こちらは、チャンドラX線宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「M83」です。うみへび座の方向、地球から約1500万光年先にあります。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「M83(Messier 83)」(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/ESA/AURA/STScI, Hubble Heritage Team, W. Blair (STScI/Johns Hopkins University) and R. O'Connell (University of Virginia); Image Processing: NASA/CXC/SAO/A. Jubett, L. Frattare and P. Edmonds)】

ハッブルが可視光線で観測したM83の全体像に、チャンドラで捉えた目には見えないX線のデータが合成されています。どちらも赤、緑、青で着色されており、優雅な銀河がカラフルにライトアップされたような印象を受けます。


M83は地球に対して正面(銀河円盤の平面側)を向けた、いわゆる「フェイスオン銀河」のひとつです。見事な渦巻腕(渦状腕)を持つその姿から、「回転花火銀河」の愛称で知られるおおぐま座の「M101」に対して、こちらは「南の回転花火銀河(Southern Pinwheel Galaxy)」の愛称で親しまれています。


星の死後に起きた予想外なX線の変動

M83は星形成活動が非常に活発な銀河であり、これまでにも数多くの超新星爆発が観測されているのが特徴です。その爆発後の様子をX線で観測したところ、予想外の現象が進行していることが明らかになりました。


アメリカ・カトリック大学などに所属するAndrea Prestwich氏を筆頭とする研究チームによると、チャンドラによる2000年から2014年までの14年間にわたる観測データを分析した結果、かつてM83で超新星爆発を起こした星の残骸である超新星残骸のうち22個で、X線の明るさが劇的に変化していることが明らかになりました。


通常、爆発から100年以上経過した超新星残骸は、時間が経つにつれて徐々にX線が暗くなっていくと考えられています。そのため、観測された超新星残骸の多くがこのような激しい変動を示したことは、天文学者たちにとって完全に予想外な出来事だったといいます。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡とチャンドラX線宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「M83(Messier 83)」(左)と、チャンドラが捉えた超新星残骸のうち2つの拡大図(右上と右下)。2つの残骸の位置は白い丸印で示されている(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/ESA/AURA/STScI, Hubble Heritage Team, W. Blair (STScI/Johns Hopkins University) and R. O'Connell (University of Virginia); Image Processing: NASA/CXC/SAO/A. Jubett, L. Frattare and P. Edmonds)】

X線の明るさが変動する理由は?

どうして、超新星残骸から再び強いX線が放たれているのでしょうか。研究チームは、主に2つの可能性を指摘しています。


最も可能性が高いのは、生き延びた星の存在を前提とする「高質量X線連星」のシナリオです。このシナリオでは、残骸を残した天体はもともと大質量星どうしの連星であり、まず片方が先に超新星爆発を起こしてブラックホールや中性子星が形成されたと考えます。


その後、爆発を生き延びたもう一方の星(伴星)からブラックホールや中性子星へガスが引き寄せられると、その周囲ではらせんを描きながら落下するガスによって降着円盤が形成されます。この円盤内で物質が超高温に加熱されることで、X線を放っているのではないか、というわけです。


もう一つは、「フォールバック(fallback)降着」と呼ばれる現象を想定したシナリオです。超新星爆発の際に吹き飛ばされた物質の一部が宇宙空間へ逃げ切れず、再び中心のブラックホールや中性子星に落下して降着円盤を形成することで、やはりX線を放っている可能性も考えられるといいます。


冒頭の画像はチャンドラを運用するCXC(Chandra X-ray Center)から2026年6月15日付で公開されています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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