苦しむ代替肉企業。牛肉50%、植物肉50%の「ハイブリッドバーガー」は成功する?
牛肉50%、植物肉50%……成功の確率は何%?
代替肉製品を手がけるBeyond Meat(ビヨンド・ミート)は2019年、「植物由来の人工肉バーガーこそ肉の未来になる」と胸を張って上場しました。そして今、未来になったわけですが、アメリカの健康政策「MAHA(Make America Healthy Again=米国を再び健康に)」によって生まれたビーフタロー(牛脂)や生乳ブームに押され、代替肉市場はかつての勢いを失っています。
ニュースメディアのSemaforによると、代替肉を製造・開発するImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)のCEO、Peter McGuinness氏は世界経済サミットでこう語りました。「代替肉市場が失敗した原因は、巨大食肉産業に対抗する環境に優しい代替品として全面的に打ち出したことにある」と。彼いわく、業界がマーケティングを間違えた結果、高級ベジバーガーが文化戦争に巻き込まれてしまったといいます。要するに、代替肉は“美徳シグナリング(自分が道徳的に良い人間であるとアピールすること)”に過ぎず、肉を食べる人たちの共感を得られなかったわけです。
“ハイブリッドバーガー”で再出発
こうした状況の中、McGuinness氏は肉の分断を癒すバーガーがあると考えています。それが、牛肉50%、植物由来の肉50%でできたその名も“ハイブリッドバーガー”です。
あまりにシンプルなアイデアなので、「本当に考え抜いたの?」「誰のためにもならない微妙なアイデアでは?」と思われてしまいそうですが、McGuinness氏はこう言います。
肉を食べる人たちがそれを食べてみて気に入ってくれたら、成功だと思っています。
代替肉の当初の目的は、肉を食べる人たちに選んでもらうことでした。ヴィーガンやベジタリアンの人たちはそもそも肉を食べないので、わざわざ肉っぽい食感で騙す必要なんてないからです。そうでなければ、血が滴るバーガーを作る必要もないですよね。
2019年のブーム期、代替肉を買っていた人の大部分は、食生活を変えようとしている肉食者でした。そして、代替肉バーガーを食べていた人の90%は、ベジタリアンやヴィーガンといった食生活にこだわっているわけではありませんでした。ニールセンのデータによると、代替肉購入者の98%は肉も買っており、単にいろいろな選択肢があることを楽しんでいただけだったのです。
結局、本物の肉には勝てなかった
新しさは一時的にウケたものの、そこから肉食者を代替肉に本格的に切り替えさせることには失敗。2022年の調査では、植物由来の肉を1回以上買った人は、代替肉を初めて購入した後、むしろひき肉の購入量がわずかに増加したという結果も出ています。
代替肉に完全に切り替えてもらうには、ライフスタイルの変化が必要となります。でも、植物由来の製品は本物の肉より高価なことが多く、節約にはなりません。となれば、道徳観や価値観に基づいて切り替えてもらうことを期待するしかありませんが、それだけで市場を維持するのは難しいでしょう。
健康食品として位置づけようとする試みも失敗。研究が進むにつれ、植物由来のパティは砂糖やナトリウムを多く使っており、本物の肉に含まれる重要な栄養素が不足していることが明らかになりました。
代替肉企業に突きつけられた厳しい現実
既存のヴィーガンやベジタリアン、そして最近それらに転向した人たち以外にも、植物由来の肉を受け入れてくれる層はおそらく存在します。ただ、代替肉大手企業が現状を打破するのは簡単なことではなさそうです。
というのも、インポッシブル・フーズはいまだ黒字化できておらず、完全売却の可能性もあるとCEOのMcGuinness氏が明かしています。競合のビヨンド・ミートも負債削減のための取引を終えたばかりで、取引後に株価は1ドルを下回り、2019年のIPO直後に記録した250ドル近いピークから大幅に下落しています。
肉を食べる人たちからは、「ハイブリッドバーガーを作らなくても、肉のバーガーか植物由来のバーガーか、気分でどちらか選べばいい」という声も聞こえてきそうです。でも、もしその日が“どっちも食べたい日”なら? いよいよハイブリッドバーガーの出番、ということになるのでしょうか。
