サムスン電子は9月2日にオンラインイベントを開催し、2020年後半に向けたテレビやウェアラブルデバイス、ホームアプライアンスの新製品を発表しました。屋外に設置して迫力の大画面シアターが楽しめる防水対応4Kテレビ「The Terrace」シリーズなど、ユニークな製品が盛りだくさんです。

例年であればこの時期にサムスンは、ドイツ・ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」に大規模なブースを出展して、その年の後半に世界各国で発売するコンシューマーエレクトロニクスの新製品を一堂に紹介します。2020年は新型コロナウィルスの影響によって、IFAへの出展を見送った代わりに、バーチャルイベント「Life Unstoppable」を実施。各新製品をオンラインで体験できる機会を設けました。イベントは「Life Unstoppable」特設サイトで一般公開も行われています。

オンラインでサムスンの新製品が体験できるイベント「Life Unstoppable」を開催


ここでは、サムスンがオンラインイベントで発表した数々の新製品を振り返ります。

○4K超短焦点プロジェクターやテラスで楽しめる“防水”大画面テレビなど、充実のホームシアター製品群

新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐため、世界中の家庭でいわゆる「巣ごもり需要」が高まっています。これを受けて、サムスンも家の敷地内で楽しめるホームシアター製品を大幅に充実させてきました。

まず「The Premiere」は、壁面スクリーンから短い投射距離で120〜130インチの大画面を投影できる超短焦点レンズのホームシネマ用プロジェクターです。HDR規格は最新のHDR10+もサポートし、4K画質の映像を投射できるほか、ビームフォーミング対応のサウンドバーと重低音再生用のウーファーをコンパクトな本体に内蔵しました。ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインをはじめとする欧州諸国にて、2020年内に発売を予定しています。

超短焦点レンズを搭載する4Kホームプロジェクター「The Premiere」


サウンドバーやウーファースピーカーを内蔵しています


続いては、アウトドア対応4Kテレビ「The Terrace」と、サウンドバー「The Terrace Soundbar」です。欧州では特に、自宅のテラスに家族が集って過ごす時間が増えていることを受けて、サムスンはIP55相当の防塵・防水対応を施した「The Terrace」と、「The Terrace Soundbar」を商品化しました。

テレビには反射防止処理を施した4K液晶パネルを搭載。75・65・55インチの3サイズをそろえ、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、イギリス、スイスに展開します。「The Terrace Soundbar」は、視聴中のコンテンツに合わせて音質を最適化するアダプティブサウンド機能を搭載します。

屋外に設置して楽しめる防塵・防水対応のテレビ「The Terrace」


75・65・55インチの3サイズ展開


「The Sero」は、2020年のCESにも展示されていた、スマホのように画面を縦横90度回転表示できる4Kテレビです。スマホのGalaxyシリーズとWi-Fi経由で接続すると、スマホからキャストしている動画コンテンツの縦横表示に合わせて、The Seroのディスプレイが自動で回転します。

本体には4.1ch対応のサウンドシステムも内蔵。サムスンは「個人撮影の動画など、スマホのために最適化されたタテ表示のムービーや写真を、高精細に楽しめるテレビ」として魅力をアピールしています。

スマホ感覚で縦横表示の動画が気軽に楽しめる4Kテレビ「The Sero」


バーチャルイベントの中でディスプレイが動く様子を紹介しています


そして8K液晶テレビは、こちらも2020年のCESで披露したフラグシップの「Q950」シリーズを、欧州で発売することが明らかにされました。ディスプレイの画面占有率を99%にまで高めて、ディスプレイ部の厚みを15mmと薄型化しました。本機にベストマッチするドルビーアトモス対応のサウンドバーとして発表された「HW-Q950T」と「HQ-Q900T」は、テレビのスピーカーと連動して迫力のサラウンド体験を提供する立体音響技術「Q-Symphony」を搭載します。

8K液晶テレビのフラグシップモデルQ950シリーズ


Q950シリーズのテレビとベストマッチするサウンドバー「HW-Q950T」


ほかには、HDR10+に対応するゲーミング用ディスプレイ「Odyssey」シリーズから、240Hz倍速駆動に対応する曲面ディスプレイ仕様の「Odyssey G5」が発表されています。

○5G対応ミドルレンジスマホ「Galaxy A42 5G」

モバイルカテゴリーでは、既に先行開催された新製品発表会で大物スマホ「Galaxy Z Fold2」や「Galaxy Note20」シリーズが発表済みです。今回のイベントでは、ミドルレンジの5G対応スマホ「Galaxy A42 5G」が発表されました。2020年後半に発売を予定しています。ディスプレイは6.6インチの有機ELで、背面にはクアッドカメラを搭載しています。

ミドルレンジの5Gスマホ「Galaxy A42 5G」


フィットネス機能が充実するアクティビティトラッカー「Galaxy Fit2」も発表されました。フル充電から連続約25日間も駆動するというスタミナ設計が特徴。睡眠スコアの計測機能などを搭載するほか、70種類以上のフェイスデザインを選んでカスタマイズが楽しめます。

