●プロデューサー語るキャストの起用理由と魅力

現在放送中のTBS系火曜ドラマ『ファイトソング』(毎週火曜22:00〜)もいよいよ佳境に突入。それぞれの心に秘めた思いが回を増すごとにより感情的に描き出されてきているが、主演の清原果耶をはじめ、間宮祥太朗、菊池風磨らメインキャストたちが、現場で生み出すセッションによって、物語が大きく躍動しているという。本作の武田梓、岩崎愛奈両プロデューサーに、絶妙なハーモニーを奏でるキャストたちの起用理由や、実際現場での彼らを見て感じたことを聞いた。



毎回話題作を世に送り続けている「TBS火曜10時枠」。2022年1月クールで放送されている『ファイトソング』は“ヒューマンラブコメ”というキャッチフレーズのもと物語が展開している。主役を務めるのは、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』放送後、最初の連続ドラマ出演となる清原だ。

「若い年齢の女の子を主人公にした恋愛ドラマという企画があがったのですが、そのなかでも、いままでの火曜10時の枠にあった王道的なラブコメとは、いい意味で違う流れのものを作りたいという思いがありました。脚本も岡田惠和さんに決まっていましたし、若いけれどしっかりとお芝居ができて説得力を持たせられる人……と考えたとき、清原さんなら期待をしてもきちんと応えてくれるだろうと思ったんです」(武田P)。

そんな清原演じる木皿花枝が、心のよりどころにしていた歌の作者である一発屋のミュージシャン・芦田春樹に扮するのが間宮だ。

「芦田という役はすごく難しいキャラクター。リアルさと、エンターテインメントとして成立させる、両方のバランスをしっかり演じられる人という視点でキャスティングをしました。そのなかで、間宮さんはどちらもお上手な印象があったのでお願いしました。実際、芦田を演じるバランスは素晴らしいです」(武田P)。



○■菊池風磨の瞬発力ある演技に「助けられています」

そしてもう一人、物語に推進力を与える大切な役柄が花枝の幼なじみであり、彼女を一途に思う男性・夏川慎吾。演じるのはアイドルグループ・Sexy Zoneの菊池だ。

「慎吾というキャラクターは割と岡田さんの脚本段階で固まっていました。脚本にもオレンジの髪色というのもすでに書かれていたので、単純にハマりそうなキャストは誰だろう……という視点で探していました。慎吾はメチャクチャいい奴だし、主人公に片思いしていることも隠さずどんどんいくキャラ。菊池さんにピッタリなのかなと思ってお願いしたのですが、現場で見ていても、期待通りというか、期待以上です。もう台本から出てきたみたいにハマっています」(武田P)。

そんな菊池のパワーは現場でも大きな相乗効果をもたらしているという。共演者からも、菊池がもたらす現場で生まれるアドリブ的な瞬発力を活かした演技は称賛されていた。

「クランクインの日から、ハウスクリーニングをしているモンタージュみたいなシーンの撮影をしたのですが、監督から『アドリブで歌いながら掃除して』とオーダーがあるぐらいノリノリで。その瞬間に慎吾というキャラができあがりました」(武田P)。

岡田の脚本には「ご機嫌で掃除をする」というようなト書きだったと言うが、菊池はその場でアレンジし、天真爛漫な慎吾を作り上げた。その後の脚本には「キャバクラの歌を慎吾が歌う」というフレーズが書かれているなど、岡田の脚本も菊池の瞬発力を生かしたものが多々見受けられたという。

「菊池さんが率先してアドリブをやることで、みんなが引っ張られて盛り上がる……みたいな現場になっています。変な言い方かもしれませんが、菊池さんにはとても助けられています」(武田P)。

●岡田脚本の魅力 オンエアを見て反映されるシーンも



数々の名作を世に送り出してきた岡田脚本。本作でも花枝と芦田の恋愛を軸に、彼らの周りに集まる人々の深い思いを丁寧に描いている。

「ムチャクチャ共感できます。清原さんも、第4話で花枝が芦田にキスされそうになったとき、パンチで撃退したあと『そういうの、女の子がみんな喜ぶと思ったら大間違いですからね』というセリフにすごく共感できると話されていました。ただの胸キュンではないというか、しっかりと流されずに意見を言えるキャラクターを作っていただいているなと思っています」(武田P)。

「セリフに優しさや愛情が溢れているなと感じる瞬間がたくさんあります。積み重ねてきた思いがあるからこそ、口から発せられるセリフというか……。言葉に背景が感じられるので、共感できるのだと思います」(岩崎P)。

染み入るような言葉を紡ぎ、キャラクターたちに感情移入できる脚本。一方で、連続ドラマならではの、オンエアを観て変化していった部分もあるという。

「岡田さんがオンエア後、ドラマの感想を送ってくださるんです。そのなかで、第4話で芦田がムササビの真似をして飛ぶシーンがありましたが、あれは間宮さんがご自身で考えたものなんです。岡田さんがそれをすごく面白がってくださって、キャンプ場のシーンで、芦田がまたムササビの真似をするのですが、オンエア翌日ぐらいにあがってきた脚本に書いてありました。慎吾の歌も基本的には脚本にないので『メチャクチャ面白いですね』と言ってくださっています」(岩崎P)。



○■間宮祥太朗の歌声に製作陣も驚き「衝撃を受けました」

劇中、芦田が歌う姿も本作の大きな魅力となっている。間宮の歌声は、視聴者からも大きな反響があったが、製作側にも新鮮な驚きがあったという。

「朝ドラで歌っている姿を拝見したり、楽器をやられているのも存じ上げていたのですが、あそこまで素敵な声をお持ちだったとは……という驚きがありました。最初一発屋のミュージシャンという設定だったので、正直歌がダメだったら、歌唱シーンがなくても成立させることはできるかなと思っていたんです。ただ事前に歌声を聞かせていただいたら、とても素敵だったので、これならばぜひお願いしたいという形になりました」(武田P)。

「私も視聴者の方と同じぐらい衝撃を受けました。声質の良さに加えて、俳優さんならではの表現力が歌に加わって、すごく心を動かされました」(岩崎P)

また第1話では、芦田が花枝にピアノの弾き語りで曲を歌う場面がある。あのシーンには強いこだわりがあったという。

「間宮さんはギターが得意ということで、ギターの弾き語りというアイデアもあったのですが、ピアノだと構図的に、花枝に背を向けて弾くことができるので、それをやりたいなと。花枝の顔を見ずに、彼女の背中を押すという、ちょっと不器用な感じが出ればなという思いがありました」(武田P)

主人公は大きな挫折を経験しているが、まだ21歳の女の子。武田プロデューサーは「これからなんでもできるし、恋だけが人生ではない」というなか、敢えて積極的に恋をしていこうと思うところが、本作の狙いだという。

だからこそ花枝をとりまく周囲の人間が魅力的である必要がある。そんな思いを込めたキャラクターたちが、ラストに向けて懸命に生きていく。「まだどう着地するのか決まっていないんです」と武田プロデューサーは笑うが「登場人物すべてが幸せになれるような結末にしたいです」と展望を語っていた。

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