国民年金の加入義務は20歳から60歳まで。「40歳」はその折り返し地点。少しでも老後の年金を手厚くするにはどうしたらいいのか(写真:syogo/PIXTA)

読者の皆さんは、現在の生活が順調でも「計画どおり貯金ができているし、もう老後は大丈夫……」などという人はほんのひと握りで、「老後破綻もひとごとではない」という人が大半ではないでしょうか。

老後に不安を抱える人が頼りにしたいのは「年金」ですが、では、いつから受け取れるか、どれくらいもらえるのか、ちゃんと知っていますか? 大台の「40歳」を過ぎているのに「全然わからない」となれば、本当に老後破綻してしまうかもしれません。どれくらいの期間で保険料を納めたのか、それが違うだけでも生涯もらう年金額が変わってくるからです。

「国民年金」の加入義務があるのは、20歳から60歳までの40年間です。20歳から20年経った40歳はその中間点。サッカーの試合にたとえるなら、40歳時点は「前半終了のハーフタイム」なのです。このハーフタイムで前半の年金加入について振り返り、後半の20年の年金加入と老後の受給を考えなくてはいけません。今回は、そのポイントを整理してお話しします。

40歳までの「前半戦」で納めた期間を確認する

40歳時点で、被保険者として国民年金に加入しているとして、まず押さえておきたいのは、その種類です。国民年金の被保険者には3つの種類があります。

まず、自営業者とその配偶者、厚生年金の加入対象とならない短時間非正規社員、学生などは「第1号被保険者」です。厚生年金被保険者にもなる会社員・公務員は「第2号被保険者」となります。そして「第2号被保険者」の被扶養配偶者(専業主婦など)は「第3号被保険者」となります。

20年前にはなかった「ねんきん定期便」が毎年誕生月に送られるようになり、自分の年金加入記録を確認できるようになっています。手元にあれば確認してください。年金加入記録により将来の年金額も変わる仕組みになっていますが、加入義務がある20歳から60歳までのうち、40歳までの「前半戦」の20年間で、どれだけの期間で、いくら保険料を納めたでしょうか。あるいは納められなかったでしょうか。

被保険者としての年金加入記録が将来に受ける年金を左右するわけですが、受給できる年金の種類としては老齢年金、障害年金、遺族年金があります。今40歳の人の将来の老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)については、現行制度上、65歳支給開始です。まだまだ先だと思うかもしれませんが、いずれ65歳になると受けられることになります。

国民年金制度から支給される老齢基礎年金は、保険料を納めた期間が40年(480カ月)あれば満額(2020年度:年間78万1700円)で受給できますが、受給するためには受給資格期間が最低10年以上必要です。一方で、厚生年金保険制度からの老齢厚生年金を受給するためには、厚生年金加入期間も必要となります。

最低10年以上必要とするその受給資格期間というのは、保険料を納めた期間(保険料納付済期間)、保険料の免除を受けた期間(保険料免除期間)、さらに合算対象期間(カラ期間)を指します。

厚生年金保険料が給与等から控除される第2号被保険者と保険料の負担のない第3号被保険者の場合、当該被保険者としての加入期間はそのまま保険料納付済期間として計算されますが、第1号被保険者は自分で毎月の国民年金保険料(2020年度:月額1万6540円)を納めないといけません。納付義務があるのにそのまま放置して納めていないと未納期間となり、受給資格期間にはなりません。

40歳時点でこれらの受給資格期間は満たしているでしょうか。前半20年間のうち、ほとんど保険料納付済期間であるような人であれば、まずは将来老齢年金を受給する資格はあります。

あとは後半20年もしっかり納めるかどうかで年金額が変わることになります。しかし前半20年のうちに未納期間が多く、受給資格期間が10年ない場合は、年金は1円も受けられないことになりますので、まずは10年の受給資格期間を早く満たす必要があります。

未納が多いと障害年金や遺族年金も受けられない

働き盛りの40歳は、配偶者や子どもがいる人も多いでしょう。年金は65歳からの老齢年金だけではありません。病気やケガが原因で障害が残った場合の障害年金(障害基礎年金や障害厚生年金)、亡くなった場合に遺された家族に支給される遺族年金(遺族基礎年金や遺族厚生年金)もあります。元気に働き続けることができればいいのですが、万が一のとき、こうした年金を活用できるように備えておく必要があります。

障害年金も遺族年金も受給のためには保険料の納付要件があり、一定の場合を除き、これを満たしていないと、そのほかの要件を満たしても年金を受け取ることができません。

障害年金の場合は初診日(障害の原因となる病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日)の前日時点、遺族年金の場合は死亡日の前日時点での納付要件で受給可否が判定されますが、初診日または死亡日の前々月までにある被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が3分の2以上必要です。

つまり未納期間が3分の1を超えると、この納付要件を満たせなくなります。ただし特例として、初診日の前日や死亡日の前日時点で、初診日あるいは死亡日の前々月までの直近1年間に未納期間がない場合も納付要件を満たすことができるようになっています(この特例は2026年3月31日までの時限措置でその後は未定です)。

前半20年で納付した期間が多く、障害年金や遺族年金の保険料納付要件を十分に満たしている人は、万が一のときに年金の受給が可能にもなりますが、未納が多い人の場合、年金が受けられなくなる恐れがあります。未納が多い人は、今から最低でも直近1年の未納期間だけはつくらないようにしておくことが大切です。

