日本酒で世界に売り込め…“スパークリングレモン酒”を開発した若き男のビジネス戦略
世界に日本酒を売り込みたい! 2005年、大学を卒業してすぐに上海に渡った三宅紘一郎氏。広島の地酒、千福で知られる三宅本店の親戚筋にあたる。当時の上海はまさにバブルが始まり出した頃。
「日本食店が多く、外国の飲食文化を受け入れる素地があると考えたんです」
日本酒を中国に売り込む2011年に現地法人三宅(上海)商務信息諮詢有限公司を設立、日本酒のコミュニティを作り、日本酒好きの中国人を集めて、日本酒の普及・啓蒙に努めている。
上海日本国総領事 文化イベント「初めての日本酒 〜日本酒の魅力の奥深さを味わおう〜」
<>利き酒体験や日本酒の種類などをレクチャー
<>家庭料理・スイーツと吟醸梅酒・日本酒で乾杯!
「日本酒は日本料理店で飲むお酒という位置づけですね」
海外の日本酒マーケットは110億円弱。その半分以上をアメリカと香港が占め、中国全土では日本酒市場はわずか6億円。香港と比べても4分の1程度しかない。13億人の人口を考えれば、市場はこれからだ。しかし中国人と日本人では味覚が違う。
「中国の人はハッキリした味を好むんですね。どこの店でも人気はサーモン。サーモン盛りといったメニューもあって、脂っこい和牛やトロが好まれる。白身魚のような繊細な味は好まれません」
結果、わかりやすい味に合うわかりやすい日本酒が受け入れられやすい。
「わかりやすさが大事ですね。飲んで一発で表現できるような商品に可能性があるなと思います。海外全般に言えるんですが、フルーティな純米吟醸、中国では特に味がはっきりした純米原酒が人気ですね。古酒や貴醸酒(日本酒で日本酒を仕込む、リキュールのような古酒)も人気ですね。紹興酒があるので、製法が似ているからと入りやすいようです。枡酒も好評です。グラスではなく、枡で飲むところがわかりやすい」
中国の人は酒について語ることが好きなんだそうだ。
「この酒は日本でどんな層に売れて、どんな人が飲んで、話題になって産地はどうとか、そういうことを根堀り葉掘り聞かれます」
日本でのワインブームと同じく、まず動いているのは富裕層。それも当然で、日本で安い商品も中国へ持って行くと高くなってしまう。日本酒は高いのだ。
「関税が40%、運賃や消費税も入れると90%ぐらい、1本が日本の倍ぐらいになります。最低でも4000〜5000円になります。だから日本では大衆の酒で売られているものが、向こうへ持って行くと高級品になってしまう」
中国市場を含め、海外で日本酒を展開するには、日本の酒蔵と連携した、世界向けのお酒の開発が必要と三宅氏。その第一弾として用意しているのがレモンを使ったスパークリング日本酒だ。
「Naorai inc.という会社でクラウドファンディングを使って、『スパークリングレモン酒』を造っています」
<>スパークリングレモン酒には広島産のレモンを使用
広島の三角島はレモンの産地。そこに専用のレモン畑を用意し、吟醸酒にレモンを加えて二次発酵させている。中華料理やフレンチ、イタリアンとも合う、新しい日本酒である。
「テスト商品はすっきりして初めての人も飲みやすいと好評です」
日本酒がアニメや空手のように世界に広がるかどうか? 今後の三宅氏の活動に注目だ。
(取材・文/川口友万)
三宅紘一郎(みやけ・こういちろう)1983年広島県生まれ。2011年中国で日本酒を広めるため「三宅(上海)商務信息諮詢有限公司(ミヤケアジアマーケティング)」を(株)三宅本店からの出資を受け設立、総経理に就任。2014年4月より東京にも拠点を構え“SAKE”で日本と世界をつなぐOneTankプロジェクト始動、Naorai inc.代表。