27日、ビッグサイトで開幕した国際福祉機器展でニッシン自動車工業のオートボックスのデモを見る山田州さん。(撮影:佐藤学)

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「第33回国際福祉機器展」(主催:全国社会福祉協議会、保健福祉広報協会)が27日から、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。

 障害者とその家族をはじめ、多くの来場者で賑わう会場を一人車いすで見て回る山田州さんは、「8割以上がまだ介護者視点の製品です。メーカーは、自立を目指す障害者の声にもっと耳を傾けた商品を作ってほしい」と述べた。

 障害者用自動車運転装置などを製造・販売するニッシン自動車工業(埼玉県北埼玉郡)は、障害者が一人で車いすを収納できる車載型オートボックスを展示。自ら障害を抱え、車いすを利用する同社亀田藤雄社長は、障害者が一人でクルマを運転して、どこへでも自由に出掛けられるという障害者の自立を、製品作りのコンセプトに挙げている。

 オートボックスの使い方は、障害者が車いすから運転席に移動後、自分で車いすを折りたたみ、リモコンスイッチを入れる。すると、クルマの屋根に装着した長方形の収納ボックスが90度水平回転、屋根から数10センチはみ出したボックスの先端部からフック付きのひもが下りてくる。フックを車いすにかけて再度スイッチを押すと、車いすは引き上げられてボックスに収納され、ボックスは元の位置に戻るという仕組み。

 オートボックスは、重さやサイズが異なる車いすが収まるように調整され、障害の程度が異なる障害者に合わせて、運転席から座ったままでも車いすにフックを掛けやすいような装置が取り付けられる。価格は57万円で、年間約100台の売り上げがあるという。

 また、障害者の声を重視して製品開発に力を入れる大手メーカーのひとつに、軽量型電動車いすの先駆者であるヤマハ発動機<7272>がある。タクシーなどの利用する際、折りたたんだ車いすのジョイスティック(自走操作装置)がトランクの角などにぶつかるという問題が生じている。

 そのことを冒頭の山田さんがヤマハ展示場の担当者に話すと、「ジョイスティックのセパレート型を現在開発中です」という答え。ヤマハ担当者に問い合わせると、「他社にマネされかねないので詳しくは言えませんが…」と前置きしたうえで、開発中であることを認め、「来春ごろには販売の予定です」と耳打ちしてくれた。セパレート型の接続部分などの工夫を凝らしている最中だという。

 「ほとんどの障害者用自動車の運転席ドアは開く角度が狭く、90度まで開かない」とある障害者は指摘するが、ダイハツ工業<7262>の障害者用車両は、運転席のドアが90度開き、障害者が車いすから運転席へのアクセスを容易にしている。また、ドアの縁から蝶番部にかけて内側にひもが装着され、運転席からでもドアを閉めやすいように工夫が施されている。

 八王子からやって来た車いすの障害者、新井雅之さんは、90度開くドアについて、「便利なのですが、実際にそうしたスペースを確保できる駐車場がないのです」と別の問題を指摘する。障害者が駐車する場合、乗降のために運転席側に十分なスペースが必要になるが、普通のドアでも最大限に開けられるだけのスペースの確保さえ難しいのが現状だという。

 自立を目指す障害者は、可能な限り介護者や第3者の手を煩わせずに済む製品を希望している。簡易で便利な製品が普及し、障害者の行動範囲が広がることで、さらに新たな工夫が必要になってくるようだ。【了】

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