レッズ・秋山翔吾【写真:Getty Images】

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秋山との面談では地元日米協会の職員らも尽力

 西武から海外FA権を行使してメジャー移籍を目指していた秋山翔吾外野手は3年2100万ドル(約23億円)でレッズと契約を結んだ。米スポーツメディア「ジ・アスレチック」はレッズが獲得に至った経緯を詳報。西武入団3年目の2013年から目を付けていたことやシンシナティにある日米協会に携わる男女2人が大きな役割を果たしたことなどを伝えている。

 記事によると、シンシナティにある日米協会のエグゼクティブ・ ディレクターを務めるゴールデンさんが、レッズのディック・ウィリアムズ編成本部長からテキストメッセージを受け取ったのは12月10日の夜9時半ごろだった。サンディエゴでのウインターミーティングに参加していたウィリアムズ氏らレッズ首脳はその日に秋山と面談していたという。

 面談で秋山と代理人は、シンシナティについて質問。シンシナティには、日本語のネイティブスピーカーがいるか尋ねたという。ウィリアムズ氏がゴールデンさんにコンタクトを取ったのはこの時だった。

 ウィリアムズ氏は、かつてゴールデンさんに連絡したことがあったという。それは、レッズが大谷翔平との契約を模索していた2年前のオフだった。そして、今回再び、秋山獲得に向けてゴールデンさんに連絡を取った。

 ゴールデンさんはすぐに日米協会の役員会メンバーのカズ・コムネ氏にテキストメッセージを送った。コムネ氏はアメリカに留学する前、日本の高校の野球部でセンターを守り先頭打者だった。5分後にはコムネ氏は、秋山と代理人と電話で話を始めたという。

 記事によると、コムネ氏は秋山に、シンシナティには約2000人の日本人がいて日本の有名な会社もあると説明。これが秋山の不安を減少させたかもしれないとしている。

 また、レッズは秋山との面談に小冊子を用意していた。2年前に大谷のために作成したものを、秋山に合わせてアップデートしたものだという。秋山は大谷より6つ年上。妻と2人の幼い男の子もいる。家族もシンシナティで時間を過ごすことになるためだった。

 コムネ氏を電話口に呼び出したのは彼らを安心させるためで、ウィリアムズ氏はこれが成功したと感じたという。

2年前のオフ、大谷翔平獲得目指して準備進めるも交渉すらかなわず

 記事は、レッズほど秋山を積極的に追いかけていた球団はなく、チームの課題である出塁率向上には最適な存在と考えていたと指摘。記事によると、なんと2013年の時点で秋山に既に目を付けていたという。当時は入団3年目。初めて全試合に出場した年で、まだチームで確固たる地位を築いていなかった。

 ウイリアムズ氏は「(秋山獲得の準備段階で)我々は様々な異なったシナリオを考えて準備していた。プレーヤーのタイムテーブルがどうなるか予測がつかない。だから、どうなってもいいように準備を進めていた」と語っている。

 またデビッド・ベル監督は「秋山は我々が改善したいエリアに明らかにフィットする。アプローチは少しアグレッシブだったかもしれない。彼もそう言っていた。だけど、我々からすれば、アキヤマと契約したいのは本当に明らかだった」と述べている。

 記事はまた、レッズの環太平洋地域スカウティング部門長のロブ・フィドラー氏は、2016年の終わりにチームに加わったことに言及。彼の3年間にわたる努力はやっと実を結んだとしている。

 フィドラー氏は「見ればみるほど、私は彼のプレーが好きになった。打撃、守備、ベースランニング、選手としてのあり方、チームメートとして、一人の人間として、彼はとても魅力的だ、どのような人間性を持った選手を加えたいか、我々はたくさん話し合ってきた。彼は本当に僕らが欲しいと思わせる選手だった」と振り返っている。

 ウィリアムズ氏は2年前、大谷がレッズにピッタリだと思い、全てをつぎ込んで獲得に臨もうとしていた。しかし、大谷とのミーティングさえ叶わなかったという。記事は2年前に学んだことを今回の秋山とのプレゼンテーションに生かしたと指摘している。

 記事は「2018年のレッズは日本人の選手を迎える準備はできていたかもしれないが、まだ勝つ準備はできていなかった」と解説。「レッズは今、勝つ準備ができている。そして、彼らにはアキヤマのような選手が、勝利をより確実にするために必要だった」と強調している。

 これまで日本選手が在籍したことがなかったレッズ。しかし、近年はアジア市場に目を向けて、綿密なリサーチと準備をした上で秋山の獲得に成功したようだ。“相思相愛”でレッズと契約した秋山の活躍が注目される。(Full-Count編集部)