小さな古本屋を舞台に、訪れる人々の人生が一冊の本から動き出す。過去に登場したキャラクターたちの縁も描かれる『本なら売るほど』第3巻【書評】

【漫画】本編を読む
『本なら売るほど』(児島青/KADOKAWA)は、街の小さな古本屋「十月堂」を舞台にした、本を軸に展開する人間模様を描いた短編連作シリーズ。気だるそうな男性店主が営むこの店には、今日もさまざまな人が訪れる。本好きの常連、背伸びしたい年頃の女子高校生、夫の蔵書を手放しに来た未亡人など。一冊の本が彼らの人生を大きく動かしていく。
2026年4月に発売された第3巻で目を引くのは、一話完結の読み切りに近い構成だった第1巻と比べ、巻を重ねるうちに過去に登場したキャラクターがたびたび顔を見せるようになり、十月堂という場所とその周辺の人間模様に厚みが増しているところだ。常連客がご近所さんとして登場したり、前話の伏線がさりげなく回収されたりと、読み返したくなる仕掛けがそこかしこにちりばめられているのである。
また、本の話だけでなく人間同士のドラマも見どころだ。店主の住まいが店の裏に移ったことで、建物のオーナー夫妻との交流が増え、酒を酌み交わす日常も描かれる。その場面では、かつて会社員だった店主が古本屋を始めた決意が語られるのだが、その姿を見るとこれから何かに挑戦しようとする人は勇気がもらえるはずだ。
巻末に物語に登場する書籍の一覧が掲載されているのも嬉しい。読書好きはもっと本が読みたくなり、最近あまり読書をしていないという人には、再び本の世界とつながるきっかけをくれるだろう。
文=坪谷佳保
