。【図表】

[図表]東京都区部の在留中国人数 出所:東京都

このなかに、潤日の人たちが大量に含まれていたことが想像されます。

激しい円安で日本の不動産が「大バーゲンセール」状態に

そして潤日を大いに後押ししたのが、日本銀行(日銀)の低金利政策でした。人民元と円の交換レートは2020年1月末で15.626円でしたが、現在では22.264円(2026年1月末)。42.5%もの円安になっています。

日銀は2013年以降の大規模金融緩和政策のなかでゼロ金利、マイナス金利政策を取り続けて景気を刺激し、デフレからの脱却を図ってきました。

さらに2020年から始まったコロナ禍では、関連融資や各種補助金、支援金などで十数兆円もの多額のマネーをマーケットに供給しました。そして、コロナ禍の影響が薄れていった2023年以降も景気の動向を見守るとのことで、政策金利の引き上げを実施しようとはしませんでした。

いっぽう欧米各国もコロナ対策で大幅な金融緩和を実施していましたが、同時期にはインフレを警戒して利上げに舵を切った結果、欧米各国との金利差が広がり、結果として「円キャリートレード」と呼ばれる円売りが生じ、激しい円安状況を招くに至ったのでした。

日本に逃げ込もうとしている潤日の人たちにとって、円安は大変な恩恵をもたらします。日本にペーパーカンパニー等を設立して経営・管理ビザを取得、日本で不動産を買い求めたのです。

中国不動産の高騰を目の当たりにしてきた彼らにとっては、日本の不動産は魅力的でした。日本のマンションは中国のそれと違って設備仕様が良いです。私も何度か中国のマンションを見学していますが、住戸内の細かな仕上げ、サッシの建付けなどで驚くほどの差があります。

これが円安によって大バーゲンセール状態にあるのですから、買わない手はありません。まだ日本に居住していない非居住者も含め、日本のマンションを購入しておこうとの機運が盛り上がったのです。

さらにコロナ禍が追い打ちをかけた

実は、コロナ禍は日本のマンションマーケット高騰の原因とも言われています。本来であれば、大規模金融緩和政策は2020年に開催予定だった東京五輪(実際は2021年に開催)を境目に政策転換をし、金融引き締めに転じると思われていたのが、コロナ禍によって、逆にさらに大量の資金をマーケットに流し込む政策になりました。

マーケットにあふれ出たマネーはコロナ対策に回されただけでなく、富裕層などによって株式や不動産といった実物投資に大いに使われたのです。

国内富裕層の投資に加勢したのが中国人をはじめとした外国人投資家で、彼らのマネーが集中的に不動産に向かったがゆえに、東京や大阪といった大都市でマンション価格の激しい高騰が生まれたのです。

日銀は2024年3月にゼロ金利政策の解除を宣言、7月以降数度にわたる利上げを行なっていますが、円の他国通貨に対する円安の状況は改善を見るに至っていません。

牧野 知弘

不動産事業プロデューサー