大鶴義丹が語る AI時代に輝く舞台芸術の価値 「舞台の板の上では平等」
俳優の大鶴義丹(58)が30日、都内で新設される「開智大学」の開学記者発表会に出席した。イベント終了後に本紙の取材に応じ、AIが及ぼす業界の変化について「映像を筆頭に業界の全てが変わってしまった。AIが及びにくいことで、逆に力を持ってきたのが音楽や演劇などの実演だと思う」と所感を述べた。
開智国際大と東京福祉大が統合され、来年4月に開設予定の新大学。この日は開智学園の青木徹理事長らと、AIについてトークを展開した。
大鶴は長年舞台を中心に活躍。「舞台には究極のアナログ的な身体性との対峙(たいじ)という側面があるのではないか。映像演劇というのは、どう編集されるか分からなかったり、出口が分からないままやっているというのはあります。一方で、舞台に編集はなくて、間違ったらそのまま進んでいく。全てが止まらない」とAI時代に違いを生み出す舞台の魅力について語った。
自身はプライベートで、オーストリアのバイクメーカー「KTM」の情報をドイツなどのSNSユーザーから収集する目的などで、AIを駆使している。「なかなか日本に情報が入ってこない。ドイツにユーザーが多いので、向こうのSNSを全部拾って、グーグルなどで故障対策などを集める」と活用方法を語った。仕事でも文章の誤字脱字の修正に使っているという。「かなり日常的に入り込んでいる。メカニックなことが好きなんです」と笑う。
一方で舞台にAIは「物の見事に入り込んでいない」と肌で感じている。「舞台は1から10まで身体性なんです。今、動画は同時進行でも加工ができる。舞台はそれができない。舞台の板の上では平等。役者は(本番の)1000人とかの前で恐ろしい目に遭うという、最後の恐怖の部分を共有している。だからこそ、世代の違う俳優さんたちとも、同じ価値観を共有できる」と舞台ならでは魅力を力説した。
失敗が許されない極限の恐怖の中でこそ輝く人間の強み。大鶴は「たまたま、僕は実演の芝居を多くやっていて良かった。映像編集は、昔テレビ局のビルだけでやっていたものが、今はスマホ一つでできてしまう。映像の価値が下がっているような気がする。映像しかできない人はなかなかしんどい時代だと思う」とここ最近の急激なテクノロジーの進化を振り返った。舞台に携わるものとして「コロナ以降、舞台演劇にお客さんが来る時代になった」と変化も感じている。
24年に亡くなった父で劇作家の唐十郎さんにも思いをはせた。「唐さんが生きていたらAIをどう思うか」という質問について「イメージの中の父は、意外と新しい物好き」と回答。「時事性を大事にする人だから、演劇のストーリーに取り入れているんじゃないかな」と、ほほ笑みながら推察した。
「舞台は自分の中のメインストリーム」。これからも大鶴は舞台の板に熱を込めていく。

