江頭2:50

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金色の全身タイツ姿

 サッカーW杯北中米大会の日本対ブラジル戦を観戦するためにアメリカ・ヒューストンを訪れていた江頭2:50が、フジテレビのニュース番組「FNN Live News α」の生中継に映り込み、女性アナウンサーに抱きついたことが物議を醸している。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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【写真】「ドーン!」…舞台上で暴れまわる江頭2:50。乳首に「NG」も

 金色の全身タイツ姿でカメラの前に現れた江頭は、現地のファンの一員として日本代表への応援を叫びながら中継に加わり、最後にはレポートを担当していた遠藤玲子アナウンサーを背後から抱き締め、関係者に制止されて画面の外へ連れ出されていた。

 かつてなら「江頭らしい放送事故」として笑い話になっていたかもしれない場面だが、女性への一方的な身体接触に対して、ネット上では批判の声が相次いだ。

江頭2:50

 江頭はもともとルール無用の暴走で知られてきた芸人である。バラエティ番組では、黒いスパッツという姿で突然現れ、叫び、暴れ、脱ぎ、出演者や司会者に襲いかかり、スタッフに羽交い締めにされて退場する。その一連の流れが定番ネタのようになっていた。彼はトークで場を支配するのではなく、番組の秩序を一瞬だけ破壊することで笑いを生む「乱入者」だった。

 今回の抱きつきが批判された最大の理由は、「女性への身体接触」が一線を越える行為だと見られているからだ。昔の番組でも、江頭がこの手のセクハラ的な暴挙に出る場面はあった。しかし、それはあくまでもバラエティ番組の中で笑いを生むための手段として、その時代の空気の中でギリギリ許容される範囲で行われていた。

 しかし、女性の社会的地位が向上して、セクハラに対する世間の目も厳しくなっている現代において、女性の体に直接触れるような行為は許容されなくなっている。しかも、今回の番組は笑いを目的にしたバラエティ番組ではなく、スポーツの中継番組である。

 遠藤アナはバラエティ番組の共演者としてその場にいたわけではない。スポーツ会場の状況を伝えるという職務を遂行している最中だったのだ。その意味でも江頭の行為は行き過ぎたものだった。

 振り返ると、2025年の「オールスター感謝祭 '25春」(TBS)でも、江頭の暴走が問題になったことがあった。彼は生放送中、「俺の女になれ」と叫びながら女優の永野芽郁を追い回した。

 番組側は江頭の出演部分を配信せず、のちに謝罪文を発表した。江頭自身もYouTube動画で永野に謝罪した。それから一年余りで再び同じような騒動が起きたことで、「以前の失敗から何も学んでいないのではないか」というふうに見られることになった。

YouTubeで成功も

 また、江頭は以前よりも広い層から愛されるようになったからこそ、批判されやすくなっている面もある。彼は2020年にYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」を立ち上げた。そこでは、テレビではほとんど映されなかった彼の素顔が見えるようになった。

 さまざまな企画に体当たりで挑んでは一喜一憂し、スタッフと冗談を交わし、失敗すれば落ち込み、若者には真剣な言葉で励ましを送る。かつて「嫌いな芸人」「抱かれたくない芸人」の常連だった江頭は、実は不器用で純粋な人物だということが明らかになり、ファンが急増した。

 YouTubeの活動は江頭にとって大きな成功だったのだが、そこには負の側面もあった。本人が昔と変わらず過激なことをやっているつもりでも、そこに他人を傷つけるような要素が含まれているように見えると、今までよりも過敏に反応されるようになったのだ。「本当は優しい人」「筋を通す人」と思われているからこそ、問題行動を起こしたときにファンが「裏切られた」と感じてしまう。

 もちろん、今回のトラブルの責任を江頭一人に負わせるべきではないだろう。番組スタッフが江頭をカメラの前に呼び込み、何らかの暴走が起きることを期待していたのだとすれば、テレビ局にも責任の一端があることになる。ただ、常識的に考えて、江頭が女性アナに抱きつくことをテレビ局側が初めから許容していた可能性は低い。江頭本人の責任は免れないだろう。

 江頭のように過激な芸風を売りにする芸人が存在すること自体に問題はない。ただ、他人を傷つけたり、迷惑をかけたりするようなことがあれば、それは今の時代にはいかなる理由があっても許容されることはない。江頭2:50がこれからも伝説的な存在であり続けるためには、時代の変化を拒むのではなく、誰かの尊厳を踏みにじることなく秩序を破壊する、新しい暴走の形を見つけなければならないだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部