比較的安定した戦いで2回戦進出を決めた錦織圭

 ウインブルドン1回戦で、第8シードの錦織圭(ATPランキング7位、7月1日づけ/以下同)が、予選から勝ち上がったチアゴ・モンテイロ(113位・ブラジル)を、6−4、7−6、6−4で破り、8年連続で2回戦進出を決めた。

 6月中旬に行なわれた前哨戦のATPハレ大会(ドイツ)を右上腕部炎症により欠場したため、ぶっつけ本番で臨むことになった今回のウインブルドンだったが、休養という選択が正しかったことを証明するように、錦織は1回戦から会心のプレーを見せた。

「思ったよりよかったですね。しっかり練習ができて、自信もいい形で自分の中にありました。(ラファエル・)ナダルといい練習が2回できていましたし、調子は出だしからよかったです。1試合目にしては、いい試合だったと思います」

 モンテイロは、ひとつ格下となるチャレンジャーレベルの大会を主戦場にしているため、錦織が格の違いを見せつけた形だ。

「2セット目に若干危ない場面がありましたけど、あそこをしっかり取れたことと、サーブで切り抜けられる場面も多かった」

 こう振り返った錦織は、第2セット第10ゲームで1回だけサービスブレークをモンテイロに許したものの、試合が終わってみれば錦織のファーストサーブの成功確率は70%と安定していて、ファーストサーブのポイント獲得率も78%と非常に高かった。

 また、試合前に錦織自ら「いい感覚で打てている」と話していたグランドストロークも好調で、フォアのウィナー14本を含む36本のウィナーが決まった。

 錦織の1回戦は、第2シードの大坂なおみ(WTAランキング2位)が衝撃的な初戦敗退を喫した翌日に行なわれたため、試合後の会見ではやはり大坂の話題が挙がった。

 大坂の報道が過熱していることを、錦織はこう見ていると言う。

「最近思うのは、なおみちゃんの(関する)ちょっとアホな記事がすごく多いなって感じます。見当違いなことというか……。よくありますけど、想像の記事をたまに見る。なおみちゃん見ないでくれという記事が多いなって」

 錦織は、2014年からトップテン選手として走り続けているが、一気に世界の頂点へ駆け上がった大坂に先輩選手としてエールを送った。自分の実体験を踏まえながら、自分の理解の範囲で的確なアドバイスを述べたが、特有の優しい口調からは、思いやりがにじみ出ていた。

「僕よりはるかにプレッシャーはある。世界から来るプレッシャーだったり、やっぱり1位を守るというプレッシャーは計り知れないので、(最近の大坂の不調は)しょうがないかなと思います。あんまりそのことに関して、彼女と話したことがないので、どういう気持ちかわからないですけど、周りのことをあんまり考えないでほしいかなと思いますね。

 今、自分がすべきことに集中してほしいです。本当に急に1位になったので、慣れるまでには時間はかかると思いますけど、まだめちゃくちゃ若いので。かわいい女の子ですし。ゆっくりやってほしいですね。テニス的には、100%1位の実力はもっているし、あんまり気にせずやってほしいですね」

 かつて錦織も、2013年や2014年前半ぐらいに、日本男子として初めて世界のトップ10に入れるかどうかという状況の中で、周囲からのプレッシャーに苦しんだ時期があった。

「トップ10の重圧にときたま悩まされることがありますけど、ん〜。やっぱ1位とは次元が違うので(笑)。僕の場合は、何週間か、何カ月か経てば乗り切れますけど」

 また、記者会見を途中で退室してしまった大坂にちなんで、「錦織選手は会見をやめたいと思ったことはあったか?」という質問もあった。

「いや、(会見を)1回もやめようと思ったことはないですよね(笑)。(大坂の)記事が出たときに、僕はあったかなと考えたんですけど、1回もないな。そりゃ、やりたくない時はもちろんありますけど、プロというか義務なんで、僕にイエスかノーのチョイスはない」

 ウインブルドン2回戦で錦織は、キャメロン・ノーリー(55位、イギリス)と初対戦することになった。ノーリーは、今年1月開幕週でのATPオークランド大会(ニュージーランド)で準優勝し、2月のATPアカプルコ大会(メキシコ)ではベスト4に進出するなど、最近ランキングを上昇させている。

「本当に失うものはない。アンダードッグのメンタリティーで試合に臨みたい」と意気込むノーリーとの2回戦は、7月4日に行なわれる予定だ。