《ライバー刺殺》「吐血してがんと似た症状、心臓止まるかも…お金貸して」被害者に金を渡し続けた被告はネットカフェ生活も「怒り?特にそういうのはない」【裁判傍聴】

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東京都新宿区の路上で昨年3月、ライブ配信中だった「最上あい」こと佐藤愛里さん(当時22歳)が刺殺された事件で殺人などの罪に問われた栃木県小山市の職業不詳・高野健一被告(44)の裁判員裁判はまもなく、東京地裁(井戸俊一裁判長)で論告求刑公判を迎える。

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高野被告は起訴内容を全面的に認め、被害者遺族にも公判で謝罪しており、金銭トラブルなどの経緯が量刑でどこまで考慮されるかが注目されそうだ。

大学中退、職場のパワハラで自殺未遂、入院も…

起訴状などによると高野被告は昨年3月11日午前9時50分ごろ、JR高田馬場駅近くの路上でライブ動画を配信していた佐藤愛里さんに持参したナイフで襲い掛かり、顔や腹などを複数回刺して殺害した。佐藤さんが負った傷は検察側の証拠調べでは61か所にも及び、高野被告の強い殺意を表す事情とみている。

一方で、高野被告は配信を通じて知り合った佐藤さんに当初は恋心を抱き、借金の申し出に応じて消費者金融で借りた金などを原資に約250万円を貸し付けた。しかし、佐藤さんはわずか3万円を返済したのみで、裁判所の返還命令にも従わなかったため、高野被告は借金返済などのために生活に困窮していた。

3日に開かれた第2回公判では被告人質問があり、さらに動機に関わる高野被告の詳細な暮らしぶりが明らかになった。

高野被告の母親は昨年12月22日に亡くなり、残された家族は父と妹だという。高野被告の最終学歴は大学中退で、その理由を弁護人に問われると「人の目がすごく気になってしまい、友人ができず通えなくなりやめてしまいました」と答えた。

以降、派遣会社で働いていたが同僚のパワハラなどを理由に自殺未遂をして入院、統合失調症と診断された。退院後は家族と同居していたが、2022年12月ごろに小山市内の実家を出てひとり暮らしを始めたという。高野被告はその理由や経緯をこう答えた。

「父と喧嘩になり出ていけと追い出されました。精神科からもらった睡眠剤を大量に飲んで台所でボーっとしていてその時に台所を汚し、それを父に怒られました。(薬を大量に飲んだのは)ストレスから逃れるためです。佐藤さんがお金を返す約束をしたのに返してこなかったからです。

それで、父に『何分で出ていける』と聞かれたので、30分で出ていけると言いました。その後はインターネットカフェみたいなところで2週間くらい生活していましたが、妹が不動産屋で1番安い部屋を見つけてくれました」

「吐血してがんと似た症状、心臓停まるかも…お金貸してくれ」

佐藤愛里さんとの出会いから借金を重ねるまでについては、次のように述べた。

「(2021年12月に)初めて佐藤さんの配信を見たときは視聴者は15人くらいで、彼女が人気だったのは全部のコメントに丁寧に返信をしていたからだと思います。2022年始めにLINEを交換してやりとりしていくうちにそういう(恋愛)感情になったと思いました。LINEの初の友だちと言ってくれたのも嬉しかったです。

佐藤さんのAmazonのほしいものリストを作るのを手伝っている時に文字でやりとりするより『電話の方がわかりやすくない?』と言われ、電話をするようになりました。会話をしながらゲームをしたり他の人の配信を見たりすることもありました。佐藤さんから『結婚やな』『彼氏みたい』『高野いなくなったら配信やめる』などと言われたことは素直に嬉しいと思いました」

その後、高野被告は山形市内でキャバクラに勤務していた佐藤さんに“営業”をかけられ、リアルで会いに行くことになる。同年の8月ごろだった。

「障害を持っているから会うのは恥ずかしいと最初は断りましたが、『偏見を持たない』という佐藤さんに『私の働いているお店に来る?』と聞かれ『会いたい』と言いました。それまでキャバクラには行ったことはありませんでした。山形駅前の焼肉屋に一緒に行ってそこでは他の配信者の裏話みたいな話を教えてくれたりもしました。

それから10月までの間に合計4回キャバクラに行き、ネックレスとApple Watchをプレゼントし、様々な理由でお金を貸すよう求められるようになり、150万円くらいを貸しました。吐血をして咳が止まらなくなり『がんの症状に当てはまる』からとか、その後もストレス性の胃潰瘍と不整脈でいつ心臓が止まるかわからないと診断されたからお金を貸してほしいと言われました」

すでに消費者金融から満額借りて佐藤さんへの貸し付けに充てていた高野被告は、ようやく「騙し取られているのかも」と疑念が膨らんできたという。そして佐藤さんからの連絡は徐々に途絶え、父親から家を追い出された高野被告も追い詰められていく。

「怒り? 特にそういうのはなく…」

貯金が底をつき、消費者金融からの督促状に頭を悩ませた。民事訴訟で勝訴判決を得ても借金は返ってこず、警察に詐欺ではないかと相談しても、3万円の返済があったことなどから「警察は民事では動けない」と突き放された。八方塞がりの高野被告はこの頃、遺書の下書きをしたためた。その下書きを弁護人が読み上げた。

〈疲れてしまって僕は死のうと思います。私の人生は終わりにしようと思います。やりたい放題の状態が少しでも抑制されこれ以上被害者が生まれないように〉

そして高野被告はインターネットショップでナイフを購入した。

「佐藤さんを傷つけるという思いはありませんでした。デザインがカッコよかったので趣味というか。よくネットで買い物していたので開けた段ボールを細かく切って捨てる日常使いもしていました。自分が死ぬためにも使おうと思っていました。自殺は首吊りかナイフでと思っていた」

しかし、実際はそのナイフで佐藤さん殺害という凶行に及んだ。その理由を問われた高野被告は、こう答えた。

「佐藤さんが山手線一周するという配信を見て、体か顔を切り付ければ警察の取り調べとか裁判で、彼女が障害者からお金をだまし取っていることを知らせることができると考えました。殺すということは一度も考えていませんでした。当日は朝5時に起きて顔を洗ったりヒゲを剃ったりいつもの朝の準備をしました。

ナイフ2本とバッテリーと携帯を持ち、東京方面に向かい、佐藤さんの配信を見たり聞いたりしていました。山手線一周は投げ銭でサイコロをふり、行先が変わるゲーム性だったので本当に会えるかはわからなかったです。怒り? 特にそういうのはなく、事件が起こせるのかなとか(会えなければ)無理だったらそれはそれでいい、とそんな気持ちでした」

しかし、運命のサイコロは最後に2人を引き合わせ、事件は起こった。被告に求められる刑の重さはいかばかりか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班