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「羽生結弦」がさらに楽しみになりました!

羽生結弦氏がプロのアスリートとして羽ばたき、新たな希望に燃える今、振り返りやありがとうはいらない…と言いつつ、ときどきほんのわずかにこみ上げてくる寂しさ。未来の構想というものがもう少し具体的に明かされてくれば、そんな寂しさが漂う隙間はないだろうと思いますが、まぁしばらくは残り香のような寂しさと格闘する時間なのかなと思います。

そんな今だからこそ、穏やかで温かくて前向きな気持ちになったのが、23日にテレビ朝日で放映された「羽生結弦 感動をありがとう〜終わりなき挑戦〜」でした。松岡修造さんの司会。荒川静香さん・織田信成さんという納得のスケーターコメンテーター。そして羽生氏のコメントをプロの話術で的確に拾って笑いポイントを浮き立たせるサバンナ高橋茂雄さんの「沼にハマって聞いてみる」さすがの巧みさ。いい顔ぶれで心穏やかに見守ることができます。

それに加えて、コメントを寄せてくれたスケーターがパトリック・チャンさんであったり、ハビエル・フェルナンデスさんだったりするのも、胸が熱くなるようでした。羽生氏が挑んできた高い壁たちが、形は違えど同じようにスケートとの向き合い方を変えた「先達」として、改めてエールを送ってくれている。成功を確信し、希望を持って見ていてくれる。「見送る」のではなく「迎える」。過去ではなく未来に寄り添った視点から、新しい世界に軸足を置いた番組構成というものが感じられました。

↓予告にあった「浮気!?」は「トロントにプーさんを置いてきちゃったので、新しいのを買った」という話でした!



羽生氏がテレビでこんなに長く、楽しく話すのはいつ以来だろうと頬を緩めながら見守る時間。視聴者から募集された質問に回答するくだりでは、フィギュア界では常識外れとも言える「同じスケート靴を2年半とか3年以上とか使っている」「(ジャンプに)靴を使っていない。ちゃんと自分の身体で引き揚げている」という話に驚きを覚えつつ、SNSのタイムラインで「私の質問だああああああ!!!!」というどよめきが起こるのを見守ったりして、単にテレビ番組を見ているだけではない楽しみがありました。

たくさんの人が、壁に貼られた質問シートに一瞬見切れた自分の質問を確認したり、スクロールする質問一覧のなかに自分の質問を確認したり、実際に質問に答えてもらったりして、そのたびに喜びの声がタイムラインに流れていく。もしかして企画の発端としては「現役引退お別れの会」というイメージで走り出したものかもしれませんが、羽生氏本人の前向きな意欲と、羽生氏がやろうとしていることを理解してくれる人たちと、ファンとのつながりによって、楽しい「羽生結弦と愉快な仲間の集い」というものになってアウトプットされた感じがします。

お宝的な映像や懐かしの名場面が流れれば、そこに羽生氏本人が解説コメントをつけてくれる至福の構成。ちょっとした一言でも「あ、そういうことだったんだ」という発見がありますし、言葉のひとつひとつに人生に還元できる深みを伴っているのはさすがだなと唸ります。一方で、トークの合間に挟まれる小ボケや、映画「陰陽師」を見ながら普通に「かっこいいなぁ〜」と漏らしたりする力の抜けたワイプトークなども、人物としてのさまざまな魅力が改めてクローズアップされるかのよう。羽生結弦のフルコースでもいただいている感覚です。

ついには、自ら立ち上がってトークを回し、フリップをめくり、4回転アクセルについて実演を交えて語ってくれたりする場面も。北京五輪の4回転アクセルの連続写真を見ながら「ほんのちょっと身体がこっち向いてたら」「(着氷時に)ここ(つま先)で降りられればよかったがこっち(かかと)から降りている」など、本当にあと少しだったという部分が改めて本人の手応えとして語られたのはありがたかったなと思います。「見たくないです」となるのではなく「もう少しこうだったら」と振り返れるのは、成功への足掛かりがあればこそですからね。

そして、アクセルジャンプの踏み切りの際の足先の角度については時間をかけて詳細に解説してくれました。羽生氏自身は氷の上ではほんのわずかに足先が斜めを向く程度で離氷するジャンプをしているのに対して、強く回転をかけようとすると足先を進行方向に対して90度ほどまわしてからジャンプすることも可能であり、そうした跳び方に対して「このぐらいまでいける」「ここまで使えると全然違う」と羽生氏は評しました。

