閻魔大王の顔が赤いのは何故?怒ってる…だけではなく実は自分も苦しめられているから
閻魔大王は最初の死者?
出典:Wikipedia
実は閻魔はヒンドゥー教の神が原型だと知っていますか?それは古代インドで伝えられていたヤマという神で、妹のヤミーと結婚をし、最初の人類を生んだとされる神です。日本の神話、イザナギノミコトとイザナミノミコトの伝承と同じですね。
そしてヤマは人間で最初の死者となり、死者が進む道を見つけました。そしてその道の先にある国の王になったということです。その後ヤマが治めている国に、亡者が続々とやってきます。そこで罪のない者とある者に振り分けた結果、罪のない者はヤマのいる国=天国に、罪を犯したものは別の場所=地獄をあてがわれました。
ヤマの伝承は中国に渡り道教に取り入れられ、官人のような風貌になりました。赤い衣を着て頭に冠を被り、手に霊魂を縛る捕縄を持つという、現在よく知られる姿に変化したのですね。
そして日本の仏教では「閻魔天」として天部衆に組み込まれ、仏法守護を担う仏の一人になりました。また、仏教界の六つの世界、六道をめぐり衆生を助ける地蔵菩薩の化身ともみなされ、信仰の対象になったということです。
ちなみにその考えは日本独自のものだとか。
地蔵菩薩と閻魔
出典:大磯地蔵咄 国立国会図書館
一日三回の責め苦
地獄の裁判官として知られる閻魔大王。真っ赤な顔をして目を見開き、恐ろしい形相をしていますよね。顔が赤いのは、ただ単に怒っているから…と思われがちですが、実は他にも深い理由がありました。
閻魔大王は、亡者の魂を裁き、生前犯した罪の重さに対してどの地獄に送るかを決めていますが、実はその亡者を裁くという罪を背負うため、彼自身も罰せられているのです!
その罪たるや他の亡者の責め苦よりも辛い仕打ち!なんと一日に三度も熱せられてドロドロに溶けた銅を、飲まされるというのです。
まず大銅钁(だいどうかく)という、鍬(クワ)のようなものが忽然と現れます。するとそれまで従っていた獄卒らが大王を捕らえ、熱く焼けた鉄の鉤で大王の口をこじ開けます。
煮え湯ならぬ煮え銅を飲まされた大王の喉や腸は焼けただれ、その痛みに苦しみ抜くといいます。
罪を犯した人間が少なければ地獄に落とすこともなく、自分も苦しまなくてすむのですが、罪を犯した亡者は後を絶ちません。しかし輪廻転生のために、責め苦を味わうことで罪をあがなわなければいけないのも事実。人間を救うためにはやはり地獄に落とさなければならないのです。
閻魔大王の表情には、罪を犯した人間が減らない怒り、人間を地獄に落とさなければいけない悲しみ、それによる自分自身の苦しみが現れていたのですね。
安土桃山時代に描かれた閻魔
出典:Wikipedia
閻魔について詳しく紹介しているのは鎌倉にある円応寺。こちらは本尊が閻魔という珍しい寺です。名工・運慶作の閻魔はとこかユーモラスで躍動感あふれており、一見の価値有りです。※円応寺は撮影不可