事件から1年と3カ月・・・その胸中は

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 2012年の「国民的美魔女コンテスト」出場を足がかりに芸能界デビューした“熟女グラビアアイドル”岩本和子(44)が逮捕されたのは、昨年5月のことだった。後に不起訴となった彼女は、7月20日に復帰写真集『独白』(小学館)を発売。活動を本格的に再開させたのだが、そこに前事務所の壁が立ち塞がり……。

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【写真】「男のコトなんてどうでもよかった」岩本和子本人が事件について語る

 7月25日、東京・渋谷の「HMV&BOOKS」で岩本の写真集発売イベントが行われた。当初は6月に予定されていた発売はコロナ禍で延期され、またファンとの交流もアクリル板越しに。それでも来場者数は50名を超えたという。

事件から1年と3カ月・・・その胸中は

 事件以来、岩本が報道陣を前にするのは初。そこで彼女は、

「(事件について)一生、言われ続けると思いますが、受け止めていきます。自分が表現したい活動をやらせていただけることをお許しいただけるならば」

 と語ったが、その一方で、前事務所との“賠償金”をめぐるトラブルについて「これから解決していかなくてはいけない」とも話した。その詳細を紹介する前に、まずは岩本が起こした事件について振り返っておこう。

男のコトなんてどうでもよかった

 舞台となったのは、静岡県・JR熱海駅の構内だった。2019年5月18日、岩本は交際していた男性の頬をカッターナイフで切りつけたとして、傷害容疑で逮捕された。男性との間にできた子を、堕胎した翌日のことだった。

 今回、取材に応じた岩本本人が語る。

「今となっては、どこに惹かれたのかも分からないのですが……。男性とは知人の紹介で知り合いました。私には『バツイチだ』と説明していました。妊娠していることは、交際を始めて数カ月が経った時に分かりました。ふとした時に吐き気を催すようになり、妊娠検査薬を使うと“まさか”。この時、私は43歳になったばかり。自分が母になれるとは思っておらず、戸惑いもありましたが、神様からのプレゼントだと嬉しかったんです」

 女手ひとつで自分を育ててくれた母、そして交際相手の男性にLINEで妊娠を報告した。だが、男性から返ってきたのは「考えます」という素っ気のない言葉。以降、徐々に連絡が取れなくなったというが、その後も妊娠中であることは公には伏せたまま、芸能活動は続けていた。当時、週刊誌のグラビアページを飾るなど、グラドルとして精力的に活動していた最中で、初の主演映画『魔酔』公開という大仕事も控えていた。

「これは妊娠した経験のある方だと分かってくださると思うのですが、別に男のコトなんてどうでもよくなる、お腹で育つ命のことだけで頭がいっぱいになるんです。だから交際相手がどんな態度だろうと、あまり深刻には受け止めていませんでした。とはいえ、今後のことは話し合わなければなりません。そこで、男性の自宅の最寄り駅に行き、話し合いをしたんです」

 男性は「認知しない」の一点張り。「逃げるつもりだったんでしょうね」と岩本は言うが、その時、偶然にも男性の妻と遭遇してしまう。そして初めて、岩本は相手が妻帯者だったと知った。

 岩本と夫との関係を知った妻からは「堕ろしてくださいね」と言われたという。

「相手に奥さんがいたことや、この言葉が事件の引き金になったわけではありません。こんな環境で生まれてくる子供がかわいそうになってしまったんです。その時すでに妊娠5カ月2週目くらいで、日に日に母性本能が強くなっていました。母体のことを考えると、決断は急がなくてはならない時期にきていました。妊娠が分かった時に、奥さんがいると言ってくれれば、また違ったかもしれません。妊娠3カ月の時に決断するのとでは、精神的にも、また違ったと思います」

 現実逃避のため、妊娠中でも使用できる睡眠薬に頼るようになった。情緒不安定の状態で、意味不明の言葉をSNSに投稿したりした。そして5月17日、お腹の子との別れの日を迎える。幸せの絶頂から、1週間での急展開であった。生まれなかった娘には「夢」と名づけた。

