今では当たり前の装備、昔はいくらだった!? 高額だった頃の車の装備5選

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近年、普及が加速した装備はいつ誕生した!?

 昭和の頃は「パワーステアリング」、「パワーウインドウ」、「エアコン」といえば、比較的高額なクルマではないと、装着されていませんでした。

今では当たり前のモノが高額だった時代があった

 たとえば1.5リッタークラス以下のモデルでは、パワーステアリングは設定されておらず、パワーウインドウは上級グレードのみ。エアコンは、オプション設定となっていることが普通でした。

【画像】150万円のクルマに30万円のカーナビを装着!? 今では一般的な装備の過去を見る(21枚)

 平成の時代になるとこれらの装備が標準化されはじめ、現在ではほぼすべての乗用車に標準装備されています。これは各アイテムのコストダウンが進んだことにより実現し、近年では安全装備も標準化されはじめました。

 そこで、いまでは特別なものではなくった装備のなかから、5つピックアップして、登場した頃の価格や特徴を紹介します。

カーナビゲーションシステム:ホンダ「アコード/ビガー」

GPSカーナビ登場以前のカーナビはホンダが開発

 1980年代にアメリカの軍事技術を転用することで誕生したGPSカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)は、現在もオプションとなっているクルマがほとんどですが、ポータブルカーナビなら1万円未満から、据え付け型の2DINタイプでも3万円台で販売されています。

 このGPSカーナビを世界で初めて搭載したクルマは、1990年に発売されたユーノス「コスモ」ですが、それ以前にGPSを使用しないカーナビが存在しました。

 それが、1981年に登場したホンダ2代目「アコード」と姉妹車の「ビガー」に搭載された、「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」です。

 ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、6インチのブラウン管モニターがメインユニットで、ヘリウムガスを封入したジャイロを使った方向センサー、タイヤの回転を検出する走行距離センサー、方向と走行距離から自車位置を表示させる航法コンピューターで構成されています。

 地図はブラウン管に映し出されるわけではなく、ビニールのような薄い半透明の地図をモニターの前に差し込み、モニターは自社位置と走行軌跡を映すだけのものだったため、手で地図を差し替える必要がありました。

 ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、アコード/ビガーのインパネ上に設置するオンダッシュタイプ。ディーラーオプション(販売はサービスファクトリーから)となっており、価格は取り付け工賃込みで29万9000円、地図は別売りでした。

 アコードの最上級グレードが150万8000円(東京価格)であることからも、かなり高額だったことが伺えます。

 なお、前述したコスモのGPSカーナビは装着車の設定のみで、単品では販売されていなかったため価格は不明ですが、1990年に登場したホンダ2代目「レジェンド」にはGPSカーナビがオプション設定されており、価格は55万円でした。

●4輪アンチロックブレーキ:ホンダ「プレリュード」

ホンダ2代目「プレリュード」に搭載されたABSユニット

 雨や雪など滑りやすい路面でブレーキをかけても、タイヤをロックさせない4輪アンチロックブレーキは、急ブレーキ中でもタイヤによる舵取りが可能で、衝突回避を目的に開発されました。

 そして、現在のシステムと同様のアンチロックブレーキは、1978年にメルセデス・ベンツ「Sクラス」に世界初搭載。

 国産車では、1982年に発売されたホンダ「プレリュード」に初めて搭載されています。

 システム自体はいまと大きく変わらず、4輪に装着された回転を検知するセンサーの情報をコンピューターが取り込み、ブレーキ圧を自動で制御するものです。

 上級グレードにオプション設定され、価格は13万円。装備できるグレードは152万円からだったため、やはり高価なオプションといえるでしょう。

 現在ではほぼすべての乗用車に、アンチロックブレーキだけでなく、トラクションコントロール、横滑り防止装置などが統合されて標準装備化されています。

 また、オートバイでは50cc以下を除いてアンチロックブレーキが義務化されるなど、普及が加速しています。

●SRSエアバッグシステム:ホンダ「レジェンド」

国産車初のエアバッグ搭載車となった初代「レジェンド」のコクピット

 1985年にデビューしたホンダ初代「レジェンド」は、同社のラインナップの頂点に位置する高級車です。

 そして、1987年のマイナーチェンジで、国産車初のSRSエアバッグが装備されました。センサーが衝撃を検知すると、インフレーターに着火されエアバッグが展開するという、現在とまったく同じ仕組みとなっています。

 しかし、現在のクルマほどシステムが小型化されていなかったため、ハンドルのセンター部分はかなり大きなものでした。

 初代レジェンドのエアバッグは運転席側のみでしたが、上級グレードに標準装備され、その他のグレードにもメーカーオプションとして装着可能で、価格は20万円でした。

 2代目レジェンドでは助手席用エアバッグがオプション設定され、こちらは10万円となっています。

 いまでは、運転席、助手席だけでなく、サイドエアバッグやカーテンエアバッグ、ニーエアバッグ、さらにボンネット上で展開される歩行者用エアバッグも登場しています。

環境性能と安全性能の向上はお金がかかる!?

