【原井 宏明・松浦 文香】押し寄せる不安はどこから病気なのか。子どもに多い「不安症」とは
次から次へと気がかりなことが思い浮かび、不安で、不安でたまらない――そんな状態が続くことがあります。「心配性」「怖がり」など、性格や気質の問題のようにとらえられがちですが、生活に差し障りが生じるほどの現れ方であれば「不安症」という病的な状態ととらえられます。
「不安をなくそう」「不安になるのを避けよう」とすればするほど、不安は強く大きくなり、不安にとらわれやすくなっていきます。書籍 『不安症がわかる本 とらわれから抜け出す』から、「不安」とは何か、といった基礎知識をはじめ、さまざまなケース例とともに不安へのとらわれから抜け出す方法を具体的に紹介します。
消えない不安。どこから病気なのか
人間には、自分のふるまいや考えについてふり返り、必要に応じて修正していく知性があります。こうした知性があるために、心配ごとがなくなったあとでも、「こうしたほうがよかったかもしれない」などと考え続け、ときにそれが過剰になります。
たとえば、なにかミスをしたとします。ほかの人は気づかぬくらいのミスでも「自分の評価が下がった。関係を切られて生活に困窮するかも」などと不安になり、ほかのことが手につかず、不安を訴え続ける─こうしたことがたびたびくり返されるようなら、病的ともとれます。
■心配なだけか、病的な状態か?
いわゆる心配性なのか、病的な状態なのかは程度によります。
〇日常的な心配
心配はしてもふだんどおり生活が送れる。不安や恐怖を感じやすく一時的
〇病的な状態
?〜?の観点から検討。程度がはなはだしければ病的といえる。医師が診断する際は各々の病気の診断基準に照らし合わせ、?〜?についても検討する
?日常生活にどのくらい支障があるか
?家族など、まわりの人にどれくらい支障があるか
?本人やまわりの人に危害を及ぼす可能性があるか
?いつ、どこで、どのような場面で症状が生じるか
?いつから症状が生じたか
?ほかの病気では説明がつかない
■不安が強くみられる病気はいろいろ
不安症はいくつかの種類に分けられています。不安や恐怖がなにに対するものか、どんな状況で起こりやすいのかなどといった特徴により具体的な病名は異なりますが、互いに関連が深く、併存することもあります。
また、不安症には含まれないものの似た面の多い病気もあります。
親と離れて過ごせない。子どもに多い分離不安症
分離不安を示す子どもへの対応は、安全な環境で信頼できる大人に預けられるなら、親が折れずに置き去りにするのがベストです。直後は大泣きしていてもいつかは収まります。友だちと遊んだり、保育園ならおやつを食べたりと、楽しい思いをしたあとに親が迎えに来れば、大泣きした記憶も楽しい記憶に上書きされます。
しかし、少子化が進み、預ける側も預かる側も子どもの泣き声に慣れていない人が増えています。「万が一なにかあったら困る」とリスクを回避する傾向もみられます。子どもが離れないのは、大人が離せないからともいえます。
家では話すのに園や学校では話せない
家ではよく話すのに学校などではいっさい口をきかない子どもは、「わざと話さない」と誤解されていることがあります。周囲には「言葉がわからないのだろう」と思われていることもありますが、場面緘黙の場合、言語能力や理解力に問題はありません。「うまく話さなくては」と緊張すると、無意識にのどに力が入り、物理的に発声しにくくなってしまうのです。
多くは幼児期に明らかになります。場面緘黙は、分離不安症や社交不安症と関連しやすい傾向もあります。背景にある不安に配慮しながら対応していきます。
場面緘黙の子どもへの対応
いずれは話せるようになることが多いのですが、子どもが不安を強めていくと、話せない状態が長引く場合もあります。
■話せる場所・状況に注目する
家庭での会話や他人とのふとしたやりとりに注目し、話せる場所・相手・状況を増やしていくようにします。「話せるようにする」のではなく、「話せる場所を広げていく」ことが大切です。
■責めない、くらべない
「どうして話せないの?」「ほかの子はできているのに」といった言葉は、子どもの不安を強めます。話せないのは子ども自身の意志ではなく、体の緊張によるものです。
■学校との協力体制をつくる
担任の先生や学校側と症状について共有しておきましょう。同級生が話しかけないようにする、あるいは話さなくても意思疎通できるようになってしまうと、本人も話そうとしなくなってしまいます。
本人が話せなかったときは無視し、話せたときにだけ注目するようにします。
■専門家に協力を求める
場面緘黙には、エクスポージャーと呼ばれる行動療法が有効です。エクスポージャーは曝露療法ともいい、苦手な場面・対象に慣らしていく治療法です。
行動療法を専門としている専門家に相談するとよいでしょう。
