政権交代が現実味を帯びるなか、注目されるのが、民主党の政権公約(マニフェスト)の内容が、どのように実行に移されるかだ。特に注目されているのが「高速道路の無料化」だが、ここにきて、連立相手になる可能性が高い社民党から、この政策に対して懐疑的な声が出ている。当事者でもある高速道路会社からも厳しい批判が出ており、公約の実現までには紆余曲折ありそうだ。

「莫大な税金がかかる」「Co2が増える」

   民主党が「高速道路無料化」を言い出したのは意外に古く、初の「マニフェスト選挙」となった2003年の衆院総選挙で民主党が掲げたマニフェストの中に盛り込まれている。

   注目されるようになったのが09年に入ってからで、麻生政権が09年3月、景気対策の一環として組んだ08年度の第2次補正予算の中で「高速道路料金上限1000円」を盛り込んだのがきっかけだ。09年3月末から2年間の期限付きで「ETC搭載車限定で、土日のみ」というのがその条件。ゴールデンウィーク期間中には大渋滞を巻き起こした上、フェリーを初めとする航空会社や鉄道会社などの交通機関が打撃を受けたのは記憶に新しいところだ。

   これと対比させる形で、民主党の「高速道路無料化案」も注目を集めている。民主党は、そのメリットとして

「流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる」
「産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する」

といった点を挙げており、首都高速・阪神高速など渋滞が想定される区間については、需要などを見極めながら、段階的に値下げをしながら無料化を進めたい考え。マニフェストによると、この政策に1.3兆円が必要だと見込まれている。

   ところが、ここにきて、無料案に対する「逆風」が目立つ。各党幹部の発言やマニフェストを見ると、野党間でも足並みがそろっていない様子なのだ。

   社民党の福島党首は、8月26日、広島市内で記者団に対して、「無料化案」について

「渋滞が増えて、(郵便物などの)遅配が増えるのではないか」
「莫大な税金がかかる」「CO2が増える」

などとして批判。社民党は政権交代の際は民主党と連立を組む可能性が高いだけに、政策協議の時の火種となる可能性がありそうだ。また、「みんなの党」も、マニフェストの中で

「高速道路料金については、人気取りにすぎない『高速道路無料化』や『1,000円乗り放題』ではなく、持続可能な、かつ環境にも配慮した、メリハリのある料金体系(混雑区間・時は高く、その他区間・時は安く等)を構築」

と、一連の高速道路関連の政策を批判している。

共産党も懐疑的

   「建設的野党」をかかげる共産党のマニフェストでも、

「高速道路無料化より福祉・教育を優先する……高速道路料金の無料化や大幅引き下げに何千億円、何兆円という税金を注ぎこむことが、『税金の使い方』として適切でしょうか」

とあり、やはり懐疑的だ。

   一方、国民新党や新党日本のマニフェストには関係する記述はないようだ。

   当事者である高速道路会社からも、批判の声はあがっている。西日本高速道路の石田孝会長は、09年8月21日に臨時に開いた会見で、「1000円高速」については、高速道路の利用台数が増えてサービスエリアなどの売り上げが増えたことを歓迎する一方、鉄道などの売り上げが落ちたことから「付け焼き刃の不公平な施策」と批判。返す刀で、民主党の「無料化案」についても「利用しない人からも税金として徴収するのは正しいことか」と、受益者負担の観点から疑問を呈し、

「無料化で年間2兆円の税金が必要になる。民営化されたばかりの高速道路会社の国有化で、時代に逆行している。(2兆円は)教育、社会保障などに使うべき。全くの選挙対策で、政治になっていない」

と、激しく非難した。

   民主党のマニフェストの柱の一つとも言える高速道路無料化だが、実現までに乗り越えるべきハードルは多いといえそうだ。

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