加えて温度管理も大切です。私たち外食産業に関わる者には「熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま」という考えが根底にあります。しかし、お弁当などを販売する中食産業の場合は少し異なる事情が。「できたてアツアツ」のものならば、その温度をいかに早急に25度以下に下げることができるかという点が衛生管理上重要になります。しかしお弁当などはピークタイムにそなえて作り置きをしていることもあり、この点が不十分なお店も多いのではないでしょうか。
 
 買った時点で、作ってからすでに30分以上経過していることも珍しくないはず。加えて、出店場所によってはその場ですぐ食べてもらえることもありますが、買ったあとすぐに食べてもらえる保障はありません。オフィス街ならば持ち帰って食べる人も多いでしょう。ランチのピークタイムを外して来店して、購入後30分ほど経ってから食べるという人もいます。これでは衛生上、とても安全とは言えません。

◆利便性とワクワク感の向上にはリスクもともなう

 以前はキッチンカーで食べることができなかったような、手の込んだ料理などを提供するところも増えています。例えばケバブを販売するキッチンカーに出会うことがあります。回転式ロースターの肉塊を見ると、シズル感もあってとても美味しそうに見えますね。しかしそこには「売るための演出」という面もあり、衛生面がおざなりにされてはいないか、気になってはいるところです。

 これまではレストランなど、“きちんとした店舗”でしか味わえなかったものが、キッチンカーで手軽に楽しめるようになってきています。ユーザーにとっては利便性やワクワク感がアップして、メリットばかりのように思えますが、同時にリスクもアップしていることを忘れてはいけません。“レストランスペック”の美味しいものは、必ずしも安全とイコールではないのです。

 固定の店舗を持たないキッチンカーは参入のハードルが低いように思われがちで、新規参入を検討している人もいるでしょう。実用食から嗜好食に幅が広がって、キッチンカーグルメも新しい段階に移行していますが、中毒などの事故が起きてその流れに水を差してしまわないかが心配です。くれぐれも衛生管理には最大限の注意を払ってほしいなと心から祈っています。

<TEXT/永田ラッパ>

【永田ラッパ】
1993年創業の外食産業専門コンサルタント会社:株式会社ブグラーマネージメント代表取締役。これまで19か国延べ11,000店舗のコンサルタント実績。外食産業YouTube『永田ラッパ〜食事を楽しく幸せに〜』も好評配信中。