記事のポイントヘイリー・ビーバーはブランド「ロード」を10億ドルで売却し、短期間で大型買収を実現した。ロードはコスメショップ「セフォラ」で過去最大級規模のローンチを達成し、買収後も成長を続けている。創業者依存を抑えた商品設計と起用戦略が、長期的なブランド力を支えている。
ヘイリー・(ロード)・ビーバーにとって、この1年を象徴する最大のヘッドラインは、すでに誰もが知っているだろう。そしてそれは、おそらく2025年のビューティー業界全体にとっても、最大級のニュースだった。モデルから起業家へと転身したビーバーが、自身のスキンケアおよびメイクアップ(さらにスマートフォンケースも含む)ブランド「ロード(Rhode)」を、5月にエルフ・ビューティー(E.l.f. Beauty)へ10億ドル(約1500億円)で売却したのである。ビューティー業界の買収案件が一般層にまで知られることは稀だが、今回の件は例外だった。アリュール(Allure)やグラマー(Glamour)、インスタイル(InStyle)など、多くのメディアが報じ、一般ニュースとして扱われた。ロードは創業からわずか3年でありながら、同カテゴリーにおいて最大かつ最速の買収案件となった。

ロード売却は2025年ビューティー業界最大級のニュースだった

このような大型ディールは、ヘイリーにとっても納得できるものでなければならなかった。「もし売却するなら、この金額だ、という固定の数字をずっと頭の中に持っていた」とヘイリーは語る。「そもそも、買収されるかどうかもわからなかった。ブランドにはさまざまな進路があるし、エルフの話が持ち上がるまで、どの道を選ぶのか自分でもわかっていなかった」。2022年のローンチ以降、ロードはクールガールの必須アイテムとして急速に支持を集めた。ペプチド配合のリップトリートメントは、ペプチドを前面に押し出したリップ製品ブームの火付け役となった。さらに2023年に投入した「グレージングミルク」は、Kビューティーに着想を得た製品として大きな話題を呼び、ミルキートナーが次々と市場に登場する流れを生み出した。

ロードはヒット商品とカルチャー創出で急成長した

2024年に発売された「ロード・リップケース」は、いわば「インターネットを壊した」存在だった。無数のミームを生み、ロードが単なるビューティープロダクトのブランドではなく、カルチャーモーメントを生み出す存在であることを決定づけた。5月中旬、エルフによる買収発表の直前、ロードはセフォラ(Sephora)での展開開始を発表した。実際に店頭デビューを果たしたのは9月のことである。「リテールに出るときは、どう受け入れられるのか、どんな反応が返ってくるのか、まったくわからない」とヘイリーは語る。しかし結果として、ロードはセフォラ北米における過去最大の新規ブランドローンチとなった。業界関係者によれば、ローンチ週末には1秒あたり3点の商品が売れ、最初の2日間で売上は1000万ドル(約15億円)を超えたとされている。

セフォラ展開は過去最大規模の成功を収めた

それでも、ヘイリーは控えめだったのかもしれない。ロードがセフォラに登場する前年、セフォラのサイト内では、ロードに関するユニーク検索数が200万回を超えていたという。「もちろん、ロイヤルで素晴らしいファンベースがあることはわかっていた。でもセフォラに入るということは、まったく新しいフィールドに足を踏み入れることでもある。実際に店頭で商品に触れてもらい、その反応を目の当たりにできたのは、本当にクールな体験だった」と彼女は語る。12月初旬にGlossyのインタビューに応じたヘイリーは、買収から5カ月が経過した現在のロードの立ち位置について「とてもよい感触だ」と話している。特に誇りに思っているのが、製品ローンチのペースだという。