羽生氏の言葉で言えば「下で回る」ジャンプ、よく使われる用語としてはスキッド、バクセルといった氷の上で回りながら跳ぶアクセルジャンプについて、「それを(自分は)やってないんですよ」「それをやらないで4回転半まわろうとしているのでここ(着氷)の回転が危なくなっちゃう」「すごく難しい」と改めて自身の跳び方へのこだわりと誇りを滲ませた羽生氏。世間一般では「?」という感じかもしれませんが、「羽生結弦のアクセル」というものをテレビを通じてたくさんの人に届けることができたのかなと思います。(※「つたわれー」と唱えておきます)

番組冒頭にあった「スケート靴が壊れない」という逸話と、「羽生結弦のアクセル」というものが、まるで伏線回収のようにつながってくるのはお見事でした。どこまで世間に伝わったかはわかりませんが、ストンと腹落ちするような展開で、非常に実り多い番組でした。羽生氏自身が描く未来像として「進化」という言葉を選んだことを含めて、これからますます羽ばたいていく意志が感じられ、寂しい気持ちを前向きな気持ちへと変えていくチカラがある番組でした。過去を振り返っているかのようで、未来を見据えている、上手い作りだったなと思います。新聞社のほうが先走って後ろ向きな記事を出してしまったことを、テレビ局のほうで少し挽回できたのではないでしょうか。やっぱり先走りは誤報の元だなと思いますね!

↓終わりなき挑戦、まだまだこれからです!


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そして番組最後のあいさつ、羽生氏は「どうか羽生結弦を楽しみにしてやってください」というコメントで結びました。これからも自分の滑りを楽しみにしてください…ではなく「羽生結弦を楽しみに」してほしいと結んだ。僕は少しの違和感を覚えるとともに何かがつながるような気持ちになりました。

ここでの「羽生結弦」は自分を第三者的に見た言い方で、「羽生結弦」というコンテンツ、あるいは「羽生結弦」というユニット名のバンドか何かででもあるかのような表現です。もしかして、これが「プロのアスリート」でありながら「競技会や大会を作ることは考えていない」とする、今後の企みの一端なのかなと思いました。

そもそも、この番組自体がまさに「羽生結弦」です。ファン向けのお楽しみがあり、スケート技術に関する深い解説があり、面白エピソードトークがあり、そこに羽生氏自身が積極的に絡んでいく「羽生結弦」というコンテンツでした。見終わって思ったのは、羽生氏プロデュースによる伝説のアイスショー「Continues 〜with Wings〜」を彷彿とさせるような番組だったなということ。

実際に同じエピソードが紐解かれたりして重なる部分があったからかもしれませんが、もしかしたら僕がアイスショーだと思っていた「Continues」も、「羽生結弦」というコンテンツのライブだったのかもしれないなと今さらながらに思います。今回の番組は2時間では不足を感じるくらいの充実ぶりでしたが、ここに羽生氏の「実演」がいくつか加われば、それはもう十分にひとつの公演として成立するなと思いますし、それは限りなく「Continues」でしょう。

「スケートのショー」ではなく「羽生結弦」を見せる、これならばいろいろな辻褄が合うのかなと思います。世界にまだ存在しない「プロのアスリート」としてのスケーターが既存のアイスショーに融合するのはなかなか難しいように思っていましたが、「羽生結弦」のライブを開催するのであれば融合も何もありません。そのコンテンツを支え、同じ志を持つ仲間を募るだけ。ゲストはいるかもしれないけれど対戦相手はいない。ただし、自分との真剣勝負はある。そんなこともできるのかなと。

2時間とか3時間を「スケートの演技」だけで満たそうと思えばたくさんの出演者が必要ですが、2時間全部がスケートでなければいけないというわけではないな、と思います。さまざまな羽生結弦を見せつつ、そのメインとしてプロアスリートの演技がある、これならば現実感がグッと出てくるような気がします。そして、「何それ!すげぇ行きたいんですけど!」という気持ちもグッと。

まぁ、実際問題何を企てているのかはトンとわかりませんが、もしも動員が必要なものであるのならば、行って、支えて、楽しめたらいいなと思います。箱から人があふれ出した結果として、最終的に「国立競技場で羽生結弦6万人公演」とかなる未来も見てみたいですしね。旧については調べていませんが、新国立でスケートをやった人はいませんから、「初」を狙ってみるのもいいなと思います。

とにかく、寂しさすら反転して前向きになるような素敵番組でした。

何だかプロアスリートになることで、楽しい時間が増えるんじゃないか、そんな気持ちになりました。

もしかしたら、これから起こることは「プロのアスリートになる」というよりも、「羽生結弦のプロ化」と表現するほうが近いのかもしれませんね。これまでと志は変わらず、ただプロになることで、よりいろいろな表現を幅広くやっていくという。サッカーやバスケもプロ化でドーンと跳ねましたし、「プロ化」だって思うと今以上に盛り上がりそうな気がしますね!

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テレビとか新聞には「羽生結弦プロ」と呼ぶことをオススメしておきます!