最近トレンドとなっている耳にひっかけるオープンイヤー式イヤホン(筆者撮影)

アンカー(Anker)は2011年に中国で設立されたメーカーで、わずか10年で世界一のモバイル充電ブランドに成長した。日本法人のアンカー・ジャパンは2013年設立、こちらも急速な事業拡大を遂げた。2023年度の売上高は494億円に達し、前年比41%増を記録している。

特にモバイルバッテリーや充電器カテゴリーでは、国内累計販売数3000万個を突破。同社によると日本市場ではモバイルバッテリー、ケーブル、スマホ充電器でトップシェアにあるという。

成長が著しいオーディオブランド


ノイズキャンセリング性能の高さが特徴のSoundcore Liberty 4 シリーズ(筆者撮影)

充電関連製品で高い評価を得る一方、複数のサブブランドも展開している。中でもオーディオブランドのSoundcore(サウンドコア)は成長が著しい。

アップルやソニーなどの強豪がひしめくイヤホン市場において、Soundcoreは単月販売シェア1位を獲得。耳たぶに挟むように装着するオープンイヤー型のイヤホンというジャンルの開拓を進めている。

フラッグシップモデルのSoundcore Liberty 4シリーズも20万台を販売するなど好調。高音質を司るデュアルドライバー、LDACコーデック対応など、最新の技術が惜しみなく投入されている。耳に着けてみると、周囲の騒音はほとんどシャットアウトされ、驚くほどの静寂が広がる。

新製品「Soundcore Liberty 4 Pro」(1万9800円)は気圧センサーを搭載し、飛行機でも変わらないノイズキャンセリング性能を実現。充電ケースに液晶パネルを備え、アプリなしでサウンド調整が行える。

家電ブランドEufyからは、ユニークな製品「Eufy Robot Vacuum 3-in-1 E20」がお披露目された。ロボット掃除機ながらサイクロン方式で、最大30000Paの吸引力を実現している。


 3タイプで使えるロボット掃除機(筆者撮影)

Eufy Robot Vacuum 3-in-1 E20の興味深い点は、ロボット・スティック・ハンディ掃除機の機能を“1台”まとめたことだ。ロボット掃除機から吸引機構だけを取り外し、パイプとヘッドを取り付けるとスティック掃除機に早変わりする。ロボット掃除機を導入する家庭でも、スティック掃除機を併用することが多いというユーザー調査に基づいて開発されたという。


ロボット掃除機の吸引機構を取り外してスティック掃除機としても使える(筆者撮影)

ポケモンとのコラボレーション

アンカー・ジャパンは、他社とのコラボレーションも積極展開している。

ポケモンとのコラボレーションでは“ピカチュウ”デザインの充電製品4種を発表。「でんきタイプ」のピチュー、ピカチュウ、ライチュウという3種のポケモンを充電器に取り入れ、2023年から展開している。


 ポケモンとコラボした充電製品群(筆者撮影)

アウトドアブランドのスノーピークとは、ガス燃料缶を模したデザインのモバイルバッテリーを共同開発。長寿命で安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、一般的なモバイルバッテリーと比べ約4倍の充放電サイクルを実現している。スノーピークの「ギガパワーランタン」と接続可能で、照明としても利用できるといった連携機能もある。

両社は2025年に向け、アンカーの「Solix」シリーズをベースにした大容量ポータブル電源とソーラーパネルの開発もアナウンスしている。


スノーピークとのコラボでは、ソーラーパネルと電源をキャンプ用品として訴求する(筆者撮影)

また、文具メーカーのコクヨとは「Anker Smart Pouch」を共同開発。アンカーのスマホ周辺機器を収納するために開発されたポーチで、モバイルバッテリーや完全ワイヤレスイヤホンがすっきりと入るようにインナーポケットが配置されている。フラップ部分を手前に折り曲げて自立させることもでき、整理整頓しやすい製品となっている。


多数の内ポケットを備えていて、スマホの充電器などを格納できるAnker Smart Pouch(筆者撮影)

AIを広告制作に活用

アンカーはAI技術の活用もアピールしてる。ユーザーからの問い合わせ対応にはChatGPTベースの「Anker AI Assistant」を導入。問い合わせ対応を効率化し、1年で10万件に対応したそうだ。

広告制作でも画像生成AIを活用している。イヤホン製品の利用シーンの画像については、現実のモデルではなく非実在のモデルを活用。画像生成時に展開地域にあわせた想定ユーザーが描かれている。


製品の利用イメージ画像には画像生成AIを活用。展開地域にあわせたモデルを合成している(筆者撮影)

モバイルバッテリーから始まったアンカーのフィールドは、家電、オーディオ、アウトドア用品にまで広がった。ユーザーニーズを捉えた製品開発と戦略的コラボレーションにより、同社は日本市場でも独自のポジションを築きつつある。生活のあらゆる場面で活躍するテクノロジーカンパニーとして、より身近な存在となっていくのではないか。

(石井 徹 : モバイル・ITライター)