[ドバイカップ]U-21日本代表 5‐0 U-21クウェート代表/11月18日/UAE 熱い思いを胸に秘めていた。ドバイカップU-23の第2戦となったクウェート戦。同じポジションを務める藤谷壮が初戦のウズベキスタン戦でふたつのゴールに絡んだ活躍を目の当たりにし、燃えないわけにはいかなかった。

 「(藤谷は)怪我で離脱してしまったけど、やっぱりライバル。結果を残されたことは少なからず焦りではないけど、俺も頑張らないと、というのはありました」  初戦を引き分け、何としても勝利が欲しかった第2戦。さしずめハットトリックを達成した上田綺世が主演男優賞ならば、長沼洋一は助演男優賞だろう。27分に久保建英とのワンツーからサイドをえぐって旗手怜央のゴールをお膳立てすると、41分には自身のドリブル突破から中央へ低弾道のクロスを入れて上田のゴールを演出。また73分にも素晴らしい弧を描いたピンポイントクロスで上田の2点目をアシストした。  1試合で3つのアシスト。なかなか見られない結果に誰よりも驚いたのは、広島時代に長沼を指導したことのある横内昭展監督代行だ。 「(3アシストするところを)僕は初めて見ました(笑)。洋一はやっぱりアップダウンできるし、走れるし、球際も戦える。ただ、どうしても最後のクオリティのところは課題だった。今日はそういったところを含めていい仕事をしてくれたと思います」  一方、横内監督代行に「3アシストは初めて見た」と言われた長沼自身も、「僕も初めてしました(笑)」とクウェート戦の活躍に驚きを隠さない。ただ、今回の結果は偶然ではない。今年からよりキックの質を高めるために、所属クラブの岐阜でコツコツとクロスの練習に取り組んでいたからだ。 「やっぱり代表に行った時に、自分の武器としてキックの質のところは、いろいろなキックができるように考えていた。その中でクロスのところはまだまだ自分の中で課題で、岐阜でも練習が終わった後に居残り練習でクロスの練習をしていた。それがちょっとだけど成果が出てよかったなと思っている」
 ライバルである藤谷が結果を残したため、個人としても目に見える答が欲しかった。ただ、何かを変えるわけではなく、「いつも通り裏を狙ったり、チームのために走ったりというのは心掛けようかなと。普段通りにやろうと考えていた」。そういった中で見せた3つのアシスト。それはどれも価値のあるものと言えるだろう。 「今日は本当に結果が出て良かったし、なかなか3アシストもすることがないので今日はあれに浸って(笑)。明日には次の試合に切り替えてやっていきたい。勝って大会を終えることがチームとして大事なので次に向けて考えたいです」  アジア大会でひと回り成長し、今回のUAEの地では積み上げてきたクロスの質に磨きがかかっていることを証明した。それでもまだまだ競争は続く。ライバルたちとのサバイバルレースを勝ち抜くために、静かに闘志を燃やしながら成長を続けていく。取材・文●林 遼平(フリーライター)