●フルハイブリッドシステム:トヨタ「ハリアーハイブリッド」

「プリウス」以外でTHS-IIが搭載された2代目「ハリアー」(画像はガソリン車)

 これまでの個々の装備とは異なりますが、近年、急速に普及したのがハイブリッド車です。

 1997年に世界初の量産ハイブリッド車であるトヨタ「プリウス」が発売されると、各メーカーが追従し、現在に至ります。

 プリウスはハイブリッド専用車として開発されたため、モーター、走行用バッテリー、インバーターなど、システム自体の価格は不明です。

 また、プリウスのハイブリッドシステムは現在、「フルハイブリッド」、「ストロングハイブリッド」と呼ばれるもので、後の「マイルドハイブリッド」やモータージェネレーターを利用した簡易的なハイブリッドよりも高価です。

 当時、初代プリウスの新車価格は215万円(消費税含まず)と、同クラスのクルマよりも50万円から70万円ほど高額に設定されていましたが、トヨタは赤字も覚悟したバーゲンプライスだったようで、実際の価格はもっと高額だったといわれています。

 そこで、2003年に発売された2台目「ハリアー」と、2005年発売の「ハリアーハイブリッド」で価格を比較してみました。

 ハリアーハイブリッドのハイブリッドシステムは、2代目プリウスと同様の「THS-II」を搭載した、ストロングハイブリッドです。

 同等のグレードで価格(消費税込)を比較すると、ガソリン車が341万円、ハリアーハイブリッドが441万円と、ちょうど100万円差。

 ガソリン車が3リッターエンジン、ハリアーハイブリッドが3.3リッターエンジンを搭載し、装備も若干異なることから、この100万円がすべてハイブリッドシステムのコストではありませんが、初代プリウスが価格を抑えていたとすれば、意外と妥当な価格差ではないでしょうか。

 ちなみに、現行モデルの「ヤリス」では、ガソリン車とハイブリッド車の価格差が約37万円であることを考えると、かなりコストダウンが図られたといえます。

●先進安全技術:スバル「レガシィ ランカスター ADA」

「レガシィ ランカスター」に搭載された「ADA」のステレオカメラ

 ここ20年ほどで大きく普及が進んだ装備といえば、衝突被害軽減ブレーキに代表される先進安全技術です。その普及に貢献したのが、スバルの「アイサイト」でした。

 アイサイトはVer.1からVer.3まであり、Ver.2からは衝突被害軽減ブレーキによって停止まで制御でき、そのほかにもさまざまな安全装備が統合されています。

 もうすぐ発売される新型「レヴォーグ」では、新世代のアイサイトになる予定で、高速道路でのハンズオフ機能や、見通しの悪い交差点での出合い頭や右左折時まで、衝突被害軽減ブレーキの作動範囲を拡大しているといいます。

 現在の先進安全技術の中核となるのは、カメラとミリ波レーダー、レーザーレーダーといった各種センサーで、アイサイトは2台のカメラを使った「ステレオカメラ」が特徴です。

 このアイサイトは1980年代から研究、開発がスタートし、1999年発売の「レガシィ ランカスター」に搭載された「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」が前身です。

 ADAの機能としては車間距離警報、車線逸脱警報、車間距離制御クルーズコントロール、カーブ警報・制御となっており、この頃はブレーキ制御がおこなわれておらず、アクセルとシフトダウンによる減速にとどまっています。

 価格はスタンダードなレガシィ ランカスターに対して55万円高くなっており、高額過ぎたため普及には至りませんでした。

 しかしその後、ハード、ソフトの進化によって、高機能になりながらも大幅なコストダウンに成功。アイサイトVer.2ではオプション価格が10万円まで下がりました。

 現在は軽自動車にも標準装備されているほどなので、だいぶ安価になったのでしょう。

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 今回、紹介したものは、すべて大幅なコストダウンが図られたことで、爆発的に普及しました。

 なかでも驚きなのがカーナビで、かつては地図ソフトだけでも数万円しましたが、いまではスマホアプリなら通信費以外は無料で利用できます。

 もちろん、専用機に対して機能が簡素化されていたり、単純なコストダウンだけではないビジネスモデルによって無料化されているのですが、それでも無料でカーナビが使えるようになることは、かつては考えられませんでした。