【小林 拓矢】激変する多摩ニュータウンを支える3路線…京王・小田急・モノレールが生んだ「多摩センター」強さの正体
「衰退する郊外」と言われがちだった多摩ニュータウンの中心地・多摩センターに、いま子育て世代が集まりはじめている。駅周辺の地価は2014年から十年以上にわたり上昇を続け、空き家・空き室数は減少、20〜30代のファミリー層の転入増加も続いているという。
かつて百貨店が並んだ駅前は、無印良品やユニクロ、ニトリなど生活密着型の専門店が集まる「ココリア多摩センター」に姿を変え、保育室付きコワーキングスペースまで備える街へと進化した。
こうした変化を支えているのが、京王・小田急・多摩都市モノレールという複数路線が乗り入れる交通網だ。後編では、この街を支える鉄道網の実像に迫る。
前編記事『オワコンと呼ばれた多摩ニュータウンに光…実は住みやすい街「多摩センター」いま起きている大転換』より続く。
多摩エリアをカバーする便利な3路線
多摩センターには1970年代に京王と小田急が駅を設けた。この時代に2通りのルートで都心部へのアクセスを確保したことは、非常に先見の明があったといえる。
多摩センター駅からは各地に向かうバス路線が走っている。このバスターミナルは駅から一度も横断歩道を渡ることなく利用でき、鉄道とバスの接続が楽なうえ、歩行者への配慮も行き届いている。
さらに、2000年1月には多摩都市モノレールが延伸し、この地に駅を設けた。今後、町田方面に延伸する計画もある。
モノレールの開業により、中央大学多摩キャンパス方面へのアクセスが向上し、多摩地域の中心都市である立川市の中心部にも直結した。
さらに高幡不動での乗り換えにより、八王子方面への利便性も向上した。それまでは、いったん神奈川県内の橋本まで出て八王子に向かう必要があった。
多摩センターが複数路線を利用できる便利な駅であることは、動かしようのない事実といえる。
新宿へのアクセスに注力する京王電鉄
3路線のうち京王電鉄は、多摩センターエリアと新宿とを結ぶことに力を入れている。平日昼間の特急で30分程度、夕方の下り京王ライナーでも同程度の時間で新宿駅と結ばれている。朝ラッシュ時の京王ライナーでも42分だ。ただし区間急行では、朝ラッシュ時の上りで50分程度かかる。
平日昼間の京王相模原線は区間急行・快速と特急の組み合わせでダイヤが組まれており、区間急行や快速は相模原線内で各駅に停車する。特急は多摩センター〜橋本間で各駅停車に種別を変更する列車もあって、これは列車間隔を平準化する意図がある。
京王多摩センターから新宿までの運賃は交通系ICカード使用で356円。小田急多摩センターから新宿までの387円より31円安いこともあって、新宿に向かう利用者は京王電鉄を選ぶ傾向がある。
京王相模原線の急行・区間急行・快速は、都営新宿線へ直通する列車が多い。境界駅となる京王新線の新宿駅を境に、都営新宿線はそのまま市ケ谷や神保町方面へ向かう。つまり新宿駅は、運賃と路線が切り替わる分岐点になっている。
一方で、区間急行や快速の利用者が調布駅で特急に乗り換えるケースは非常に多い。これは京王多摩センターからの利用者の多くが、新宿までの速達性を重視していることの裏付けといえる。
なかでも特徴的なサービスが、2018年に登場した京王電鉄初の有料座席指定列車「京王ライナー」だ。乗車券に加えて座席指定券を購入することで、新宿から郊外(京王八王子・橋本・高尾山口)間を座って快適に移動できる。この座席指定券は京王チケットレスサービスまたは券売機での事前購入で410円(小児同額)、車内購入だと700円となる。
運行本数を見ても、相模原線方面への着席サービスが手厚く設定されている。平日下りは京王八王子方面が7本、高尾山口方面が1本であるのに対し、京王多摩センターや橋本に向かう列車は13本ある。逆に、平日上りの新宿行きは京王八王子発7本、高尾山口発1本、橋本発7本だ。
こうしたサービスの充実は、利用者数の多さとも整合する。京王多摩センター駅の2024年度乗降人員は78801人にのぼり、小田急多摩センター駅の同年度乗降人員46353人を大きく上回る。
多摩センターに小田急電鉄がある意義とは?
先ほど述べたように、駅の乗降人員だけを見れば京王電鉄のほうが多い。しかし小田急電鉄多摩線もまた、多摩センターエリアには欠かせない路線である。
小田急多摩線が存在する意義は、新百合ヶ丘で小田急小田原線に接続し、代々木上原で東京メトロ千代田線に乗り入れ、表参道・赤坂・霞が関・大手町方面へとアクセスできる点にある。
2018年3月に多摩線と千代田線の直通列車はいったん廃止されたが、2025年3月に復活した。現在の小田急多摩線は線内完結の列車も一部あるものの、多くが新宿方面または千代田線へと直通する便利なダイヤになっている。
とくに霞が関や大手町に通勤する人にとっては欠かせない路線だ。都心へのアクセスという観点から見れば、小田急電鉄は多摩センターエリアに不可欠な存在である。
地域内の移動を活性化する「多摩都市モノレール」
多摩センターエリアの交通網は、どうしても都心方向を重視したものになりやすい。これは多摩地域の鉄道網全体にも言えることだ。そのあたりを補完するために多摩都市モノレールはつくられ、多摩センターはこの恩恵を大いに受けている。
現在の多摩地域の中心地は立川市だが、多摩エリア内の移動がバス中心になっているのは長年の課題だった。その解消のためにモノレールはつくられ、現在は町田方面への延伸も構想されている。
多摩センターからの視点でみれば、立川に行きやすくなったことは大きい。中央大学・明星大学・帝京大学へのアクセスも向上し、学生が多摩センターに集まりやすい構造ができている。
こうした交通網の利便性が、一般には「衰退した」と評されがちな多摩センターを下支えしている可能性がある。多摩センターが「住みよい街」として再評価される日は、そう遠くないのではないか。
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