94歳の産婦人科医・堀口雅子さん(撮影:藤澤靖子)

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女性ホルモンが減少すると、気分が落ち込みやすくなるもの。産婦人科に女性の医師が少なかった時代から60年以上、女性たちの悩みに寄り添ってきた堀口雅子さん。今悩みの渦中にいる人に向けたアドバイスは(構成=樋田敦子 撮影=藤澤靖子 イラスト=こやまもえ)

【写真】雅子さんと同じく産婦人科一筋の夫・貞夫さんと

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「老いの不安と上手に付き合う方法」よりつづく

「たくさん頑張ってきたのだから、怠けていい」

女性として、妻として、母として、社会人として、今まで頑張ってきたのだから、休んでもいいじゃないですか。

完璧にこなさなければと思うと、できない自分にがっかりすることも出てきます。部屋の隅にホコリがあっても見ないふり。料理だって手抜きでいいんです。

私など床の上にごろんと寝っころがったまま、気づけば朝だったこともありますよ。

「心地いい体の動きが脳を活性化させる」

心と体の健康のためには、全身をバランスよく動かすことが大事。94歳の今も実践しています。

最近は、夫と近所を散歩するのが日課。また2週間に1度は、フェルデンクライス体操というものを習っています。

この体操はユダヤ人の物理学者が考案したもので、脳を活性化するそうです。自然な呼吸のリズムでゆっくり動くことで、自分にとって一番心地いい体の動きに気づくことができます。


(イラスト:こやまもえ)

「人には頼りましょう」

「つらい」ならその状況を友人や家族などに伝えましょう。身近な人に相談できない時は、病院でカウンセラーを紹介してもらうのも一つ。

カウンセラーは話をじっくり聞いた後、プロの目線で現状から抜け出すヒントを提示してくれます。

頼れる選択肢は多いほうがいい。つらい時はつらいんだもの。遠慮せず、頼る勇気を持ってください。

「あなたがあなたを大切にすること」

ただでさえ自分が疲れている時に、相手のことを考えていたらまいってしまいます。

落ち込んでいると、健康で活動的な友人に会っても、余計に気が滅入ったり、妬ましく思ったり。励ましの言葉に反発してしまうこともあるかもしれません。人生、そういう時もありますよ。

しばらくは距離を取り、自分を大事にする時間を持てば、ゆとりが出てきて人のことも大事にできるようになります。

「『自分は何をしたいか』の重点を動かしてみる」

仕事から離れたり、子どもが自立したり……。担っていた役割がなくなると、うつうつとしてしまうことも。

そういう人は「自分がしたいこと」の重点をどこに置けばいいのかわからなくなっているのでしょう。

子どもが巣立ってしまったなら、別の位置に生活の重点を移していく時期。重点は友人との関係でもいいし、自分磨きでもいい。

新しい楽しみを掘り起こすと、うしろ向きな気持ちにストップをかけられますよ。

「不調を軽く考えないで」

更年期も、老年期もみんなが通る道。だからといってすべてのつらさを耐える必要はありません。

取り返しがつかないほど悪化する前に医師を頼ってください。

でも、患者さんの話をろくに聞かずに診察するような医師ならば、蹴っ飛ばして帰ってくればいい。あなたにぴったりの医師を見つけましょう。

「先のことを不安に思うより、今の楽しみを味わう」

私は90歳を過ぎてから、朝起きる時、「ああ、今日も生きている」と感じるようになりました。

そして夫の顔を見て、「今日も二人で過ごせそうだ」とも感じます。二人とも、ある日目覚めないことがあってもおかしくない年齢ですからね。

そう思うと、将来を恐れたって、気に病むだけ損。それよりも「今」に集中しないともったいないですよ。