睡眠スコアリングなど様々なアクティビティやフィットネストラッキングに対応する「Galaxy Fit2」


タブレットは10.4インチの「Galaxy Tab A7」を新製品として発表。画面占有率を高めたスクリーンと、ドルビーアトモスの立体オーディオ再生に対応する4基の内蔵スピーカーによる迫力あふれるエンターテインメント視聴が楽しめるタブレット。子ども向けのオリジナルコンテンツ「Smasung Kids app」を充実させて、リモート教育にも最適なデジタルデバイスとしてアピールしています。

10.4インチのタブレット「Galaxy Tab A7」


ほかにも、ワイヤレス充電ステーション「Wireless Charger Trio」が発表されました。Qiによるワイヤレス充電に対応するサムスンのスマホや、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンを同時に充電できます。アップルが開発中とウワサされている「AirPower」を意識したデバイスのようです。

3種類のGalaxyスマートデバイスを同時に充電できる、Qi対応ワイヤレスチャージステーション「Wireless Charger Trio」


○ホームアプライアンスのテーマは「オーダーメイド」

サムスンは本国の韓国だけでなく、欧州でも人気の高いホームアプライアンス(白物家電)のブランドです。IFAでは過去、ドアの表側にタッチ液晶ディスプレイやスピーカーを内蔵して、Wi-Fiに接続すればエンターテインメントコンテンツのストリーミング再生も楽しめる冷蔵庫を発表して話題を呼びました。現在もそのラインナップはフラグシップモデルとして販売を継続しているものと思いますが、今回のイベントでは少しテイストの違う冷蔵庫の新製品「Bespoke」を発表。10月に欧州で発売を予定しています。

カスタマイズ性を特徴としてうたうサムスンの冷蔵庫「Bespoke」


「モジュラー方式の冷蔵庫」を特徴にうたうBespokeは、キッチンのインテリアに合わせて本体パーツの素材や色をカスタムオーダーできるプレミアム製品です。シングルドアから4ドアのラインナップをそろえ、4色のカラーバリエーションからオプション展開をスタートします。

同じく冷蔵庫の新製品「RB7300T Classic」シリーズでは、奇をてらうことなく「大容量なのにスリムなデザイン」を追求しています。昨今はウィルス感染症の影響を避けるため、食料品を買うために外出する頻度を減らして、一度に大量の食材を買い込む生活パターンが欧州でも定着しつつあることを受けて登場するシリーズです。冷蔵庫内の間仕切りを有効に活用する「SpaceMax」の設計技術によって、最大サイズのモデルでは容量385リットルを実現。運転時に消費する電力を徹底的に減らすことにも注力しています。

筆者は毎年IFAを取材していますが、一昨年ごろから欧州の白物家電リーディングブランド(サムスンやLGエレクトロニクス)から、洗濯機と乾燥機を分けた「プレミアムクラスのランドリー家電」が次々に発表されています。

サムスンは「WW9800T Washing Mashine」と「DV8000T Tumble Dryer」を、2020年の新製品として発売。特徴はAIによる機械学習機能です。ユーザーの好みの洗い方設定や習慣を学習して、最適なプロファイルを自動作成。Auto Cycle Link機能によって洗濯機と乾燥機が連動して、消費電力を抑えながら汚れをしっかりと落とします。洗濯機は、サムスンの独自技術「EcoBubble」対応です(洗剤を泡にして洗うことで汚れを効率よく落とす技術)。欧州の洗濯機としては珍しく「お湯ではなく水」を使って、衣類のしつこい汚れを落とせることを特長としてうたっています。

AI連携によるスマートな洗濯乾燥を実現するWW9800T Washing Mashine(左)、DV8000T Tumble Dryer(右)


洗濯機の内蔵センサーによって、衣類の容量や泥汚れのレベルを検知


今回、サムスンが開催したLife Unstoppableイベントは、バーチャル空間の中にサムスンの家電製品を置いて、擬似的に体験させる工夫などが随所に凝らされていました。それぞれの製品の楽しみ方を、ARによる製品のタッチ&トライも織り交ぜながら、バーチャルとしてやれることをやった印象です。

Galaxy Z Fold2のAR体験も楽しめます


2020年は新型コロナウィルスの影響によって、エレクトロニクスをテーマにした数々のイベントや展示会が中止を余儀なくされてきました。サムスンのバーチャルイベントは完成度がとても高く、手に取って触れることのできない製品のイメージや使い勝手を、リアルに喚起させてくれる仕掛けも盛り込まれていました。サムスン以外の各社も、同じようなスタイルで新しい展示会やイベントのスタンダードを確立していくのでしょうか。記者としても色々なことを考えさせられる、とても興味深いバーチャルイベントでした。