「光る君へ」藤原道長よ…妻の実家で元カノと何やってんの!第36回放送(9月22日)振り返り

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五十日儀(いかのぎ)の宴席で、まひろ(藤式部。吉高由里子)が藤原公任(町田啓太)と向かい合っているのを嫉妬したのか、自分の元に呼び寄せた藤原道長(柄本佑)。

周囲に対して「自分の女だ」とアピールする如くまひろと歌を交わしたことで、源倫子(黒木華)と赤染衛門(凰稀かなめ)の顔から笑みが消えてしまいます。

「左大臣様と藤式部は、どのようなお仲なのですか?」赤染衛門に問い詰められる場面で幕を閉じた第36回放送「待ち望まれた日」。果たしてまひろはどのように切り抜けるのでしょうか。

大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

女房たちの嫉妬をものともせず、藤原彰子(見上愛)の信頼を一身に受けながら無事に皇子出産を見届けたまひろ。彼女がいる限り、道長の望月政権は安泰と思われます。

それでは今週も、気になるトピックを振り返っていきましょう!

第36回放送「待ち望まれた日」略年表

中宮・藤原彰子(左)に『新楽府』を講義する紫式部(右)。好きな人に少しでも寄り添いたい中宮の想いに、紫式部もやる気満々。でも、見つからないように……『紫式部日記絵巻』より

寛弘5年(1008年)まひろ39歳/道長43歳

2月8日 花山院が崩御する。享年41歳4月13日 藤原彰子が出産のため土御門第へ里下りする5月25日 媄子内親王(藤原定子の次女)が薨去。享年9歳9月9日 彰子が産気づく9月11日 敦成が誕生する9月15日 お祝いの和歌「めづらしき 光さしそふ……」など試作10月16日 一条天皇が土御門第に行幸
同日 敦成に親王宣下、別当は藤原斉信に11月1日 五十日の儀でてんやわんや

今回は彰子の出産がメイン。安産祈願と五十日儀の場面は『紫式部日記』の記述をありありと再現していました。

敦成親王の誕生で、にわかに危うくなる敦康親王(渡邉櫂)の立場。これまで道長に懐いていましたが、手のひらを返したように確執を深めていく様子が描かれることでしょう。

また初登場の敦明親王(阿佐辰美)も、これから道長によってもたらされる悲運に気づいてはいないようです。

ひっそり世を去った媄子内親王

幼くして世を去った媄子内親王(イメージ)

彰子懐妊で期待ムードが高まる中、一条天皇(塩野瑛久)の第二皇女であり、藤原定子(高畑充希)の遺児である媄子内親王(びし/よしこ)がわずか9歳で薨去しました。

一条天皇はもちろん、姉の脩子内親王(井上明香里)もその死を悲しむ様子が『栄花物語』に描かれていますが、劇中では誰からも顧みられず寂しい最期を迎えた雰囲気になっています。

つるばみ色の喪服に身を包む藤原伊周(三浦翔平)とききょう(清少納言。ファーストサマーウイカ)。一条天皇の心変わりを嘆くと共に、その御心を奪ってしまった物語の作者・まひろに対してドス黒い感情を抱くのでした。

