道都、札幌にある空港ながら、現在は小型機しか発着していない丘珠空港。将来性がありそうですが、どうなるのでしょうか。現在出されているさまざまな利活用案や、そのなかで実現が近そうなものなどを見ていきます。

2016年から「利活用」についての協議を実施

 北海道の道庁所在地、札幌市にアクセスするさい、最もポピュラーなものといえば、新千歳空港から乗り入れる方法ですが、実は札幌市内にも空港は存在します。

 それが、北海道民以外にはあまり知られていない「丘珠(おかだま)空港」です。とはいえその距離から大きなポテンシャルを持ちながらも、就航都市は、道内路線を中心に6つ。また、新千歳のような充実した空港設備をもっているわけでもありません。たとえば滑走路の長さは1500mと、JAL(日本航空)やANA(全日空)が用いているような、100席以上のジェット旅客機が日常的に発着するには、難しい長さです。


丘珠空港に駐機するHACのサーブ340型機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。

 とはいえ、この空港が発展すれば、北海道への交通アクセスが大きく広がるのも事実です。一方で、市街地に位置することなどから、海上空港などのように拡張するのは、非常に難しいという一面も持ちます。今後、丘珠空港はどのようになっていくのでしょうか。

 同空港では、2016(平成28)度と翌2017(平成29)年度の2年間、空港の課題や役割などを様々な観点から検討し、利活用の促進策について札幌市や北海道などが協議する「丘珠空港の利活用に関する検討会議」を実施。2018(平成30)年2月には、協議内容をまとめた報告書を公表しました。現在はこれをもとに市民や有識者、関係者などの意見を踏まえ、今後の利活用のあり方について議論を更に深めているとのことです。

 ここでは、どのようなことが盛り込まれているのでしょうか。また、このなかから、実現が近いものはあるのでしょうか。

利活用案のトピックは? そのなかで実現するかも…なものとは

 札幌市などが掲げる丘珠空港の利活用案として代表的なものは、滑走路を延伸して発着できる飛行機の種類を増やすというものです。2020年現在、同空港の滑走路は1500mですが、300m延伸できれば、国内航空会社で最も多く使用されているDHC8-Q400型機や、現在夏季のみの運航で、乗り入れ唯一のジェット旅客機エンブラエルERJ-170型機の通年就航も可能になります。500m伸ばし2000mとなれば、JALやANAが多数使用し、国内線ではポピュラーなボーイング737型機も発着できるようになります。

 なお、同空港は札幌市内にあるものの、最寄りとなる市営地下鉄東豊線の栄町駅からは1.5kmと、駅についてからの距離がネックです。地下鉄栄町駅と丘珠空港間を新交通システムなどの軌道系公共交通機関で結び、アクセス性を改善するといった案も出ています。


丘珠空港の建物内(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。

 また、案のなかには、その空港名におよぶものも。「おかだま」と読めないという声が聞かれるそうで、新たな愛称として、たとえば「札幌空港」を始め、観光資源からとった「札幌時計台空港」、そして同市の企業であるクリプトン・フューチャー・メディアが展開するボーカロイド「初音ミク」に因んで、「初音ミク空港」といった候補も公開されています。なお同市の担当者は「市と北海道、コンサルタントと協議のうえ、候補を出した」と話します。

 これらは「現在のところ具体的に進める前の素案の段階」と先出の担当者は話すものの、なかには具体的に検討を進めている案もあるとのこと。

 そのひとつが、空港から外に出なくても飛行機に乗れる「搭乗橋」、ボーディングブリッジの設置です。2020年現在、利用者は旅客ターミナルと旅客機を行き来する際、エプロン上を歩いたのち、タラップで乗り込む方式です。搭乗橋は、これよりも利便性や安全性などの向上が期待されます。搭乗橋導入については「航空会社側と調整しながら検討を進めているところ」としており、2020年9月には、新設計画検討や基本設計業務についての一般競争入札も実施されています。