 本来であれば、処置後1週間は安静にしなくてはならないところ、病院を出たその足で、岩本は仕事へ向かっている。午後8時から、主演映画の初日舞台挨拶があったからだ。舞台で何を話したのかはほとんど覚えていないと、岩本は当時を振り返る。舞台挨拶を終えた後、22時頃には帰宅することができたが、「化粧を落としたかどうか分からない」まま眠りについた。

なぜ熱海なのか、なぜカッターを購入したのか

 翌18日に事件が起きる。この日、岩本は自宅のある大阪に帰ることになっていた。2日後にVシネマの仕事の打ち合わせが予定されており、衣装合わせのための服を取りに行く必要があったのだ。

 しかし、気持ちの整理がつかずに、大阪に帰る気になれない。東京駅に着いた時、ふと思い立ったのが「熱海」に行くということだった。

「実家(大阪)へ向かう新幹線の中で思い立ち、熱海で降りたとも報じられていますが、それは違います。大阪に帰るつもりだったなら(熱海に停まる各駅停車の)こだまの切符を買っていませんから。最初から熱海に行くつもりだったんです。

 なぜ熱海だったのか。はっきりとした理由はないのですが、癒される温泉地のイメージがあったこと、また友達が熱海にお店を開いていて、鳥取出身の私に縁はないものの、聞き覚えのある地名ではありました。もうひとつ、例の交際相手が仕事の関係でしょっちゅう熱海という地名を出していたんです。ですので“熱海”がふと頭に浮かび、行こうと思ったんです」

 熱海に着いたのは13時頃だった。カートを引いて街を歩いたことは覚えているが、どこをどう歩いたのか、今となっては思い出せないという。空腹を感じてお菓子を買おうと思い立ち、目についた「セブン-イレブン」に入った。熱海にはセブン-イレブンが5店あるが、これも「どの店か思い出せないですね。行っても分からないかもしれません」。そこでチョコレートと飲むヨーグルト、ハサミ、そして事件の凶器になるカッターナイフを購入したのだ。

 なぜカッターを買ったのか。今、改めて聞いても明確な答えは返ってこない。

「東京ではウィークリーマンションを借りて生活していたのですが、そこで使うスリッパを母が買って、置いておいてくれたのです。その“値札”のタグが付いたままだったと、ふと思い出したのです。そういえばマンションに切るものがなかったな、とハサミとカッターを買って……。私は買ったもののパッケージをすぐに捨ててしまう癖があるのです。だからカッターもむき出しのまま、カバンに入れました」

 交際相手をここへ呼び出そう、と思ったのは、コンビニを出てからのことだった。

「一言でもいいから、娘と私に謝ってほしい気持ちが湧き上がってきたのです。でも、取り合ってくれないのは目に見えている。だから嘘をつきました。『子供はまだお腹にいます』『大きくなりすぎて、熱海の闇医者じゃないと処置ができない』『パートナーに同意書にサインしてもらわないとならない』と電話で告げました。電話したのは14時半くらいでしょうか。向こうからしてみれば、1日でも早く処置してほしいわけですからね。『1時間後には行く』と返事があった覚えがあります」

 駅前で到着を待ち、交際相手が熱海駅に着いたのは16時半頃のことだった。だが男は、改札から出てこようとはしない。病院の住所だけ言え、一人で行ってサインする――と言うのだ。岩本との間で口論となったが、やがて男性は「このまま東京に帰る」と言い出した。

「だから私がホームまで行きました」

 事件が起きたのは18時過ぎ。心神耗弱を理由に岩本は不起訴処分になっている。冒頭で紹介した写真集巻末のインタビューでは「手首を切るパフォーマンスをしようと思った」と語ってもいるが、男性を切りつけた理由について改めて尋ねたが、やはりこれといった答えは返ってこなかった。当時の混乱のほどは、次の言葉からもよくわかる。

