【内田雅也の追球】つながり生んだ「辛抱」
◇交流戦 阪神8─1楽天(2026年6月5日 甲子園)
阪神は久しぶりに打線がつながり、連敗を止めた。交流戦の甲子園初勝利である。「全員で束になって攻める」という監督・藤川球児が目指す攻撃ができた。
5回表まで0―0。プロ20年目、41歳の楽天・岸孝之の老巧な投球に1安打に抑えられていた。OB室にいた前OB会長・川藤幸三が「さすがの投球術やな」と感心していた。「打者有利のカウントでボール球で誘ってくる。打者の打ち気をうまく利用している」
嫌なムード、そして均衡を破る先制決勝打を放ったのは佐藤輝明だった。5回裏2死一、二塁、岸の低めチェンジアップをライナーで右中間を破る2点二塁打だった。
殊勲打を放ったから書くのではない。佐藤輝は自身の「打ち気」をよくコントロールし、岸の誘いに乗らなかった。
それは2回裏の第1打席から見えていた。ストライクを空振り、ファウルしたが、ボール球の直球、カーブ、チェンジアップは我慢して見極め、四球を奪っていた。
いわゆる「打席自制心」である。好球必打や四球を選ぶ能力をいう。一つの指標として「BB/K」がある。四球数を三振数で割った数値で高いほど優れている。佐藤輝は今季0・51(4日現在)でセ・リーグ10傑に入っていた。昨季は0・35、1年目0・32を思えば、大幅に改善している。
この4番が示した姿勢が一つの手本となった。4回裏には森下翔太、高寺望夢、伏見寅威の3人が四球を選んで2死満塁を作った。岸から奪った4四球はすべてフルカウントまで粘り、見極めたものだった。
4回裏2死満塁は熊谷敬宥がフルカウントから恐らくボール球の外角低めスライダーを空振りして無得点に終わった。川藤は「あの球を見極めるのは至難の業」と話した。ただし各打者に打席での辛抱など「自制心」があったのは確かだ。
打撃不振の脱出法として<打ちたい気持ちを抑える>と古田敦也が『うまくいかないときの心理術』(PHP新書)に書いていた。<打てなきゃいけないと思った時ほど、フォアボールで出ようとする。打ちたい気持ちを我慢して時を待つ>。
今季のチーム四球数172は目下リーグ最多。2023年の優勝以来、毎年リーグ最多四球を選んでいる。持ち味の辛抱や粘りを思い返し、打線につながりが生まれたとみている。 =敬称略= (編集委員)
