【岡本 敦史】愛知の「成人映画館」がお年寄りたちの「憩いの場」に…「ハッテン行為なし」がなぜ実現できたのか

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愛知県西尾市にある、映画館とレンタルビデオ店が同じ建物内に併設された夢のような場所、鶴城映劇。かつては大手映画会社の直営館だったが、現在は成人映画とアダルトビデオを主軸として経営している。遠方からも常連客が訪れる、桃源郷のような映画館はいかにして“再生”したのか? 経営陣に話を聞いた。

取材・文・写真:岡本敦史

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芝居小屋から劇場興行へ

――劇場はリニューアルの際に広さも変えたのでしょうか?

斉藤貢(現・代表):建物自体の大きさは変わりませんが、館内はちょっと小さくなりました。当時、映画館の前に走っている道路を拡幅することになったので、駐車場スペースを少し手前に下げたんです。それもあって、建物内部のレイアウトも少し整理したんです。

斎藤すみ子(館主):映画だけやってたころは、もっと大きかったよね。

――確かに、鶴城映劇には日本映画最盛期の面影があります。この劇場を始める前は、お父様はどんなことをされていたんですか?

貢:この劇場を始めた昭和30年12月に、三河興行社という会社を立ち上げているんですよ。それまでは個人でやっていたのかもしれないけど。

すみ子:その前は、一色だとか、寺津だとか、田舎のほうで映画館をずっとやっとったの。だから映画館主としてのキャリアは長いですよ。

貢:ずっと初めは芝居小屋からやってたと聞いたよ。無声映画の時代から劇場興行を始めた人なので、ここ(鶴城映劇)はいちばん新しいんです。

――もともと歴史ある映画館だからだと思うのですが、劇場内にもクラシカルな雰囲気が漂っていて、非常に魅力的な空間ですね。

貢:ま、作りが古いのは確かです。スピーカーもアルテック社製の時代物で、「これは貴重品なんだ」と言っていました。

――ところで、劇場の音量が若干小さめなのは、なぜなんですか?

貢:数年前に、ご近所から騒音のクレームが来たんです。市の環境課の調査も入りまして、確かに映画館の外にも多少の音漏れが計測されまして。これまでは苦情がなかったもので、その状態で半世紀ぐらいやり過ごしてきてしまった。こちらとしても市としても、できるだけトラブルのないように穏便に営業していきたいので、いまは少し音量を絞っているんです。ちなみに映画館のお客さまからは「音が小さすぎる」といったクレームは、いまのところないです。シネコンみたいにド派手なアクション大作をかけているわけじゃないので(笑)。

すみ子:いっときは映画館より、レンタルのほうがすごかった時代もあったんです。始めた当初は、借りていく方がたくさんいて。

貢:そのころは映画のほうがどんどん廃れていく時代でしたから。最近はもうインターネットの影響を受けて、すっかり逆転されましたけどね。いまウチを支えてくださっているのは、映画館のお客さんです。固定客の方がいらっしゃるので、ギリギリなんとかやっていけるかな、という状態ですね。

すみ子:退屈なおじちゃま連中が来てくださるから、なんとか続けられています。

――メインの客層は、地元の常連男性客の方々なんですか?

貢:いや、実は地元の方はあまり多くないと思います。車のナンバーを見ると、このへんの地域じゃないことが多いですね。名古屋、岡崎、豊橋……もっと遠いところでは、浜松ナンバーのお客さまも来られます。滋賀の方もいらっしゃるし、たまに大阪からも来られますね。車のナンバーだけで判断してるから、実際は分かりませんが。

すみ子:でも、そういう方は本当に一握りですよ(笑)。

成人映画館なのに「ハッテン行為」がない

もうひとつ特筆すべきは、観客のマナーのよさ。成人映画館でよく見かけるのが、客同士のハッテン行為。なかには迷惑行為レベルの行状も見受けられ、一歩間違えばトラウマにもなりかねない(イヤな目に遭ったら、すぐその席を離れること)。だが、個人的印象で言わせてもらうと、鶴城映劇はそういう気配が驚くほど少ない。度を越した狼藉を目撃するようなことも、ついに一度もなかった。

すみ子:田舎のおじちゃんたちには、そんな乱暴なことをする勇気はないわ(笑)。捕まったらえらいことになると思うだろうからね。

貢:まあ、いろんな方がいらっしゃいますが、マナーの問題だとは思います。

すみ子:ウチの場合、そういう人も少ないけどね。いたとしても、きっと静かにされてるんでしょうね。

貢:どちらかというとウチは、お年寄りの憩いの場みたいな感じです。仲間同士でここで落ち合って、映画の合間にロビーでおしゃべりしたり。すっかり団欒の場になっています。

――現在、客足はどんな感じなんですか?

貢:いっときよりはお客さまが増えてきた感じはあります。まあ、周りが辞めちゃっている影響もあるでしょうね。愛知県内でも成人映画館は残り数軒という状況だと思います。閉館した劇場のお客さんが、こちらに流れてきているのかもしれません。

――でも「憩いの場」というのは至極納得です。成人映画館でこんな居心地の良さを覚えたのは初めてかもしれません。

貢:うちのマドンナにもファンがいますしね(笑)。ホワイトデーにお客さんからお菓子をもらったりしてますから。

すみ子:おばあさんだから、話しやすいのよ(笑)。これがちょっと若かったり、取っつきにくかったりすると敬遠しちゃうのかもしれんけど。難しいことは分からんけど、世間話ならいくらでも。なんでもペチャクチャ喋るからね。

貢:おかげで助かっとるけどね。

淫靡でありアットホームな空間

――上映中はずっとこの入口のカウンターで、お客さんと歓談されていたり?

貢:そんな感じです。上映中は3作品を1日中かけっぱなしで、機械が自動的に順繰りに回してくれるので。基本的には、なんらかの映写トラブルがあったときに備えて、ここで留守番しています。

――接客上の苦労などは?

すみ子:全然ない!

貢:うちのマドンナは、何か問題が起きても軽くあしらいますから(笑)。「それ、やったらアカンよー」って注意するぐらい。

すみ子:おばあさんだで、あんまりハッキリ言うのも恥ずかしくて(笑)。

――厳しく注意したり、出入り禁止にしたりすることもあまりない?

すみ子:そんな気取った映画館じゃござんせんがね!

貢:アットホームな雰囲気はありますね。そんなに確固たるルールやポリシーを掲げているわけではないですが、お客さまに不快感を与えないように、とは心がけています。常連さん同士、気さくに話ができるような空間ではありたいと思っていますね。「家におっても面白くないな」という人が、気楽に立ち寄っていける場所になれたらいいな、と。

――今後の展望は?

貢:続けられるうちは、このまま続けていきたいですね。ここから何か事業を拡大したり、敷地を拡張したりとか、そういう野望はないです(笑)。皆さまに支えられて、ここまでやらせてもらって、それだけで感謝です。

淫靡だけど平和な、一日中いたくなるような空間……こんな独特のムードのある映画館は、なかなかない。愛知にお越しの際は、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

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鶴城映劇

〒445-0815 愛知県西尾市菅原町60

TEL: 0563-57-2084

◎入場料金:1500円(各月の第2週・第4週はサービス週間で入場料1000円)

◎営業時間は12時〜21時ごろまで。木曜定休。上映作品については劇場にお問い合わせください。

◎名鉄西尾線・西尾口駅から徒歩で約11分。西尾市コミュニティバス「鶴城中西」から徒歩で約5分。静かな住宅街にある映画館なので、マナーは守りましょう。

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