「逮捕された後、まだ自分の中に子供がいると思っていたんです。警察の方に『妊娠しているのに(男を追いかけるために)走ってしまった』『妊娠しているので病院に連れて行ってほしい』と話していましたから。その後の取り調べでも、毎日言うことが変わる。事件時の防犯カメラの映像を見せられた時には、びっくりしてしまい『どうして(映像の中の)私は、こんなに元気なんでしょうか?』と聞いたところ、翌日に精神鑑定が決定しました」

 静岡県の富士警察から沼津市の拘置所へ移され、9月になって不起訴処分が下された。が、その後は静岡市内の閉鎖病棟で3カ月を過ごすこととなった。退院が許されたのは11月下旬。事件からおよそ7カ月後のことだった。写真集の撮影は、それから数カ月後に行われた。

「拘置所などは3歩も歩けない広さで、閉鎖病棟は外出禁止。だから最初は上手く歩けなかったんです。半年で8キロも太っていましたね。だから1日1食にしたりして体重を落としていって……。今、写真集を見ると、やっぱり脚はまだ細いまま。筋肉が戻っていないんです」

 以前と同じく引き続き大阪に拠点を置き、現在はフリーランスの立場で活動しているという。そんな彼女と前事務所とのトラブルは、写真集の発売を巡って始まった。

募らせていた不信感

 そもそも事件が起きるまで、所属タレントを守るはずの“事務所”はどう動いていたのだろうか。

「IT系でOLをしていて『美魔女コンテスト』のファイナリストに選んでいただいたのをきっかけに芸能界に進みましたが、長くフリーで活動していました。とはいえ、一人でやっていくには限界があると思い、2017年9月に、人から紹介されて前事務所のG(仮名)と契約することにしたのです。でもすぐに、不信感を抱くようになりました。入所する時にも、フリー時代に稼いでいたギャラを“上納”するよう迫られ、入ってからも、折半する契約のはずのギャラが支払われなかったり……。極めつけは、私が妊娠を告げた時の態度です。『DVDの仕事が決まっているんだから堕ろせ。Vシネが決まっているんだから堕ろせ』の一点張りでした」

 事件から3カ月後の8月、岩本はGを解雇されている。岩本が『週刊文春』の取材に“獄中生活”を語っていたことが理由とされている。

 解雇されて以降、岩本とGはいったん関係が切れた。ところが今年6月、今回の写真集の発売告知が『週刊ポスト』に掲載されたのを機に、ふたたび接触してきたという。

「一度、事務所に呼ばれ話し合いの場がありました。写真集の発売にタイミングを合わせ、私のDVD作品をセットにした『ボックス』を販売したい、というのです。6本セットで4800円という“大安売り”で……。所属中の不信感もあり、ボックスの話は断りました」

 するとおよそ1週間後、岩本を相手取った訴訟の話が、6月20日付『東京スポーツ』でいきなり報じられたのだ。〈美魔女グラドル裁判沙汰〉との見出しで報じられたその記事によると、事件の際に事務所が立て替えていた弁護士費用および事件で無くなった仕事の違約金を、全事務所が岩本に請求する予定だという。

 記事には、岩本サイドと事務所は話し合いを行うも、話が決着せずに訴訟に至ったとある。しかし、岩本は「すべて『東スポ』の取材で知りました」と食い違う。

訴訟、立てこもり騒動

「記事掲載後、どういうことなのか、こちらの弁護士から向こうの弁護士に問い合わせてもらいました。弁護士によれば、請求額は110万円だそうです」

 もっとも、東スポ報道から1カ月以上が経つ現在も、岩本の元に訴状は届いていないという。岩本が東京地裁に問い合わせたところ、本件に限らずコロナの影響で裁判の進行は滞っているとの答えが返ってきたという。それゆえ訴訟の詳細は不明なのだが、

「事件では、母が雇ってくれた弁護士さんにお世話になりました。だから何をもって前事務所が『弁護士費用を立て替えた』と主張しているのか、正直、よく分からないのです。たしか4日ほど、事務所の顧問弁護士が面会に来たような気もしますが……。その分の請求ということでしょうか」

