「メール送ったんですが…」の先が問題なのに

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 誰もがスマホを持つ時代になって久しいが、そのせいで“いつでもどこでも返信可能”が前提になり、結果「即レス」が求められるような風潮になっている。特に仕事ではそうで、Slack等のチャットアプリで顕著で、即レスをしない者は失礼な無能扱いになっている。それはメールにも当てはまる。だが、日々膨大な量のメールが来る中、筆者のようにスマホを持たぬ者からすると、メールを見落とすこともあれば、返事が遅れることもある。【中川淳一郎(ネットニュース編集者)】

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メール送ったんですが……

 しばらくすると電話がかかって来るのだが、その際に、必ずと言っていいほど相手が発する一言がある。それは「メール送ったんですが……」だ。すぐに「あぁ、ごめんなさい! 見落としてました」や「まだ外にいるので見られませんでした、申し訳ありません」などと言うが、この「メール送ったんですが……」が苦手だ。特に「……」部分である。

「メール送ったんですが…」の先が問題なのに

「メール送ったんですが、早く返事ください」「メール送ったんですが、いつ納品してもらえますか?」などと、具体的に用件を言ってもらうのは全く問題ない。あくまでも「……」という、「察してくれよ、オイ」的なコミュニケーションのやり方が苦手なのである。

 仕事におけるメールについて考えるとき、私は、かつてのサッカー日本代表のボールの扱いを思い浮かべてしまう。そのこころは、とにかく、メール(ボール)を相手に送った(パスした)ところで主導権を相手に渡し「私はもう責任ないからねー! あとはあなたが何とかしてねー!」のような態度を取ることだ。

「メール送ったんですが……」という電話にしても、上司から「まだオレに戻さないのか」などと詰められて、催促せざるを得なくなったから仕方なくしているのだろう。「私が悪いわけではない、あいつがメールの返信をしてこないから悪いんだ」といった気持ちになるから催促をし、上司に「あいつが悪いんです!」を伝えようとする。

「返事がなければそのまま放置すればいい」という考え方

 かくして仕事上のメールというものは、責任と主導権の押し付け合い的部分がある。これは、時に妙な開き直りをもたらすことになる。6月25日にさる原稿をクライアントに送ったのだが、それが7月8日になってもHPに掲載されていない。この原稿は取材をもとに書いており、取材相手から「記事はいつ配信されるのか?」と聞かれたため問い合わせた。すると、こう返事が来た。

「6月末にメール送っていたのですが……」

 完全に見落としていた。その点は自分のミスである。ミスではあるが、10日間も返事が来ないのであれば、確認の連絡くらいしてもいいのでは。メールの内容は「この一文を足してよろしいでしょうか?」というお伺いだった。私自身、原稿はクライアントに納品した時点で彼らのもの、ということは伝えており、下請けの著者である私の確認などいらない。勝手に直してすぐに掲載すればいいと思っていたのだが、認識が共有できていなかったようだった。気にせずすぐに公開してもらうよう依頼し、無事掲載された。

 この時に改めて理解したのは、「メールを送った=私の手を離れて主導権は相手に移った。あとはその人のターンであり、返事がなければそのまま放置すればいい」という考えを持つ人が一定数存在するということ。夏のレジャーの話だったのだが、7、8月の最盛期により長く掲載されているのが良いに決まっているのに、先方は私からの返事がない、ということで寝かせた。

 もちろん、見落とした私が悪いのだが、問い合わせた時に「メール送ったのですが……」でいいわけがない。外部の人間とはいえ、同じチームなわけで、ここはあまり互いに遠慮しなくていいと思うのである。

 もっと言えば、優先順位が間違っている。この原稿は季節もので、なるべく早く掲載すべきなので、一文を追加したことの承諾を得るのはそもそも不要だったのだ。しかし、返事がない場合、優しい日本人は「忙しいのに催促したら申し訳ないな」や「返事が来ないのは、熟考しているのだろう。もう少し待とう」などと配慮をしがちである。

 私自身も7月8日まで問い合わせを引き延ばした理由は、この組織では上長が何人もおり、それらの承認を得るプロセスが大変なんだろう、と忖度したからである。これもダメな仕事のやり方だ。遅いと思ったらさっさと催促すべきなのである。

 自分の反省も込めて言うが、この手の配慮は一切不要だ。「メール送ったのにまだ見てないんですか? 返事ください」とビシッと言えばいい。様々な仕事上のトラブルはメール見落としや「送ったつもりになっていた」を含む些細なミスで発生することは案外多い。カネもらって仕事をしているのだから、妙な遠慮は無駄だ。「メール送ったんですが……」マインドはさっさとやめた方がいい。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部