「まさか着られるとは…」車いす用ウエディングドレスに喜ぶ笑顔 “ひとりひとりに合った夢のドレスを作る”デザイナーの挑戦は続く『every.特集』
車いすの人は、結婚式でウエディングドレスを着ることを諦めることが多いといいます。
数少ない車いす用ウエディングドレスを作っているデザイナーの宮澤久美さんや、宮澤さんのドレスを着た女性たちを取材しました。
■ウエディングドレス「着られると思ってなかった」

滋賀県近江八幡市の結婚式場「ヴィラ・アンジェリカ 近江八幡」で行われたウエディングドレスのショーです。
モデルは、ダウン症や視覚障害などの障害のある女性たち。その中には車いすの人向けのウエディングドレスも登場しました。車いす用のドレスはまだまだ少ないといいます。
車いす用のドレスのモデルになった赤坂真梨子さんは「まさか(ウエディングドレスを)着られると思ってなかったので、ちょっとびっくりしています」と話します。
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さらに、同じく車いす用ドレスのモデルの今村由希さんは「車いすだからウエディングドレスを着られないっていう選択肢はないんだなと思って」と言います。
別のモデル・田村柚稀さんのドレス姿を見た田村さんの母・裕子さんは「かわいい〜」と喜びます。
■ある出来事から障害者用の服を作り始め…

ドレスを手掛けたのは、アパレルデザイナーの宮澤久美さん。車いす専用のウエディングドレスを作る数少ない一人です。着替えも座ったままで、体への負担を減らしつつ、美しく見えるように工夫しています。
神奈川県逗子市にある宮澤さんの工房を訪ねました。
元々、アパレルデザイナーとして服のオーダーメイドやリメイクの仕事をしていましたが、35年前にある出来事が起こります。
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母親が、体の自由が徐々に失われていく「脊髄小脳変性症」という難病になりました。
母と暮らす中で、障害者用の服が少なく不便だと気が付き、オーダーメイドの服を作り始めたのです。
■ドレスをそんなに喜んでくれるのか、と驚く一方…

8年前には、ある依頼が舞い込みました。
宮澤さん
「バリアフリーなウエディングドレスが作れないかという話をいただいて」
イベントで使う、車いす用のウエディングドレスの依頼でした。初めての作業に不安でしたが…
宮澤さん
「こんなふうにしたらかわいいかな、なんて考えていたものがそのユーザーさんにぴたっと合って」
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「(女性が)めちゃくちゃテンションが上がって、すごいキャッキャ騒いじゃって。その姿がすごくかわいらしくて」
そんなに喜んでくれるのか、と驚きがあった一方で…
宮澤さん
「『自分がドレスを着るとは思ってなかったんです』っていうお話をいただいて、すごい切ないと思っていて」
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体への負担や着付けの難しさで、車いすの女性が結婚式でのウエディングドレスを諦めることが多いと知ります。
そこで2018年、車いす用のウエディングドレスを作ろうと思い立ちます。これまで30人以上のドレスを仕上げました。
■目標はひとりひとりに合った夢のドレスを作ること

ドレスには様々な工夫が凝らしてあります。裾が邪魔にならないよう、後ろは背中までの短い丈に。
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前から着られるように背中側にファスナーをつけて、わずか30秒ほどで座ったまま簡単に着替えられます。
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さらに、車輪がドレスに引っかからないよう、車いすを動かしながら裾上げ。動きやすくて美しい仕上がりにしています
宮澤さん
「ただ、あまり短くするとバランスが悪くてカッコ悪いので、ギリギリの線で動けるようにしたい」
「その方に応じて作り方も変えるし、とにかく欲しいもの(ドレス)を届けたい」
障害もひとりひとり違います。本人に合った夢のドレスを作るのが目標です。
■ドレス完成「これこれこれ!」喜び、驚き、感動

