脳科学者の茂木健一郎氏が自身のYouTubeチャンネルで「人工知能と人間の「経験ギャップ」」と題した動画を公開した。動画では、これからのAIが単一のエージェントとして発展するのか、それとも複数のAIによる社会として発展していくのかをテーマに、人間の「集団的知性」と「個別の経験」の重要性について深い見解を語っている。

動画の冒頭で茂木氏は、今後のAIの発展方向として「単一の人工知能か、人工知能のソサエティ(社会)か」という問題を提起。コンピューターの計算資源が増加する中で、それを単一のAIに割り当てるか、複数のAIに分割して相互作用させるかという仮説について言及した。

さらに茂木氏は、人間の知性が集団的なものであると指摘する。「独創的な天才でも、人間社会のなかで皆で力を合わせている」と語り、我々がパンを焼き、家を作り、そしてAI開発に必要な半導体やクリーンルームを作り出せるのも、社会全体での分業体制があるからだと説明。「人間は社会があり、それぞれ分業しているからこそ全体として強い」と、集団的知性の強みを強調した。

その上で、現在のAIと人間の最も大きな違いは「経験」の差だと断じる。人間は世界に約70億人おり、一人ひとりが全く異なる経験を蓄積している。茂木氏は「一卵性双生児でも見ている世界は違う」と述べ、この個別の経験こそが生きがいそのものであると語った。一方で、現在のAIが学習しているデータは「意外とホモジニアス(均質)」であり、個別の経験を持たないことが決定的な差分だと指摘した。

最後に茂木氏は、今後AIがヒューマノイドロボットなどの「フィジカルAI」として物理世界に進出した際の未来を予測。「各AIが経験することが違ってくるわけで、その時に初めて違った世界をなんとか統合しようとしている我々人類のあり方と似たようなことが起こってくる」と提言した。人間の知性が多様な経験の共有によって成立しているように、AIもまた、異なる経験を共有し合う「集団的な知性」へと進化していく可能性を示唆して動画を締めくくった。

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