採点競技では、選手がどういった技を出したか、その技をどれぐらいの精度で行えたかを審判が審査しますが、ハイレベルな戦いになってくると、わずかな手足の位置の違いや関節の角度が点を左右することになり、審判にも高度な技術が求められてきます。体操競技では、国際体操連盟と富士通が「Judging Support System」(JSS)を共同開発しており、世界大会でも全10種目で活用されています。

The gymnastics world braces for an AI future

https://www.theverge.com/c/24182327/olympics-gymnastics-ai-judging-fujitsu-jss-fig

国際体操連盟、富士通のJudging Support Systemを全10種目で利用開始 : 富士通

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2023/10/5-1.html

JSSは2023年9月から10月にベルギー・アントワープで開催された「第52回世界体操競技選手権大会」(世界体操2023)で、男子6種目(あん馬、つり輪、跳馬、鉄棒、平行棒、ゆか)、女子4種目(跳馬、平均台、段違い平行棒、ゆか)、合計10種目への適用が始まりました。

World’s first realization of AI judgement Human Motion Analytics - YouTube

体操は最も判定が難しいスポーツだとされています。



必然的に審判の負担は大きなものとなります。



この状況を改善し、公平性や透明性の確保のために、世界初のAI判定が具体化されました。



推定誤差を有意に最小化する、富士通独自の骨格補正アルゴリズム「Motion-constraint Corrector」が導入されています。



フォトリアリスティック技術により、大量のトレーニングデータを人工的に生成する「注釈なし3Dデータジェネレーター」も活用。



複数のカメラを設置して、人間の動きを4つの方向から捉え、一連の動きとして認識します。



世界体操2023で全面的にJSSが導入されるまでの歩みもまとめられています。

Fujitsu Operations in Antwerp - Judging Support System for all 10 apparatuses - YouTube

構想は2016年に東京で開催された第81回国際体操連盟総会の時点であったようです。



富士通は国際体操連盟と共同で、2017年からJSSの開発を開始。



シュツットガルトでの世界体操2019で設置されていたカメラ。



谷川選手の技の分析が行われています。



あん馬の技の分析の様子。



そして、アントワープで開催された世界体操2023。



ついに全10種目にJSSが適用されました。



体操の判定の難しさの例としては、2012年のロンドン五輪・男子団体の事例があります。このとき、日本の内村航平選手があん馬から降りた際の逆立ちの動きは当初、審判に認められず、日本は4位となりました。しかし抗議の結果、スコアが加点され、日本は銀メダルとなりました。

Being Kōhei Uchimura Part 2 - The London 2012 Team Event - YouTube