買収後はローンチ間隔を抑え、長期成長を重視

「他ブランドと比べると、我々のローンチ間隔はかなり長い」と彼女は語る。とはいえ、2025年には1月に「ペプチド・リップ・シェイプ」を発売し、6月には「グレージングミスト」、10月には「ペプチド・アイ・プレップ」のアンダーアイパッチを投入した。また、ペプチド・リップ・トリートメントの新フレーバー、ペプチド・リップ・ティントの新色、ポケット・ブラッシュの新シェードも随時追加されている。今後もローンチ間隔は一定に保たれるが、「以前よりもはるかに計画的なタイムラインができている」とヘイリーは言う。「これから先、いくつのローンチを出したいのかが明確になった。以前はアイデアはたくさんあっても、準備が整ったものから出していただけだった。今は自分の考えも整理されていて、何を世に出したいのか確信を持てている。長期的な視点での計画があるというのは、とても心地がよい」。2025年の大型ローンチにおいて、ヘイリーは、ロード成功の鍵だと常に考えてきた戦略を実行した。それは、自身以外の影響力ある人物を起用することだ。

ヘイリー以外の起用でブランドの世界観を拡張

「それが、ブランドの世界観を私個人から広げる方法。誰かがセフォラに入って、ロードが私のブランドだと知らずに手に取る、そんな状態をめざしてきた」と彼女は語る。「同時に、もっと多様な人たちが自分自身をブランドのなかに見いだせるようにしたい。私はすべての人を代表できる存在ではないから」。ペプチド・リップ・シェイプのキャンペーンには、ポップスターのテイト・マクレーを起用した。製品名にちなんで、カラー名をすべて「動き」に関連する言葉にしたことが背景にある。「テイトは動きの表現が本当に素晴らしいダンサー。その流れで自然と話がまとまった」とヘイリーは語る。カラー名には「スピン」「ストレッチ」「ランジ」などが並ぶ。「コンセプトや意味合い、どう世界に伝えたいかを考えるなかで、誰がそれをもっともよく体現できるか、という会話はとても自然に生まれる」と彼女は言う。
グレージングミストのキャンペーンでは、俳優のハリス・ディキンソン氏を起用した。「ブランドがこうした形で広がっていくのを見られるのは、とてもやりがいがある。才能があってクールな人たちが、ロードの世界に参加したいと思ってくれるのは、本当にうれしい」。すでに一度の「出口」を経験したとはいえ、ロードへの関与が弱まることはない。それはディールの前提条件でもあった。

売却後もブランドへの深い関与は変わらない

「関与が減るなら、絶対にやらなかった」と彼女は断言する。「むしろ、もっと深く関わりたかった。私のDNAはブランドの一部であり、それを手放すことは想像できない」。エルフでは、ヘイリーはチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務め、エルフ・ビューティー全体のアドバイザーも兼任している。同社のポートフォリオには、エルフ・コスメティクス、エルフ・スキン、ナチュリウム、ウェル・ピープル、キーズ・ソウルケアが含まれる。今後については、ロードのロゴ入りニキビパッチの登場が予告されている。「今まで使ったなかで一番よいニキビパッチだと、自信を持って言える。完成までに時間はかかったけれど、その分、最高の形に仕上がった。もっと早く出していたら、ここまでのものにはならなかったと思う」。

自然体の思想を貫き、進化を続けるロード

次なる「グレーズドスキン」や、ミーム化するようなプロダクトを生み出すプレッシャーについて問われると、ヘイリーは冷静にこう語った。「これまで出してきたものはすべて、自分自身が本当に好きで、必要だと感じたものの延長線上にある。それはこれからも変わらない。ただ、よりよいプロダクトを作り続け、限界を押し広げ、処方やイノベーションの面で進化し続けたい」。そしてこう続ける。「常に自分たちを超えていきたい。そこには健全なプレッシャーはあるけれど、重苦しい不安はない。ブランドの根幹にあるのは、すべてが自然でシームレスに感じられること。その流れを、これからも大切にしていきたい」。[原文:Hailey Bieber on growing Rhode under the E.l.f. Beauty umbrella]Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)