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もくじ

どんなクルマ?
ー スペチアーレの血統
ー 90kgの軽量化 オプション多数

どんな感じ?

ー ダイレクトだが扱いやすい
ー ドラマ性は無いが破綻のない走り

「買い」か?
ー スーパーカーを1台だけ買うなら

スペック
ー フェラーリ488ピスタのスペック

どんなクルマ?

スペチアーレの血統

ピスタは驚くほど優れたミドエンジン・フェラーリだ。そして恐ろしい数字が並ぶスペックシートから想像するよりはるかに扱いやすい。これは以前のマット・プライヤーの試乗記からもわかるだろう。

今回われわれはこの25万2765ポンド(3745万円)、720psの488ピスタを初めて英国で試乗する機会を得た。フォーカスRSやロータス・エリーゼなどが似合うこの狭い道路で、963psのラ・フェラーリにフィオラノでわずかに劣るという速さのこのクルマがどのように走るのだろうか。

このクルマは458スペチアーレ、430スクーデリア、360チャレンジ・ストラダーレなどの後継車だ。ルックス、サウンド、走りを兼ね備える血統を受け継いでいるのである。

スペチアーレと同様、ピスタはゲトラグ製の7速DCTと最新式の電子制御デフを介して後輪を駆動している。スリップ・アングル・コントロールに制御されるブレーキの介入により、ドライバーは30度までのヨーアングルを容易に保つことができる。0-200km/h加速はわずか7.6秒だ。フェラーリは速さだけでなく楽しさも追求している。

90kgの軽量化 オプション多数

しかし、同時にパフォーマンスも真面目に追求しているのだ。仕様にもよるが、ベースとなった488GTBよりも90kg軽くすることもできる。リアスクリーンはガラスでなくプラスティック製となり、遮音材を減らし、エグゾースト・マニフォールドはインコネル製に、そしてボディの多くはアルミからカーボンファイバーへと変更されている。

簡単にいえば、パワー・ウエイトレシオはヴェイロンと同等だ。これを制御するにはフェラーリの最新式電子制御が不可欠だといえる。

装備に話を移そう。われわれはイタリア製スーパーカーについて話しているのであり、その価格はいとも簡単に成層圏にまで届く勢いだ。ここで挙げきれないほどの選択肢が用意されているが、たとえば

オンボード・テレメトリー:5760ポンド(86万円)
4点式ハーネス:2112ポンド(31万円)
1ピースのカーボンシート:7200ポンド(107万円)
ロールバー:2208ポンド(33万円)
ブラック・セラミック・エグゾースト:960ポンド(14万円)
アップル・CarPlay:2400ポンド(36万円)

などが用意されている。極め付けは2トーンのレーシングストライプが8640ポンド(128万円)といったところだろう。

どんな感じ?

ダイレクトだが扱いやすい

1万4208ポンド(211万円)のカーボンファイバー製ホイールにも触れておこう。これを選択するひとの方がおおいだろうが、それは賢い選択だ。ばね下重量の低減はレスポンス向上に大きく貢献する。

最近のフェラーリらしく、ロック・トゥ・ロック2回転のステアリングは公道では過剰なほどにダイレクトだ。812スーパーファストの電動パワーステアリングに比べ、この電気油圧式は若干重めの手応えがある。GTBより硬められたスプリングや低められた車高により、ボディロールはほとんど無く、方向転換はまるでスイッチのようだ。

英国の道路においては、ピスタはうるさく、幅広く、周りの注目を引きつける。しかし、不思議なほどに扱いやすいのだ。バンピーな路面向けのモードを選択すれば、足回りは柔らかくなる。このフェラーリのスポーツカーを代表するスパルタンなミドシップがフラッグシップGT以上の柔軟性、落ち着き、予測しやすさを持っているのというのか?

スーパーファストが誤解されているのは間違いない。公道を重視しすぎているのだ。ただし、それを考えてもピスタがボディコントロールを一切犠牲にすることなく良好な乗り心地を実現しているのは確かだ。

ドラマ性は無いが破綻のない走り

マクラーレンとは違い、フェラーリはカーボンタブではなくアルミニウム・モノコックを好む。しかし、その剛性には遜色なく、2ウェイのアダプティブダンパーによるピュアで破綻のないコントロール性も素晴らしい。

「破綻のない」とは使い古された表現だが、よほど荒いアクセル操作をしたり凹凸をとんでもなく見誤らない限り、ピスタの挙動は荒野を走るランドクルーザーのように落ち着いている。

そうはいっても、このフラットプレーンクランクの3.9ℓツインターボは、どんなに速いクルマに慣れていても恐ろしい。720ps/8000rpm、78.5kg-m/3000rpmというスペックは、F1マシンと同じサプライヤーによって作られるチタン製コンロッドや超高圧縮比の恩恵によるものだ。過去の自然吸気エンジンのようなドラマ性こそないものの、太いトルクによる動力性能は圧巻だ。

488GTBの代わりにピスタを所有したとしても、公道上でそれほど苦痛を強いられることはない。ただし、4点式ハーネスを締める前にハンドブレーキを解除することだけは忘れてはならない。そしてタイヤが巻き上げる小石の音は我慢しよう。このクルマが与えてくれるパフォーマンスを考慮すれば、なんてことのないことだ。

「買い」か?

スーパーカーを1台だけ買うなら

これを注文するだけの財力があると仮定しよう。「サーキット」を意味するピスタという名前がつけられたクルマとしては、公道でも驚くほど乗りやすい。しかし、めったにサーキットに行かないのであれば、488GTBを買うべきだ。乗り心地の問題だけでなく、ピスタの場合フロントの荷室が230ℓから170ℓへと減っているのだ。

このようなフェラーリはポルシェのレンシュポルトと比較されがちだ。おそらく、GT3RSはこのクルマほど速くはないが、およそ半額で同様の特別感を得られるだろう。一方、同じくターボ付きのGT2RSなら同じくらい速く、ともすればさらに楽しめるかもしれない。しかし、その気でない時に乗るにはつらいものがあるだろう。

ウラカン・ペルフォマンテはどうだろうか。ドラマ性でいえばフェラーリを上回るだろうが、コーナーでの身のこなしでは敵わない。だが、両車ともに英国の荒れた路面をうまくいなすことができる。これは実用性とパフォーマンス両立のベンチマークであるマクラーレン720Sトラックパックも同様だ。

もしこれら珠玉のスーパーカーを1台だけ買うとしたら、難しい選択を迫られることになる。だが、ここで新たな提案をしたい。もしピスタの扱いやすさと尋常でない速さを少し譲って、代わりに9000rpmまで回るNAエンジンを取るのはどうだろうか。458スペチアーレを30万ポンド(4454万円)で買う、というのが結論だ。

フェラーリ488ピスタのスペック

■価格 25万2765ポンド(3753万円) 
■全長×全幅×全高 - 
■最高速度 341km/h 
■0-100km/h加速 2.85秒 
■燃費 8.7km/ℓ 
■CO2排出量 263g/km 
■乾燥重量 1385kg 
■パワートレイン V型8気筒3902ccツインターボ 
■使用燃料 ガソリン 
■最高出力 720ps/8000rpm 
■最大トルク 78.5kg-m/3000rpm 
■ギアボックス 7速DCT