 岩本は、提訴は嫌がらせ目的なのだと語る。

「裁判を起こすのなら、もっと早くできたはず。東スポさんに記事が載ったのは、もともとの写真集の発売日の2日前ですからね。所属中から、自分の元を去っていったタレントに、こうした嫌がらせをする事務所であることは薄々知っていました。事務所の関係者には、今も密かに内情を教えてくださる方がいるのですが、やっぱり私もターゲットになってしまっているようです。DVDボックスの話を断り、写真集を出版することが、面白くなかったのでしょうか。事件でご迷惑をおかけしてしまったのは事実ですが、所属していた期間はわずかです。育てていただいたわけでもありませんし……」

 予定されていた新作DVDの話が立ち消えたり、自身のSNSアカウントが何者かによって運営に通報され凍結した――こうした“被害”にも、岩本は前事務所の影を見ている。

「前事務所の関係者によると、私のネガティブキャンペーンを書かないか、とマスコミ各社に事務所が持ち掛けているようです」

 東スポに続き、7月14日には『FRIDAYデジタル』でも前事務所とのトラブルが報じられた。「『熱海切りつけ事件』の美魔女グラドルが元事務所で立てこもり騒動」と題された記事によると、岩本が前事務所を訪れ“立てこもり”、さらにその場で自ら警察に通報したという。記事では事務所社長の〈「我々としては熱海駅の事件で逮捕されて以降、出来る限りのフォローをしてきたつもりです。それなのに、立てこもって自ら110番通報するなど、“自作自演”のような行為に出るとは、本当に何を考えているのか分からないですね」〉とのコメントが掲載されてもいる。

 この報に関しても、やはり岩本の主張はやや異なる。

「事務所からの嫌がらせについて、ダメ元で警察に相談に行ったんです。案の定、事件化しないと介入できない、と言われました。事務所と話をしようにも、電話には出ようとしませんし、LINEも返ってきません。だから事務所に直接行ったのです。私を知っている社長などは事務所におらず、留守を預かっていた方と口論になったわけですが、“実際にこうしてトラブルになっているのならば警察も動いてくれるだろう”と判断し、自分で110番をしました。事務所に行ったのは19時で、後にしたのは19時半。立てこもったりしていません」

 岩本によれば、管轄の四谷警察からは「事務所には注意しておきましたから」と告げられたという。

「13日の19時に起きた出来事が、14日の朝7時には『FRIDAYデジタル』さんから記事になって出ているんですよ。となると、どういう経緯で記事になっているか、もう想像できますよね? しかも『東スポ』さんの時のように私への取材もなく、一方的な主張ばかりの内容です。後日、『FRIDAYデジタル』編集部には問い合わせの電話をしました」

 こうした“抵抗”が功を奏したのか――25日に開かれた先述のイベントは滞りなく終わり、以降、事務所からの嫌がらせは止んでいるという。とはいえ、彼女の不安は尽きない。

「私はあんな事件を起こしました。岩本和子は本名ですし、もう一般企業で働くことはできません。もう人を好きになんてなりたくないですし、結婚もできないでしょう。街中で家族連れを見かけると“私には一生手に入らない幸せなんだな”と実感します。せめてもの願いは、私の生きた証を、写真集やDVDという形で残したい。前事務所にはそれを邪魔しないでほしいだけなんです。一度、所属中のタレントさんを通じ『土下座でもなんでもしますから、どうか関わってこないでください』と伝えてたのですが、状況は変わりませんでした」

 そして、こんな思いを吐露する。

「もう正直、放っておいてほしい。正式に解雇されていますし、なぜ今、追いかけてくるのか分からないのです。子供も仕事も何もかも失い、やっと社会復帰させていただこうとしている矢先に、なぜこんなことをするのか。きっと、お金では解決しない怨恨や感情の問題なのでしょう……。トラウマです。今後は絶対、芸能プロダクションには所属しません。フリーのできる範囲で、コツコツとファンの方のために活動してまいりたいと思います」

週刊新潮WEB取材班

2020年8月7日 掲載