公的補償なく治療費300万円 ヒグマに襲われた男性「100針以上縫う大けが」襲撃から5年 札幌
札幌市東区の住宅街にヒグマが出没し、4人が重軽傷を負った事故から6月18日で5年。
被害者の男性はいまも後遺症に悩まされています。
深刻な人身事故を繰り返さないために何が必要なのでしょうか。
「車が突っ込んできたのかなと思うくらい」体重158キロ・オスのヒグマに襲われ…
(記者)「ここをいつも通り出勤していた?」
(安藤伸一郎さん)「そうですね。このあたりで後ろからクマに襲われまして」
(安藤伸一郎さん)「倒されてという形になりました」
札幌市東区に住む安藤伸一郎さんです。
5年前の6月18日、この場所で命の危険にさらされました。
2021年6月18日、東区の住宅街に突如、ヒグマが現れ、安藤さんを含む男女4人を次々と襲いました。
(安藤伸一郎さん)「最初車か何かが突っ込んできたのかなと思うくらいの勢いでした。最初は本当に全然分からなくて、倒されてカバンを揺らされて噛まれた後に、クマだというのが分かりました」
安藤さんを襲ったヒグマは、体長160センチ・体重158キロのオスで、未明から5時間近く住宅街をさまよいました。
(安藤伸一郎さん)「一番最初に倒された時に引っかかれた痕です」
安藤さんは肋骨6本を骨折し、あわせて100針以上を縫う大けがをしました。
(安藤伸一郎さん)「ICUにも10日間くらい入院して、結構ひどかったです。襲われてからリハビリが終わって一般の仕事に就くまでは半年ちょっとかかっていますね」
事故から5年が経ったいまも後遺症に苦しみ、病院への通院を余儀なくされています。
(禎心会病院 表圭一副院長)「冬どうでした?」
(安藤伸一郎さん)「冬は実際痛いです。薬を飲んでいても痛い時は結構痛くて」
毎日3回、強い鎮痛剤を飲み続けていますが、痛みが完全に消えることはないといいます。
(禎心会病院 表圭一副院長)「トラックやダンプにぶつけられた状態に近い。この神経の障害自体は戻るということはないと思います。(治療を)自費でやれということはもう無理なので、やはり保険というのは必要だと思います」
これまでに支払った医療費などはおよそ300万円。
しかし、道内ではクマの被害について公的な補償制度はありません。
(安藤伸一郎さん)「僕にとってはクマが出てきて襲われたというのは自然災害みたいなものだとは思うんですけれども、自分でいろいろ調べてみても、やはりそこに補償がない。金銭面的なところでいま結構きついところがあります」
ヒグマ対策は“草刈り”や“電気柵” 住民の不安は消えず…
東区に出没したクマは当別町方面から石狩川を通り、水路に沿って住宅街に迷い込んだとみられます。
街中でもいつ被害にあってもおかしくないクマの脅威。
昨年度、札幌市内の出没件数は363件に上りました。
そのうちの6割以上が「南区」でした。
南区の簾舞地区です。
地域の住民や市の職員が協力し、年に2回、河川敷などの草刈り作業を続けています。
(参加した住民)「クマは川を歩いて来ると言われていますので。広いところで自分たちが隠れるところがないと、不安になって通らないと聞いておりますので」
クマの通り道を減らすために草刈りを始めたきっかけがー
(カメラマン)「クマいるから出ない方がいい。クマいるから中入っててください。クマがいる、中入って」
7年前、住宅街でヒグマの出没が相次ぎました。
住民はクマが駆除されるまで1週間近く不安な日々を過ごしました。
それ以降、町内会ではクマの出没を防ぐため、住民を集めて草刈りを続けています。
(簾舞まちづくり連合会 山北尚志事務局長)「ことしはいつもより多いです。クマは身を隠しやすいから、視認性を良くすることが人間にとってもクマにとってもお互いに良いのかなと」
(札幌市環境共生担当課 藤田将係長)「(5年前の)東区も市外から川を渡ってきたと考えられている。こういう草刈りの取り組みなどが広がることで、(クマの侵入を)防げる可能性があるかなと思っております」
同じく南区の豊滝にある家庭菜園です。
(記者)「クマの足跡とかがついていたことはあった?」
(住民)「あった、こわい、こわいね」
私たちは5年前にも女性の家庭菜園を取材していました。
畑のトウモロコシがクマに食い荒らされていたのです。
現在、畑には電気柵が張り巡らされています。
その対策を担ったのが、長年クマ対策を進めてきた石澤さんです。
(未来のアグリ 石澤裕さん)「警戒してこれなんだろうと思ったら、だいたい鼻で触ってくれる。ウエットな鼻で触ると、すごく電気が抜けやすい。バツンと来て、大抵は逃げていく」
しかし、電気柵の設置場所はここ数年で大きく変化しているといいます。
(未来のアグリ 石澤裕さん)「去年からは顕著に畑よりも人を守る、住宅地というよりも森のそばにある施設、公園・学校や病院・工事現場とか、そういうところの電気柵の設置が増えていますね」
2025年は住宅街や公園、病院近くまで出没が相次ぐ異常事態に。
そのたびに侵入を防ぐ対策がとられてきました。
2026年に入っても住民の不安は消えません。
札幌市中央区円山西町の住宅街では先週からクマの出没が相次いでいます。
(道総研フェロー 間野勉さん)「この住宅地に隣接してクマがずっと住みついているわけなんですよ。それがまた目撃されているということで」
専門家の間野さんは、この時期人里に姿を現すクマにはある特徴があると言います。
(道総研フェロー 間野勉さん)「ちょうどいまの時期はクマの交尾期にあたる。交尾期になりますと、オスグマがメスグマに求愛に来る。交尾をしたくないメスはオスをすごく嫌がる。できるだけクマのいない場所に逃げてくると。それがどこかというと、人間の近くになる」
ではこの先、夏から秋にかけてクマの出没は増えていくのでしょうか。
(道総研フェロー 間野勉さん)「去年の秋は一定数、札幌市の市街地に接近してきたクマを駆除している。そうするとその分減っていますから、去年と同じような形で出るということは非常に考えづらいと考えています」
出没は減るという予測の一方でー
(道総研フェロー 間野勉さん)「クマの問題はたとえその10頭出たから問題というよりは、1頭でも人間の生活圏の中に侵入して、非常に深刻な問題になります。東区のクマもそうでした、たった1頭のクマです。ですから油断はできなくて、たった1頭であっても不適切な餌付けをしたりとか、そういうことがないように引き続き、生活する中でいろいろ気をつけなければいけないということだと思います」
人とクマとの距離が接近する札幌市。
過去の教訓を生かし、深刻な人身事故を防いでいかなくてはなりません。
