二極化する高級 ラグジュアリー 市場 マローンスリアーズの「日常履き」と「特注」の両面戦略

記事のポイント
マローンスリアーズが二極化する市場に対応するためフラットシューズ強化やMTO拡大を進めている。
米国ローカライズや物流改善を通じて地域別需要に合わせた販売戦略を構築している。
主力ヒール維持に加えてブライダルや特注領域を強化しブランド価値の両面を高めている。
マローンスリアーズ(Malone Souliers)は、米国市場へのローカライズ、ブライダル戦略の拡大、そしてより野心的な受注生産方式(MTO)に賭けつつ、手に取りやすいフラットシューズをより強化することで、二極化したラグジュアリー市場にポジショニングしようとしている。
グローバルフットウェア市場の価格帯変化とコンフォート需要の拡大
卸売プラットフォームのジョーア(Joor)が今週発表した「2025年グローバルフットウェア分析レポート」によれば、250ドル(約3万7500円)未満のシューズは市場シェアの42%を占め、500〜1000ドル(約7万5000〜15万円)のラグジュアリー中心価格帯は2021年の34%から25%へと減少している。
サンダルは16%から24%、フラットシューズは6%から8%へと、コンフォート主導のカテゴリーも勢いを増している。
新CEOアンドリュー・ライト氏の起用とブランド体制の変化
歴史的に、彫刻的なヒールや700〜1200ドル(約10万5000〜18万円)のサテンミュールで知られてきたマローンスリアーズにとって、この変化は不都合に見えるかもしれない。
しかし、それこそ同社が2024年11月にアンドリュー・ライト氏を初の商業経験豊富なCEOとして迎え入れた理由でもある。これまで創業者のメアリー・アリス・マローン氏は、クリエイティブリードと事実上のCEOを兼任してきた。
ストリートスタイル採用によるブランド表現の刷新
この体制は、「ブリジャートン家(英題:Bridgerton)」とのコラボ(2021年)や「エミリー、パリへ行く(英題:Emily in Paris)」とのコラボ(2022年)といった文化的コラボレーションがイベント向け需要を牽引していた頃は機能していた。
しかし現在、ブランドは別のタイプの舵取りを必要としている。ライト氏は、地政学的な不安定さや、米国およびアジアにおけるラグジュアリー消費者のより慎重な動きを理由に「現在は〔フットウェアブランドにとって〕厳しい局面だ」と語る。
しかし、同氏はブランドの提供価値に構造的な強みがあると見ている。「ブランドはハイヒールだけではない。フラットシューズもヒールと同じくらい優雅に作っている」と述べ、現代の消費者の嗜好に適した構造品質を指摘した。11月公開されたトミー・トン氏撮影のキャンペーンは、その方向転換を反映している。
競争激化するフットウェア市場と他ブランドの動向
従来のラグジュアリー広告ではなく、同社はトン氏のストリートスタイルの視点を採用し、ニューヨークの街中でライト氏が「エネルギーと動き」と表現する要素を捉えた。
マディソン通りやフィフスアベニューの屋外広告に展開されたビジュアルは、ブランドにとって方向性の再設定となった。ライト氏は、ブランドがレッドカーペットだけではなく「リアルライフに装う女性」に語りかけていることを示す合図にしたいと語る。
競争環境として、マローンスリアーズが属するカテゴリーは非常に混雑しており、リストインデックス(Lyst Index)の過去2年のレポートによればブランドの二極化が進んでいる。
米国市場でのローカライズ強化と物流改善戦略
手に入りやすい価格帯では、コス(COS)、アディダス(Adidas)のSL72、プーマ(Puma)のスピードキャット、そしてミュウミュウ(Miu Miu)のバレエコア系シルエットが注目を集めている。
一方、上位ではアライア(Alaïa)のメッシュバレエフラットやザ・ロウ(The Row)のデューンサンダルが2年連続でランキングを支配している。そのなかで、伝統的ヒールブランドは戦略の再考を迫られており、ジミー チュウ(Jimmy Choo)はハンドバックやスニーカーへの注力を強めていると業界アナリストは指摘する。
マローンスリアーズは世界70以上の小売店、ハロッズ(Harrods)、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)、ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)、マイテレサ(Mytheresa)、レベルシューズ(Level Shoes)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)などに展開している。
しかしライト氏によれば、米国の百貨店は「より選択的に商品を仕入れており、ブランドが成功するにはローカライズされた品揃えが必要である」という。
主力ヒールからブライダルまで。商品戦略の強化
なぜなら「ニューヨークは米国全体ではないし、オレンジカウンティはロサンゼルスではない。ダラスはマイアミではない」からだ。
このため同社はニューヨークにオフィスとショールームを開設し、米国内に倉庫を設置して配送時間の短縮を図っている。ライト氏は、配送に時間がかかると顧客が離れるとし、「オンラインで靴を買ったら、昨日欲しいと思うものだ」と述べる。より速い物流体制は、D2Cと卸の両面において欠かせないという。商品面では、ライト氏は成功している要素から離れるつもりはない。
MTO強化と高価格帯領域の拡張
「モーリーンシリーズは引き続き不動のベストセラーだ」と述べ、ブランドを象徴するストラップヒールを指す。一方、ヒールのノアシリーズもそれに続く人気だ。
「ベティーナシリーズは2025年秋に発売予定で、ブランドのアイデンティティであるヒールの専門性を失わず、現代的な彫刻的ブロックヒールへと向かう動きを示している。ブライダルも同戦略に組み込まれており、感情に訴えるカテゴリーであり、顧客の生涯価値が高い領域だ」とライト氏は述べる。同時にブランドは、より高価格帯のカスタム製作にも注力している。
「双方を薄めない二軸戦略」でブランドの特別感を維持
同社のMTOプログラムはオンライン、ハロッズのシュー・ヘブン、各地のトランクショーで提供されており、価格は通常900ドル(約13万5000円)から1500〜2000ドル(約22万5000〜30万円)におよび、素材、ヒールのカスタマイズ、仕上げによって変動する。
ライト氏はこのサービスを「複雑だが、それだけの価値がある」とし、パーソナライゼーション需要の高まりと、「排他的商品やコラボが多すぎること」への消費者疲れを指摘する。
マローン・スーリアーズは、低価格帯フラットシューズの品揃えを拡充すると同時にクラフツマンシップとMTOの深化を図ることで、マローンスリアーズはラグジュアリー市場の双方に対応しつつ、いずれの側も希薄化させないようにしている。
「我々が何をするにせよ、特別であり続ける」とライト氏は語る。「彼らはクライアントというより、靴のコレクターと呼ぼう」。
[原文:Luxury Briefing: Malone Souliers adapts to a polarized luxury market under new CEO Andrew Wright]
Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)
