株価は上がらず…

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 東芝の株価下落に歯止めがかからない。東証一部から二部への“メルトダウン”は確実で、紙屑になる恐れも現実味を帯び始めた。自社株を保有する社員は少なくなく、東芝社員にとってはボーナスカットと併せてダブルパンチである。

 決算発表を延期した2月14日、東芝株の終値は229円80銭。翌日からは売り一色で、21日は前日比2円60銭安の183円70銭まで値を下げた。昨年12月15日の株価が475円だったことを考えれば、約2カ月で半額以下になった計算だ。東芝本社の企画部門に勤務する社員によれば、

「社内では、毎日のように株価の話で持ち切りです。不正会計による株価下落で、三菱UFJ信託銀行やGPIFなどがうちを訴えると報じられているが、“我々も会社を訴えようか”と、自嘲気味にジョークを飛ばす同僚さえいます」

株価は上がらず…

 毎年、東芝は4月の入社式直後から約1カ月間に及ぶ“新入社員全体研修”を開催。そこで新入社員は生命保険と並び、自社持株会への加入を勧められる。

「研修会場に設営された証券会社のブースには、新入社員の長蛇の列ができます。そのブースにいる証券会社の社員は“銀行の預金金利より有利ですし、多額のお金が必要になったら売却すればいい”と力説します。ブースへ行かないと、先輩社員から“早く、自社持株会の加入手続きに行きなさい”と注意されるので、新入社員はほぼ100%加入しているはずです」(同)

 自社株の購入額は任意で、新入社員の場合は毎月1万〜2万円が給与から“天引き”の方法が取られるという。自社持株会の存在は大きく、昨年9月の中間決算時点で東芝の発行済株式2・8%を占め、事実上の筆頭株主になっている。

■“忠誠心の証”

「株価下落で、人生設計が滅茶苦茶になりました」

 こう沈痛な面持ちで語るのは、東芝の30代技術職社員だ。

「実は、結婚を考えている彼女と一緒に住むマンションを購入しようと計画していたのです。不正会計発覚前、自分が持っている自社株の評価額を調べたら300万円ほどだった。それで株を売却して“頭金に”と考えていたのですが、半額以下に目減りしたので購入を見合わせました」

 株価下落は若いカップルの夢を打ち砕いたが、ベテラン社員の悩みも深刻だ。40代の管理職社員は頭を抱えながら、

「上場来高値は、1989年の1株1500円。私の平均購入額は1株900円から1000円ですから、購入額の5分の1程度まで目減りしたことになる。定年まで住宅ローンが残っていたら、自社株の一部を売って返済に充てるつもりでした。昨年末に住宅ローンの返済計画を見直した結果、専業主婦だった妻にもパートで働いてもらうことになったのです」

 数年前まで勝ち組だった東芝。社員の妻も、よもやこんな日が来ようとは想像もしていなかったはずだ。自社株を買い続ければ、含み損も膨らむ一方だが、

「今後も、自社株を買い続けるつもりです。以前は、管理職の飲み会で“俺の方が株数が多い”などと自慢し合っていました。保有する株数は会社に対する“忠誠心の証”。こんな時だからこそ、買い続けて株価を支えなければならないのではないでしょうか。万が一、上場廃止になったとしたら……」(同)

 彼らの“忠誠心の証”が、紙屑にならないことを祈るばかりだ。

「週刊新潮」2017年3月2日号 掲載