名古屋に住む杉浦美智子さんは、夢を叶えた一人です。
杉浦さんは、夫の誠さんと二人暮らしで、車いすの欠かせない生活をしています。先天性の難病「骨形成不全症」で骨がもろく、骨折や骨の変形を繰り返す病です。
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杉浦さんはどうしてもドレスでウエディングフォトを撮りたいと思いました。
杉浦さん
「(ウエディングドレスを着るのは)一生に一回しかないことだからこそ、しっかり記念に残したかったんで」
しかし、「普通のドレスは私の体形からしたら(合うものは)絶対ないなとは思っていた」と言う杉浦さん。それでも夢を諦めきれず、宮澤さんの存在を知りオーダーメイドします。
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“大人っぽいエレガントな雰囲気にしたい”、宮澤さんとやり取りを繰り返します。試着で横浜を訪れたことも。
1年ほどかけて、ようやく思い通りの理想のドレスが完成しました。
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杉浦さんはこう振り返ります。
「これこれこれ!って感じでした」
「ウエディングドレスを着られる喜びがやっぱりあって」
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「私がこの場に、こんな姿で写真を撮れるんだっていう驚きと感動と」
その姿に夫の誠さんは…
夫・誠さん
「自分でこだわり抜いただけあって似合っていた」
杉浦さん
「ありがとうございます」
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杉浦さんは、ウエディングドレスの夢を叶えたことが、その後の日々に生きたといいます。
杉浦さん
「この時があったから今があるんだなって思っているので、やりたいことは諦めずにやりたい」
■車いす用ドレス「選ぶ楽しさも感じてほしい」

宮澤さんが車いす用のドレスを作り始めて8年。この日は新しい形のイベント、車いすウエディングドレスの試着撮影会です。
車いす用のドレスを広く知ってもらおうと、モデルを募り、撮影会を行います。さらに好きなドレスを選ぶ楽しさも感じてほしいと思いました。
宮澤さん
「驚いてくれるかなとか、喜んでくれるかなとか、そういうことを考えるとすごく楽しみ」
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イベント当日。色も形もバラエティに富んだ14着のドレス。モデルに選ばれた4人に、自由にドレスを選んで楽しんでもらいます。
モデルの二葉まなさんはドレスを見て、「どのドレスもかわいくて」と笑顔です。
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別のモデルの工平(くだいら)真子さんには、宮澤さんが「ピッタリでしょ色が、髪の毛に」とピンクのドレスをあてがいます。すると工平さんは「髪の毛もピンクに合わせてきました」と答えました。
そのピンクのドレスを着せてもらった工平さんは「やった〜、すごーい! かわいい〜」と喜びます。
工平さんの母・浩子さんが「簡単に着られたの?」と聞くと、工平さんは「1回も立ってないもん」と答えます。母・浩子さんは「えー!?」と驚きました。
■体に合ったもの…「人として認めてもらっている」

こちらの工平真子さんは山形県から単身、上京し就職。車いすで一人暮らしをしています。10歳の時プールで事故にあい、頸髄(けいずい)損傷で、手足に障害が残りました。
工平さん
「(車いすだと)好きなものを着られない世界線なんですよ、まだ」
「選択肢が欲しかったんですよね、人生の中に。なのでこういう体に合ったものをデザインしてもらえるのがすごく人権を感じます。人として認めてもらってるっていう感じがしますね」
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娘の晴れ姿を見ようと駆けつけた母親は…
工平さんの母・浩子さん
「今日は最高の笑顔だと思いました」
2人は互いに言い合います。
母・浩子さん
「気持ちがね」
工平さん
「心からね」
母・浩子さん
「うれしい気持ちでいっぱいですよね」
工平さん
「幸せだね」
■十分に楽しめなかった結婚式…もう一度ドレスを

夫と参加したのは、二葉まなさん。「反復発作性運動失調症2型(EA2)」という病で激しいめまいやふらつきで、長時間立つことができません。
2025年、車いすドレスを知らず、通常のドレスで結婚式を行ったのですが、長く立っていたことで体調を崩し、結婚式を十分に楽しめなかったのが心残りでした。
二葉さんの夫・聡志さん
「最初から車いすで(結婚式を)やれるって知っていたら、もうちょっと気がラクだったね」
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今度は心から楽しみたい――もう一度、ドレスを着て夫の元へ。
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夫・聡志さん
「わっ、すごい〜! めっちゃキレイじゃん」
「よかったねぇ。超かわいい」
写真撮影もして、いい思い出が作れたようです。
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二葉さん
「着た時もきついとかそういうのも全くないし、着心地がめちゃくちゃよくて、しかもかわいいドレスなので」
「めちゃくちゃ楽しかったです」
■宮澤さんの車いす用ドレスを作り続ける原動力

ほかのモデルからの「こんなかわいいの着させていただいて」「(ドレスを着るのが)夢だったので」という言葉に、宮澤さんは「うれしい、そう言ってもらえると」と返します。
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ウエディングドレスの夢を諦めてほしくない――
彼女たちの笑顔が宮澤さんの原動力です。
宮澤さん
「ほんとに喜んでくれたっていうことがうれしくて」
「(続ける理由は)これしかないです。もうあの(喜んだ)表情を見られるだけ。それしかない」