ちなみに清少納言がまひろ(藤式部)に対してライバル意識を持ったという記録はなく、定子の崩御後は宮中を去って歴史の表舞台から姿を消します。

が、本作においてはまひろを嫉妬するかませ犬として描かれ続けるのでしょう。

亡き定子の闇を描く『光る君の物語』を読んで、彼女はどんな感想を持つのでしょうか。

本作の清少納言は素敵な女性だったのに、嫌なヤツに改変されたら嫌ですね。

藤原公任「若紫はどこですか?」実際はノーコメントだった、賢い藤式部

五十日の儀における乱痴気騒ぎ。『紫式部日記絵巻』より

左衛門督、「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ」と、うかがひたまふ。

源氏に似るべき人も見えたまはぬに、かの上はまいていかでものしたまはむと、聞きゐたり。

※『紫式部日記』より

【意訳】左衛門督(さゑもんのかみ。公任)がやってきて「恐れ入りますが、こちらに若紫さまはいらっしゃいませんか?」と尋ねられた。

『源氏物語』作者である藤式部がいることを知ってのジョークなのは解るが、面白くない。

内心「光る君(光源氏)そっくりの美男子もいないのに、そのパートナーである若紫がいる訳ないでしょう?」と思って聞き流した=無視したのだった。

……劇中では公任が「若紫のような美女はいないか」と余計な一言(ハラスメント発言)を発したために、まひろが真っ向からガン飛ばして「光る君のような美男子がいない≒当然お前も美男子ではないのだから若紫がいる訳がない」とやり返すアレンジとなっています。

史実の方が気が利いているし、わざわざ公任にハラスメント発言をさせ、それに反撃する描写を入れるのは少々野暮に感じました。

こういう男女の対立や男性をやり込める強い女性像が好きなのでしょうね。

望月の歌まで、まひろがキッカケ?

紫式部(左上)を訪ねる藤原道長。『紫式部日記絵巻(旧久松家本)』より

この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の
欠けたることも なしと思へば

※藤原実資『小右記』より

【意訳】この世は私のものだと思う。欠けるところのない満月のような、この私の……。

娘たちを次々と入内させ、権力の絶頂を極めた道長が後に詠んだ「望月の歌」。

※本人は黒歴史と思って日記に書きませんでしたが、藤原実資(秋山竜次)によって書かれてしまいました。実資GJ!

今回まひろが詠んだ二首の和歌が、道長を触発?したのかも知れません。

めずらしき 光さしそふ さかづきは
もちながらこそ 千代もめぐらめ

※『紫式部日記』寛弘5年(1008年)9月15日条

【意訳】盃に満たされた酒は、欠けることなく輝く満月のようです。若宮の栄光が永遠に続くことを暗示しているのでしょう……。

いかにいかが 数へやるべき 八千歳(やちとせ)の
あまり久しき 君が御代(みよ)をば

※『紫式部日記』寛弘5年(1008年)11月1日条

【意訳】どうやって数えたらよいのでしょうか。八千年≒永遠に生き続けて欲しいと願うあなた様の生命を……。

ここで言う「君」とは、五十日儀を祝う敦成親王ですが、本作では親王にかこつけて道長への愛を詠んだ設定になっているものと推測します。

欠けることなく満たされた、永遠なる存在。まひろにとって、それは道長をおいてありませんでした(あくまで本作の設定です)。

9月15日に「(この和歌を)覚えておこう」と言った道長は、後に「我が世をば……」と詠むという展開を予想します。

ホント、現妻の実家に元カノを連れ込んで何をやってるんでしょうね。

第37回放送「波紋」

中宮・彰子(見上愛)が一条天皇(塩野瑛久)の皇子を出産し、まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)は喜びを分かち合う。そんな二人の親密さがうわさになる中、彰子がまひろの書いた物語を冊子にして天皇への土産にしたいと言いだす。そこでまひろを始め、女房たちが力を合わせて豪華本を制作することに。一方、新たな皇子の誕生により、伊周(三浦翔平)らの思惑が外れ、皇位継承を巡る不穏な気配が漂い、内裏で事件が起こる。

※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより。

とまぁそんな具合に、てんやわんやあって皇子が誕生した訳ですが、道長とまひろは要らん揉めごとの波紋を広げたのでした。静かな水面に一石を叩き込んだようです。

こんなに何でもかんでもまひろまひろばかりだと、左衛門の内侍(菅野莉央)ならずとも周囲の女房たちが嫉妬するのも無理はありません。

もっと静かに暮らすため、おっとりキャラを演じた史実の藤式部はどこへ行っちゃったんでしょうか。

ともあれ次週37回放送「波紋」、楽しみにしています!