大河原克行のNewsInsight 第459回 過去最高益を見込むパナソニック、AI事業期待で株高も「一過性ではない」自信の背景

パナソニック ホールディングスは、2025年6月22日午前10時から、大阪・城見のホテルニューオータニ大阪で、第119回定時株主総会を開催した。また、多くの株主が参加しやすいように、インターネットによるライブ中継も行った。会場には、736人の株主が参加。ライブ中継では860人が視聴した。
「グループ経営改革に集中する1年」と位置づけた2025年度を振り返り、楠見グループCEOは、「2025年度連結業績が減収減益であったことをおわびする。だが、これは前年度にオートモーティブ事業を株式譲渡したこと、構造改革費用を計上したことが大きな要因である。今後成長を続けるために必要な改革であり、高く跳ぶためには、低くかがまなくてはならない。2025年度の業績はかがんだ結果であったと理解してほしい」と株主に説明。また、「グローバル全体で1万2000人の人員減となり、低収益事業と位置づけたすべての事業の方向づけが完了した。2026年度末時点での課題事業ゼロを確実に達成することができる。構造的な課題、本質的な課題解決に向けた取り組みを行った1年であり、2025年度は、構造改革を行うにあたり、取締役および執行役員全員が報酬の一部を返上した」と総括。「2026年度には調整後営業利益は6000億円と、過去最高の更新を見込んでいる」と力強く宣言した。

パナソニックグループでは、急成長するデータセンター市場に対してAIインフラへの貢献で成長を牽引する「デバイス領域」、ハードウェアに対するサービスおよびエンジニアリングを通じて、顧客のオペレーションを支える持続的な価値提供ビジネスモデルへと転換を図る「ソリューション領域」、最も多くの顧客にブランドに触れてもらう事業であり、パナソニックブランドの認知と信頼のさらなる向上を目指し、B2B領域での認知向上、信頼性向上につなげる役割も果たす「スマートライフ領域」の3つの事業領域で展開。「これらの3つの事業領域において、だれにも負けない社会へのお役立ちを果たすことで、収益性の確保を実現する」と語った。
2028年度まではフェーズ1として、デバイス領域で売上および利益を大きく拡大させ、グループの成長を牽引。調整後営業利益で7500億円以上の達成を計画している。また、フェーズ2では、ソリューション領域が収益成長の核になると位置づけている。
パナソニックグループでは、2026年度から2028年度までの3年間で、AIインフラを支える事業に対して、累計5000億円の戦略的投資を実施する計画だが、楠見グループCEOは、「この投資は、最初は頭にはなかった。投資は一段落させる考えだった。だが、2025年度後半からお客様の引き合いがすごく強くなってきた。お客様のデマンドに応えていくことを前提に投資判断をした。堅実に判断し、投資をしていく」と発言。昨今、パナソニック株が、AI銘柄のひとつとして上昇傾向にあることについては、「AIインフラを支えるデバイス領域への積極的な投資が、株価の上昇にもつながっている。この株価は一過性のものではないだろう。将来の期待に対するものであるが、目標を必達し、約束を守り、期待を信頼に変えていく」とコメントした。

また、「これまでは、お客様のニーズにあわせてカスタマイズしたものをすべてソリューションと呼んでいた。それだけでなく、サービスおよびエンジニアリングによって、お客様を、中期に渡って支援するものをソリューションと呼ぶことにしている。ソリューションの言葉の定義が少し変わっている。たとえば、アビオニクスでは、収益の多くはサービスとなっている。これがパナソニックのソリューションである」と述べた。
一方、家電事業を中心としたスマートライフ領域は、技術革新と競争力強化によって持続的な成長を目指すとし、2019年に発足した中国・北東アジア社によって、6年間をかけて、中国で戦えるコスト競争力を高めてきたことを強調。これに日本で求められる品質を加えて、事業競争力を向上させることができる体質ができあがったことを示した。「ナノケアドライヤーやドラム式洗濯機のように、パナソニックならではのコア技術によって、仕上がりの違いを感じてもらえる製品へと磨き上げていく。選ばれる続けるブランドとおり、高収益化を目指す」と意気込んだ。
パソナニックグループでは、2026年5月に、2032年度に向けた「グループ成長戦略」を発表している。
長期的な目標としたことについて、楠見グループCEOは、「グループが持続的な成長を果たすためには、固定的な3年間の経営計画を設定するのではなく、より長期の視点で、目指す姿を捉えながら、様々な変化に対して早いサイクルで、なにを変えるかを考え、アクションに移していく必要がある。そこで、2032年度の目指す姿を示し、1年ごとに必要な見直しを加えつつ、3年後、6年後を見据えて、戦略を研ぎ澄ましていくやり方に変えた」と説明した。

