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●格安ではないファーウェイのPC

7月4日、SIMフリースマホで勢いに乗るファーウェイが、同社初のノートパソコンを日本市場向けに発表し、PC市場への本格参入を果たした。

日本には多数のPCメーカーがひしめいており、超軽量ノートPCなどで世界を圧倒している一方、ファーウェイのPCは「格安」と呼べるほどには安くない。果たしてファーウェイは日本のPC市場をどのように攻略していくのだろうか。

○MateBookシリーズでPC市場本格参入

2016年に初のWindows PC製品を発売したファーウェイは、2017年にノートPC型の新モデル「MateBook X」を発表。日本でも販売を開始した。

PCメーカーとしては後発のファーウェイだが、スマホやタブレットの開発競争はPCよりもはるかに激しい。そこで培ったノウハウを応用すれば、PC市場にイノベーションをもたらすことができるとファーウェイは見る。

イノベーションの背景には、研究開発への巨額の投資がある。同社が千葉県船橋市に「研究施設」(当初は工場と報じられたが、製造プロセスを研究する施設と発表された)を作ることが話題になったが、こうした施設は世界中に存在している。その投資額はトヨタやアップルを超え、世界で10本の指に入るとの調査もあるほどだ。

ただし、日本のPC市場は世界でも特殊な存在だ。NECレノボや富士通が手がける700g台の超軽量ノートPCは、世界が驚嘆するレベルである。日本の消費者は非常に目が肥えているといってよい。

さらにMateBook Xは、決して「格安」のPCではない。価格は最小構成でも約15万円から、最上位モデルは20万円を超えており、アップルや国内各社に匹敵する価格帯だ。これでは格安スマホで成功したような、コストパフォーマンス重視の売り方は難しい。

一見したところ無謀な価格設定に思えてくるが、ファーウェイが勝機を見出しているのが、家電量販店で定番になっている「割引券」なのだという。

●「割引券」で売るファーウェイの考え

○回線契約時の「割引券」がPCの価格に影響

日本の家電量販店では、Wi-Fiルーターや光ファイバーなどの通信回線を契約することで、数万円の「割引券」を配布することが定番になっている。これを利用して、PCや周辺機器を割安に買ったことがある人も多いのではないだろうか。

実はこのWi-Fiルーター市場でシェア1位をキープしているのがファーウェイなのだ。一般に知られているのは「Pocket WiFi」といったブランドだが、端末を製造してきたのはファーウェイだ。「Wi-Fiルーターが1台あれば、スマホやタブレット、ノートPCをつなげることで通信を1本化できる」と、ファーウェイ・ジャパンでデバイス事業を統括する呉波(ゴ・ハ)氏も強調する。

この割引券の存在により、日本の消費者はより高機能で、高性能なPCを求める傾向にあると呉氏は分析する。たしかに日本の家電量販店には「Microsoft Office」をバンドルした10万円以上のPCが多数並んでいるが、これは欧米ではなかなか見ることのできない光景だ。

また、買い換えサイクルの長さもPCの特徴だという。スマホは2年程度で買い換えるのに対し、PCでは3年から5年、最近では7年以上に伸びているとの調査もある。いざ買い換えるからには、良いものを長く使おうと考える人は多いはずだ。

もっとも、ブランド認知度という点でファーウェイは決して強くはないのが現状だ。都市部では認知度が急激に上がっているとはいえ、地方の販売現場ではまだまだ国内ブランドに及ばないとの声は多い。

こうしたブランド力を一朝一夕に得られるものではないことは、同社も認めている。まずはWi-Fiルーターと割引券を足がかりに、スマホやタブレットでの人気の高まりをノートPCにも波及させていくというのが、ファーウェイの狙いだろう。