夏の風物詩といえばなんといっても花火大会――なのだが、近年の気候変動がそんな夏の夜空のイベントにも影響を与えつつあるようだ。

二子玉川で多摩川を挟んで毎年8月に同時開催されてきた、「川崎市制記念多摩川花火大会」と「世田谷区たまがわ花火大会」が、2018年は10月13日開催に変更すると、2月26日に川崎市によって発表された。

夏のイベントが秋開催に?(画像は2015年の多摩川花火大会, keyakiさん撮影, Flickrより)

気象統計上は8月に落雷が増加

川崎市がサイト上で発表した報道発表資料「第77回川崎市制記念多摩川花火大会は秋に開催します」によると、秋開催へと変更した理由について、花火大会開催時に集中豪雨や落雷が多発しているためと説明。

「来場者の更なる安全・安心を最優先に運営するため、例年、比較的に天候が安定している10月の秋開催へ変更いたします」

としている。確かに、2017年には世田谷区たまがわ花火大会側の会場で落雷事故が発生し、さらにゲリラ豪雨にも見舞われ、両大会が中止になるという事態も起きていた。

去年中止となった経緯は多くの人が記憶しているためか、ツイッター上などでも10月開催へと変更したことについては好意的に受け止める声が多い。

ただ、昨年ゲリラ豪雨や落雷が起きただけで、「昨今多発している」とは見なしにくいようにも思えるのだが、他にも何か事情があるのだろうか。3月2日、Jタウンネットが川崎市経済労働局観光プロモーション推進課に取材したところ、担当者は次のように説明した。

「昨年度の事例だけでなく、平成28年(2016年)開催時にも直前まで大雨が続いており、観覧席が冠水してしまい、排水ポンプを使用する事態となりました。毎回ギリギリの判断で開催を続けるというのはあまりに危険が多く、そもそも開催日をずらす必要があると考えたのです」

さらに、気象庁に対し過去の気象統計を確認したところ、2001年以降首都圏では8月の落雷件数が有意に増加していることもわかった。


近年8月の落雷が増加してるんです(画像はイメージ)

「データも踏まえて、昨年の中止直後から世田谷区と共に協議を続け、今年は秋開催とすることを決定しました」

しかし、最近は10月の台風上陸例も少なくない。8月よりも圧倒的に天候が安定しているかと言われると微妙なようにも思えるのだが、10月開催は問題ないのだろうか。

「10月の気象統計も確認しています。半旬(5日の期間)ごとに10月の天候を見ると、例年第一半旬は秋雨前線が停滞し不安定な天気ですが、第二半旬からは安定しており、下旬になると気温の低下が進みます。こうしたデータから、今年は10月13日開催としました」

観覧席のチケット販売については現在調整中だが、単純に販売開始時期が後ろにズレ込むかどうかは未定とのことで、購入を検討している人は販売情報に注意する必要があるだろう。

最近は10月開催の花火大会も増えているし、秋の夜空を眺めるのも案外乙なものかもしれない。ちょっと遅い夏の締めとして、今年は秋開催の花火大会に足を運んでみては。