タクシー運転士よりも厳しいバス運転士の現状! 収入面で劣るだけじゃないバス運転士不足の要因

この記事をまとめると
■バスとタクシーでは仕事への向き合い方が異なる傾向にある
■バスの運転手は好きでやっている人が多い一方でタクシーは仕事と割り切っている人が多い
■職業ドライバーを増やすには給与面のほかに安全・安心を優先した労働環境の確保が優先だ
タクシーとバスのドライバーではクルマへの接し方が違う
旅客運送事業としては共通しているバスとタクシーだが、その様子はじつに対照的といっていいだろう。
働き手不足などのトピックが多いなか、テレビのニュースなどではとくに一般路線バス事業を営むバス事業者が取り上げられることが多い。
そこで取り上げられる運転士の多くは、バスの運転が大好きでバス愛が深いところがクローズアップされている。父親の背中を見て、同じバス事業者へ運転士として入社して、親子でバス運転士をしているというというのも取り上げられているが、事実、このようにバス愛が強い運転士は多くいて、親子でバスの運転に従事している例があるのは、筆者でも運行現場を訪れて見聞きしている。バスが特別好きではなくとも、社会インフラの一翼を担うといった強い使命感のなか、日々運行に従事する運転士もそれほど珍しくないようだ(もちろん仕事として割り切っている運転士もいるが……)。

一方のタクシー業界は、あくまで全体の印象であるが、クルマの運転が好きというひとはバス業界に比べると限定的なものであると感じている。いまも数が少ないものの現役で走っている、Y31型日産セドリックタクシーにはフォグランプが標準装備されているのだが、これがどのような役目を果たすのか理解していない運転士も目立つようだ(どうやったら点灯するのかもわからない運転士もいたとか)。

また現場で話を聞くと夏場に、「エアコンが利かない」と訴えてくる運転士の車両をみると、ACボタンが押されていないなど、クルマが好きかどうか以前のような話もよく耳にするほど。
ただし、現状では十分に運転士が集まっていないとしながらも、都内では事業者が増車を行っていくほど、タクシー業界は一時の深刻な運転士不足から脱却しつつある。
かつて3K(きつい・危険・稼ぎが少ない)仕事と呼ばれたタクシー運転士だが、スマホアプリ配車サービスに加盟している事業者では年収1000万円もまさに夢ではなくなってきており、3Kから2K(きつい、危険)に変わってきていることも大きい。さらにキャッシュレス決済の普及に伴い、現金を以前ほどもち歩くこともなくなってきたので、タクシー強盗に遭う頻度も少なくなってきている。となると、すでに1K(きつい)になっているともいえる。

ドライブレコーダーの普及により、事故対策のほかタクシー目当ての当たり屋対策も効果的となり、車載カメラの搭載で酔客などによるドライバーへの暴行などでも被害届を提出しやすくなった。そこにスマホアプリが加わり、稼ぎ方が大きく変わった。デジタルツールの普及はまさにタクシー業界に革命を起こしたといっていいだろう。
タクシーは雇用の調整弁といわれているほど流動性の高い職業である。普通免許があれば二種免許取得は容易でもあるので、不況でリストラなどが進むと即正社員にもなれる。クルマの運転が好きか嫌いに関係なく、門を叩くひとが多くなるのだ。しかも前述したように1Kは残るものの、女性も以前より働きやすくなっているので、女性運転士も最近では多い。

クルマが好きだからというような、こだわりの少ないひとが多く集まるからこそ、そして最近ではリスクが減って稼げる仕事となったので、バス業界よりはひとが集まりやすくなっているように見える。
労働環境改善が最優先
一方でバス業界は老舗事業者ほど、バスの運転が好きというように仕事への愛着が強い運転士が目立つ(バス好きではなくとも、社会インフラの一翼を担っているという使命感の強い運転士も目立つ)。普通二種免許に比べ大型二種免許取得自体取得するのには敷居が高いし、あれだけ大きいバスを街なかで運転するのだから、プロ意識がタクシーよりもさらに備わってくるのかもしれない。

そもそも就業意識といった前に、バス業界向けのイベントで会場を訪れている現役運転士と思える集団の多くは、趣味としてもバスが大好きな印象が伝わってくる。タクシーとは異なり、バスが好きだから運転士を志したというひとが多いのは、前途のとおり間違いないといえそうだ。
海外では1日担当路線を何往復したか、つまり歩合制の給与体系になっているところもあるが、日本では各種手当はあるものの、ほとんどは固定給となるので、物価高のなかでもなかなか給料を上げることができない。安い運賃も影響して、バス運転士の給料はとても十分といえるものではないのが実情だ。そのなかでも前述したような、バスが好きといった気もちのなか日々業務に従事している。好きな仕事だからというものもあり、足もとを見られた……というわけではないかもしれないが、実際にいままで給料がなかなかあがらなかったというのも、否定できないだろう。

ただ、都市間高速路線バス事業者などでは新規参入事業者も少なくなく、給与や待遇面を強調した採用活動も最近は目立ち、異業種からバス運転士を目指すひとが目立っているとも聞いている。一般路線バスの運行も行う、地域密着の老舗事業者に比べると、そこで働く運転士はあくまで職業として割り切って日々運行業務に従事するひとが多いらしい。
ある種、仕事として割り切ったひとが多く業界に流入したほうが、待遇面の改善が進むのではないかと、タクシーとバスの現状を見て筆者は感じている。
また今後は、残されたネックともいえる、事故リスク低減というものも、注目されていくのではなかろうか。重大事故となれば即逮捕実名報道されてしまう……これは最大のリスクでもあるので、なんでもかんでも重大事故=実名報道とはならないような、バスやタクシー、そしてトラック業界でなんらかの取り組みが必要ではないかと考えている。

また安全運転支援装置の充実ということも必要だろう。貸切(観光バス)ではそれでも標準装備が進んでいるのであるが、一般路線バス車両については、急ブレーキ時の車内転倒事故防止という観点からも、自動ブレーキすら標準装備されていない、軽自動車でも安全運転支援装置が充実している時代であっても、一般路線バスではほぼ何も安全運転支援装置は標準装備されず、警告装置などを事業者が任意に装着したりしているのである。

一方のタクシーでは、専用車両ともいえる、トヨタJPNタクシーにトヨタセーフティセンスをはじめ、各種予防安全装置が装着されている。
まだまだ給与を中心とした待遇面を改善すれば、働き手不足を多少なりとも改善できると考える風潮がバスやタクシー業界では多いように見受ける。ただし、それはすでに業界内で働いている運転士の奪い合いには効果的だが、異業種から新たに呼び込む効果は、それほど期待できないのではないかと考えている。
現状ではタクシー、バス業界ともに二種免許取得養成制度が充実しているものの、異業種からいざ運転士を集めようとすれば、単純に給与面などを改善して「クルマ好き集まれ!」だけでは、なかなか集まらないだろう。

よって、どれだけ会社として日々の運行業務を安心・安全に遂行できるようにバックアップしているかをアピールする必要がある。なんといっても、いまどきは若年層ほど運転免許をもっていないひとも多く、今後は運転士をめざすとしてもまずは一種免許取得からスタートするという、つまりクルマが好きか嫌いかではなく、働くために運転免許を取るということが、珍しい光景にならなそうだからである。
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