このように老齢、障害、遺族の年金の受給のためには未納期間をつくらないことが重要ですので、第1号被保険者で収入が少なく、保険料を納められない場合は、免除や猶予の申請を行う必要があります。

10年以上の受給資格期間が必要な老齢年金については、免除・猶予を受けた期間は保険料免除期間として受給資格期間に算入されます。また免除期間はその免除の種類に応じて、老齢基礎年金の額の計算に一部含まれます。免除や猶予は最大2年前まではさかのぼって受けられますので、該当する期間があれば申請を行いましょう。

障害年金や遺族年金についても保険料の納付要件が問われ、保険料免除期間も納付要件に必要な期間に算入されますが、初診日や死亡日の「前日」時点での納付要件が問われます。

免除期間が算入されるには、初診日前日や死亡日前日までに免除・猶予申請が必要(保険料の一部免除の場合は免除対象とならない残額部分の納付も必要)で、初診日当日や死亡日当日では不可となります。障害年金や遺族年金のためにも保険料免除や猶予の申請を早めに済ませておく必要があります。

免除や猶予を受けた期間の保険料については10年以内に納めること(追納)ができます。必要な受給資格期間を満たして将来老齢基礎年金を受給できたとしても、免除や猶予を受けた場合は、納付した場合と比べると年金額が少なくなります。しかし、追納すれば保険料納付済期間として年金額が計算されます。後で保険料納付に余裕ができれば、追納も考えてみましょう。

厚生年金加入で「2階建て」の保障が受けられる

では、前半の20年の間で厚生年金加入期間はどれくらいあるでしょうか。学校を卒業してから会社員として勤務し続けている人は、当然、厚生年金加入期間も長いでしょう。しかし、そうでない人は短いこともあり、このままでは受給できる年金の合計額が少なくなります。

厚生年金保険制度から受給できる年金は老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金ですが、いずれも報酬比例の年金で、加入期間が長いほど、また加入中の給与や賞与が高くて負担した厚生年金保険料が高いほど、受け取る年金額も高くなります。厚生年金被保険者(国民年金第2号被保険者)となれば老齢基礎年金だけでなく、厚生年金加入記録により計算された老齢厚生年金も増やすこともでき、2階建て年金制度による保障となります。

障害厚生年金については、在職中(厚生年金加入中)に初診日があることが受給の最低条件となっていますが、障害基礎年金(2020年度:障害等級1級は年間97万7125円、障害等級2級は年間78万1700円)が障害等級2級以上でないと受給できないのに対し、障害厚生年金は2級より軽い障害等級3級でも受給できます。障害等級が1級、2級であれば障害基礎年金と合わせて受給することもできます。

また、万が一死亡したときは、亡くなった人に厚生年金加入期間がないと遺族基礎年金(2020年度:年間78万1700円+子の数に応じた加算)のみとなり、亡くなった夫に子(高校卒業までの子、あるいは一定の障害がある場合の20歳未満の子)がいない場合の妻は、遺族基礎年金を受けられません。しかし、厚生年金加入期間があれば、子がいなくても妻は遺族厚生年金を受けられます。

もし、子がいれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受けることもできますし、子のいない40歳以上の妻が、遺族基礎年金がなく遺族厚生年金のみを受給する場合は寡婦加算が加算されることもあります。

このように厚生年金保険制度は国民年金制度より手厚くなっています。2020年5月末に成立した年金改革関連法により、今後社会保険の適用拡大(週20時間以上勤務者の加入についての企業規模要件の拡大、個人の士業事務所への適用など)もされますが、40歳までで厚生年金加入が短い人、厚生年金未加入の人は、将来のことを考え、今後厚生年金加入を考えてみましょう。

60歳からの「アディショナルタイム」でも増やせる

このように、将来の年金が少なくなりそうな人、また、そもそも年金が受けられない人も、ハーフタイムで前半20年の加入記録を確認しながら、今後の対策を練ることが可能です。それでも、20歳から60歳まで40年間しっかり掛けていた人に比べると年金額は少なくなります。

後半20年終了時の60歳になると、年金制度への加入が終了します。しかし、これ以上年金受給額が増やせないかというと、そうではありません。いよいよ老齢年金の受給が近づく60歳以降、サッカーのように「アディショナルタイム」があるのです。

サッカーのアディショナルタイムとは、負傷者の手当、選手交代などで試合が中断された分を追加でプレーできる追加時間を指します。サッカーには前半終了後と、後半終了後それぞれに設けられていますが、年金については後半の20年終了後に、同じような期間があります。

60歳までに国民年金保険料を納めることを中断してしまった期間や厚生年金保険料負担額が少ない期間があり、「このままでは受給できる年金が少ない」と思っているかもしれません。でも、後半20年の後に設けられたこの60歳以降の期間で年金制度に加入し、年金受給額を増やすことができるのです。

60歳以降も勤めている場合については、最大70歳までであれば厚生年金に加入することになり、60歳以降に退職した場合や自営業者となった場合には、最大65歳になるまで、あるいは老齢基礎年金が満額(つまり480カ月納付の額)に達するまで、国民年金に任意加入して保険料を納付することが可能です。年金の受給額を増やすうえで、この期間も重要な時期となります。

以上のように、40歳になったら一度、前半20年の年金加入記録を振り返り、後半20年の年金加入について考え、また、その先のアディショナルタイムも見据えて将来に備えるのはいかがでしょうか。