過去には、売上高10兆円といった指標を中期目標に掲げたこともあったが、「売上高を目標にすると、売上至上主義になりがちだ。低収益でも受注してしまうということも発生していた。私は利益を拡大することを目指す。なんでもかんでも規模を狙えばいいというものではない。規模の拡大を継続できるのかが大切だ。かつてのディスプレイパネル事業がそうであったように、自分たちが、コントロールできる範囲で、規模を超えていくことができなくては事業が継続できない。それに対して、電池事業は、お客様と合意できた範囲でしか設備を増強しない」と説明。「いまの世代の取締役と執行役員は、30年間の停滞から脱して、成長基調に切り替え、次の世代に渡すことが、役割であり、責務だと考えている。スケールを志向している経営チームではない」と断言した。
また、楠見グループCEOは、「パナソニックの強みは、『人』である。『人』を生かし切ることが競争力に直結する」と定義しながらも、1万2000人という大規模な人員削減を行ったことについては、「2024年度までのパナソニックグループは、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる機会が十分とはいえなかった。社会からお預かりした人材の成長機会を奪うようなことは、社会の公器としてはあってはならない。この状態を解消するために、一人ひとりが能力を最大限に発揮、仕事に集中してもらい、自身の成長のために、社外に新天地を求めてもらうように選択の余地を用意したのが雇用構造改革であった」と説明。また、「パナソニックは何の会社になるのかという質問を多くもらった」とし、「パナソニックグループは、時代とともに変化する社会課題の解決を通じて、社会と産業の発展を支え、進化を続けてきたように、お役立ちを時間軸を区切って考える必要がある。いまから、2032年度に向けては、エネルギーの有効活用と、現場労働力不足の解消を目指し、AIインフラと社会オペレーションを支える事業を通じて、お役立ちを果たす企業になる。これは、パナソニックグループが競争力を持って貢献できる領域である」と位置づけた。その上で、「2032年度以降も、そのときの社会課題に応じて、企業の変革を進めていくことになる。創業者の松下幸之助が残した言葉に、『日に新た』がある。その精神で、進化と変革を続けることが重要であり、日々の進化と変革の積み重ねによって、未来に向けて持続的に成長をしていくことができる」と語った。
さらに、「パナソニックのもうひとつの強みは、経営基本方針に則って、経営を行う会社であるという点だ。1970年代、1980年代に成長を遂げていた時代は、創業者が確立した経営基本方針に則り、様々な経営判断を行い、社員も自主責任感に基づき、積極果敢に挑戦してきた。だが、この25年ほどは、経営基本方針から離れていってしまった部分があり、パナソニックグループの成長も止まってしまった。私は就任当初から、経営基本方針の回帰に向けて様々な施策を進めているが、これは、今後も継続的に進めていく」と宣言した。
Google出身の松岡陽子氏(すでに退任)を迎えて推進してきたYohanaなどのAI戦略の終息については、「AIの進化は速い。米国の離れたところで新たな事業を立ち上げる以上に、いまの事業をAIによって変えていくことを加速しなくてはならないと判断し、AIに関する開発のやり方を変えることにした」と説明。あわせて、パナソニックコネクトの榊原彰氏を、新たなポジションであるグループCAIOに任命したことにも触れた。
榊原グループCAIOは、「以前の働き方は、自分ですべての業務を実行し、処理する能力が問われていたが、いまの働き方は、AIを活用して、どう効率化するかが求められている。そのためには、AIの最新テクノロジーを追求する人材も必要だが、AIに教えたり、伝えたりすることが重要となり、現場力と言われる現場のノウハウを、AIに教え込む人が重視される。AIの時代においても、従来通りに現場力を磨くことは大切である」と語った。
Blue Yonderを買収以降、同社が赤字が継続していることについては、楠見グループCEOが説明。「サプライチェーンの計画系ソリューションを、ネイティブクラウドに変える必要があることを、買収時点では理解できていなかった。そこで、ソフトウェアを作り直すことに3年近くを要した。開発投資がかかったことで赤字が続いていた。2025年5月に、競争力があるソリューションを完成させることができ、これからは反転攻勢に転じることになる」とコメント。これを受けて、2026年4月に、パナソニックコネクトのCEOに就任したケン・セイン氏は、「これまで、Blue Yonderのクラウド化とセキュリティを強化してきた。2025年度第4四半期のEBITDAは3500万ドルとなり計画上回っている。ARRは8800万ドルに達している。将来の売上げにつながる契約は16億ドルとなっている。製品、機能、セキュリティに対する拡充は、ほぼ完了しており、戦略的投資は計画的に進んでいる。今後、利益率の向上を目指すフェーズに入る。Blue Yonderはパナソニックコネクトの成長戦略の中核である。2026年度のSaaSの売上高は2桁成長を見込んでおり、受注も堅調である」と、今後の事業成長に自信をみせた。
中東情勢が与える影響については、楠見グループCEOが説明。依然として、調達コストや物流リードタイムなどの影響があることに触れながら、代替調達先の確保、複数ルートでの物流確保、在庫水準の適正化のほか、代替素材の採用、使用量適正化などにより、供給の安定化とリスク分散を図っているとした。だが、「戦闘が終結しても、原油やナフサ、それらに由来する材料の供給や、価格の安定化には一定の時間がかかると見ている。情勢を注視しつつ、事業への影響の最小限に抑えるべく対応を図っている」と述べた。

なお、株主総会の所要時間は122分となり、決議事項の第1号議案から第5号議案までのすべてが可決された。
